トーキョー・ショウダウン ライヴ・イン・トーキョー2000/イン・フレイムス
スウェーデンのローカル・バンドから世界的なメタル・バンドへ。90年代から2000年代にかけてのイン・フレイムスの飛躍は、アルバム発表毎にスケールを増していた。
アルバム「コロニー」(1999年)で提示した世界基準のサウンド、次の「クレイマン」(2000年)で見せた伝統的ヘヴィ・メタルと新世代の音作りの融合、そして一気に進化を極めた「リルート・トゥ・リメイン」(2002年)。どの時期を切り取っても、バンドが前に向かって進んで行く重要な瞬間だったのは間違いない。
イン・フレイムスはデビュー時から多くの日本のリスナーに注目されており、叙情的なメロディを取り入れたデス・メタル・バンドとしての地位を確立。3枚目のアルバム「ホラクル~墜落の神告」(1997年)ツアーの一環として、1998年に初来日。以降、暫くはアルバム発表の度に日本ツアーを行っている。
本作「トーキョー・ショウダウン」(2001年)は、「クレイマン」発表後に行われた日本公演より、2000年11月16日の赤坂BLITZ(当時の名称)でのライヴを収録した作品。スウェーデンと日本の国旗が描かれたジャケット・デザインが何とも興味深い。日本でのライヴが録音された事も含め、世界的な成功に先駆けてバンドを応援していた日本のファンへの感謝という事だろうか。
メンバーは、アンダース・フリーデン(Vo)、イェスパー・ストロムブラード(g)、ビョーン・イエロッテ(g)、ピーター・イーワス(b)、ダニエル・スヴェンソン(ds)の5人。今やメンバー編成が異なるので、改めて振り返ると非常に懐かしい顔ぶれに。イン・フレイムスと言えば、イェスパーが中心人物だったのだ。
公式なライヴ盤という事もあり、著作権の問題をクリアするためかSEなどは収録されておらず、いきなり「ブレッド・ライド」から始まる。選曲は、この時点で発表されていた5枚のアルバムからの楽曲がバランス良く演奏されており、ある意味、ベスト盤とも言えそうな内容だ。当時の最新作は「クレイマン」であるが、決して新作重視のメニューで無い点を特筆したい。
各楽曲、スタジオ・ヴァージョンを忠実に踏まえつつ、ライヴらしい良い意味での荒さが宿っている。イン・フレイムスのスタジオ音源は、ギターの音を3本~4本と重ねており、ツイン・リードのバックでもパワー・コードが鳴って厚みのある音作りになっているが、ライヴではギタリストが2名なのでアレンジが必要となる。
結果「フォード・フォー・ザ・ゴッズ」「オンリー・フォー・ザ・ウィーク」「スウィム」など、楽曲によっては見せ場のツイン・ギターにハーモニーが無かったり、バッキングがベース音のみになって軽く感じる部分も。聴く人によって感じ方は様々と思うが、この辺りはライヴ演奏だからご愛嬌といったところだろう。
「ムーンシールド」「ビハインド・スペース」「ヨートゥン」「ジャイロスコープ」といった、1st~3rdアルバムの楽曲も、アンダースの歌唱法も含めて2000年頃のサウンドに仕上がっているのが面白い。加入時期はデス・ヴォイスで歌っていたアンダースは、1999年頃よりシャウト・ヴォイスに切り替えており、本作ではその違いを楽しめる。
ラストは「エピソード666」。長きに渡ってイン・フレイムスのライヴを締め括っていたのが本曲だった。2004年以降、アメリカ進出を果たしたイン・フレイムスの作品は、エクストリーム・メタル、オルタナティヴ・メタル、イエテボリ・サウンドなど様々な呼ばれ方をする。音楽性の変化に伴い、ライヴのセット・リストも変わり、90年代の楽曲は減少していった。
そういった意味で、本作はイン・フレイムスが最もヘヴィ・メタルだった時代、そしてこれから世界に向かって羽ばたいて行く時期のライヴ演奏を収めた作品と言える。現在では演奏されない楽曲、セット・リストの組み立て方、ライヴの流れなど、この時代だからこそのプレイが存分の堪能できる。
尚、イン・フレイムスは「サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ」ツアーを収録した映像作品「ユーズド・アンド・アビューズド・・・イン・ライヴ・ウィ・トラスト」(2005年)、「サイレント・チャームズ」ツアーの映像作品「ライヴ・イン・スウェーデン~サウンズ・フロム・ザ・ハート・オブ・ヨーテボリ~」(2016年)を発表している。
本作と合わせて見聴きする事で、以降の音楽性の変化とメンバー変動が判るはず。更には、今のイン・フレイムスの作品を知る事で、本作「トーキョー・ショウダウン」時代のバンドのカラーが明確になるに違いない。