第519回「N」 | PSYCHO村上の全然新しくなゐ話

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発売より時間が経過したアルバム、シングル、DVD、楽曲等にスポットを当て、当時のアーティストを取り巻く環境や、時代背景、今だから見えてくる当時の様子などを交え、作品を再検証。

N / ZONE

現役活動時のZONEが発表したアルバム4作品の特色をざっくりと説明すると、ミニ・アルバム「Z」(2002年)はヒット曲を生み出しブレイクを果たしたZONEのデビューから1年分の活動の集大成、2作目「O」(2002年)はメンバー各人の個性がより強く反映された楽曲とバンドとして成長が顕著に表れた作品、そして「EComplete A side singles~」(2005年)はグループが解散した直後に発表されたシングル周曲集+αの作品という感じである。

 

では今回紹介する3枚目のアルバム「N」(2004年)はと言うと、ZONEにとって大きな県下の時期、もっと踏み込んで言えば激動の時代が反映された作品という位置づけになるアルバムだ。本作「N」について書く前に、話は2003年秋に遡る。シングル、アルバム、ツアー、テレビ出演など順調な活動を続けていたZONEであったが、リーダーのTAKAYO氏が年内の活動をもってグループを卒業する事を発表した。そのアナウンス通り、TAKAYO氏は20031231日のNHK「紅白歌合戦」の出演をもってグループを卒業。

 

年が明けた2004年。ZONEは新メンバーとしてTOMOKA氏の加入を発表した。TOMOKA氏は元々、インディーズ・デビュー前のZONEに参加していたものの、直前になってデビュー候補から外されたため、ある意味、再加入という見方もできる参加となった。当時の情報によるとデビューの最終候補から外された理由は、他のメンバーと並んだ時に身長の面でバランスが悪かったとの事だ。

 

それはさて措き、MIYUVo.g)、TOMOKAVo.g)、MAIKOVo.g)、MIZUHOVo.ds)という編成になったZONEは、この編成で初となるシングル「卒業」を2月に発表。その直後にリリースされたのが本作「N」である。つまり本作は、新生ZONEのお披露目とも言え、多くのファンの注目が集まる中で発表されたアルバムだ。

 

こういった流れもあって、アルバムはこの編成での先行シングルとなった「卒業」が1曲目に収録されている。その「卒業」は、リリースが2月だった事もあり、この時期に合わせて書かれたような歌詞が印象的な、アップテンポのロック・ナンバーだ。注目すべきは2曲目以降で、「Come to myself」「ROCKING」と加入したばかりのTOMOKA氏がメインでヴォーカルを務める曲が立て続けに収録されている。

 

TOMOKA氏はアイドルらしい可愛らしいルックスの持ち主であるが、声は低音~中音域を中心としたパワフルなヴォーカルを聴かせ、特に「ROCKING」は200541日の解散コンサート他でも、TOMOKA氏のソロ曲として披露されている。音楽的にも、ロック色の濃い曲はこれまでにもあったものの、ここで聴けるようなシリアスな空気が内包された曲調は新境地だった。

 

後のツアーではギターの演奏でも本領を発揮するTOMOKA氏も、実のところ、お披露目された時点では「ギターを始めて、まだ1ヶ月」との事で、本作のギター・パートについてはどれだけ参加しているのか定かでは無い。しかしながら、ヴォーカル面での声の強さと、その声に準じたロック・ナンバーが持ち込まれた辺りは、TOMOKA氏の加入によってZONEに持ち込まれたカラーである事は間違いない。

 

MIZUHO氏がメインで歌う「Bible」も、主要なコーラスをTOMOKA氏が担当。「BeaM」はロック・テイストなナンバーだが、こちらはポップでキャッチーな曲となっており、これまで培った要素が満載された1曲。「Like」はMAIKO氏がメインで歌う曲。前作「O」に収録された「Sae Zuri」でしっとりとしたヴォーカルを披露したMAIKO氏が、今作では明るいポップ曲で新たな一面を見せた。

 

ZOMEのセンターを務めるMIYU氏は本作において、もうワンランク上の表現力を発揮したと言え、MIYU氏のソロ曲「prayer」は大人びたムード漂うジャジーなナンバー。曲調的にも勢いで乗り切る事のできない本格的な楽曲であり、こういった難易度の高い曲を当時10代だったMIYU氏が歌っているのは、今改めて聴いても凄い1曲だ。

 

「白い花<acoustic ver.>」は、そのタイトル通りシングル曲であった「白い花」のアコースティック・ヴァージョン。単にアコースティック・ギターの演奏にアレンジしたものでは無く、ピアノ演奏も取り入れられている。本作「N」は、ZONEにとって変化の時期の狭間にリリースされたアルバムという事もあって、後半には旧ラインナップによるシングル曲が収録されている。

 

よってアルバムを通して聴けば、前半に新編成でのシングル曲やアルバム用の新曲、後半に旧ラインナップでの楽曲と、完全に線引きされて収録されている事が判る。「True blue」「僕の手紙」「恋々・・・」「HANABI~君がいた夏~」は2003年にリリースされたTAKAYO氏在籍時のシングル曲。そしてアルバムの最後には「secret base~君がくれたもの~」のライヴ・ヴァージョンを収録。尚、「僕の手紙」は東京女子流のカヴァー・ヴァージョンも素晴らしいので是非、チェックを。

 

まさか、翌年にはグループが解散するとはこの時点でファンは誰も予想していなかったはずだが、新編成になったZONE2004年もシングル「太陽のKISS」、甲子園のテーマ曲にもなった「glory colors~夢のトビラ~」といった名曲を発表し続けた。この編成による現役時代の活動は短命に終わったが、2011年の再結成がTOMOKA氏を含むフロント3名だった事も踏まえ、本作「N」はグループにとってひとつの出発点となった作品だ。