第513回「モーニング娘。20周年ベスト盤全曲紹介」⑪

ベスト！モーニング娘。 20th ANNIVERSARY/モーニング娘。’19

・・・続き。

DISC4

①BRAND NEW MORNING

2016年秋「MY VISION」ツアー千秋楽の日本武道館公演のステージ上で、13期メンバーの発表が行われ、ハロプロ研修生として活動していた横山玲奈氏と加賀楓氏がモーニング娘。に加入する事になる。その一方で、佐藤氏が体調不良を訴え、腰椎椎間板ヘルニアの疑いがあるとして暫くのグループ活動休止を発表。短期間で様々なニュースが飛び交った。

13期メンバーが本格的に参加したモーニング娘。’17は正月のHello!Projectコンサートで初お披露目されるも佐藤氏は療養中だったので、まだ全員が揃ってのパフォーマンスには至らなかった。そのモーニング娘。’17としてリリースした最初のシングルが本曲を含む作品で、春の「THE INSPIRATION！」ツアーが始まる直前3月8日に世に出ている。このような流れを経ての楽曲リリースであったため、本曲のレコーディングに佐藤氏は参加していないようだ。本曲は春ツアーのオープニング・ナンバーとして歌われているが、その際も佐藤氏はフラッグを振る役割でパフォーマンスに参加している。因みに、佐藤氏は春ツアーよりグループに復帰した。

デジタルの重低音から壮大なスケールの曲調に発展する「BRAND NEW MORNING」は、正にタイトル通り、この時期のモーニング娘。を投影した歌詞であり、決意表明とも受け取れる言葉が綴られている。様々なカルチャーが溢れる現代、その音楽シーンの中でモーニング娘。’17として何を目指して進んで行くのか、当時のモーニング娘。‘17が歌うことで非常に重要な意味を持つ歌詞となった。

2016年秋「MY VISION」ツアーはモーニング娘。が光となって飛んで行くようなエンディングで終了しており、2017年春「THE INSPIRATION！」は、その光に黄色と赤の光・・・即ち横山氏と加賀氏が合流し、「BRAND NEW MORNING」に繋がるドラマティックなオープニングが採用されている。前回のツアーとストーリーが繋がっていると解釈できるので、これら2作品の映像をチェックする際は、エンディングとオープニングに注目していただきたい。

②ジェラシージェラシー

「BRAND NEW MORNING」と両A面でシングルに収録された楽曲。交響曲を想起させるイントロのメロディから、ブラス風に分厚い音色のフレーズに繋がり、その後はダンサンブルな楽曲に発展して行く。粋のよいリズムとギターのコード・カッティングが楽曲に切れの良さを与え、ディスコ・ミュージックとは異なるが曲には煌びやかさも宿る。都会のネオンのような色合いも内包している。

かつてテレビ番組内で、女性ファンが共感するモーニング娘。の曲の歌詞として本曲が取り上げられていた。歌詞はタイトル通りジェラシーについて歌ったものであるが、更に深く踏み込んで行けば主人公の葛藤であり、内に秘めたる思いを爆発させた歌詞と解釈できる。何か特別な場面設定があるわけでは無く、日常生活で感じる人間関係の中での不公平な気持ち、見返したい気持ち、悔しさ、そして自分の努力を認めて欲しい気持ちなどがテーマとなっている。また、そういった気持ちが原動力となり明日へ向かうという歌詞も斬新である。

「THE INSPIRATION！」ツアーではアンコールの1曲目に歌われ、以降のツアーでも頻繁にセット・リスト入りする曲に。中盤のラップ・パートも素晴らしく、ラップをリズミカルに聴かせている辺りも、楽曲の持つグルーヴのみならず、メンバーの歌唱テクニックとリズム感の良さが顕著に表れていると言えまいか。野中氏の英語パートにも注目したい。

③モーニングみそ汁

シングル「BRAND NEW MORNING / ジェラシージェラシー」の初回限定盤SPのみに収録されていた楽曲。メジャー・デビュー曲「モーニングコーヒー」をリニューアルした本曲を収録したSP盤は、ジャケットも白のセーター＆赤いチェックのスカートを着用したメンバーの姿が見られ、「モーニングコーヒー」のジャケットを2017年春当時の編成で再現したものが採用されている。

オケは作り直されてはいるものの、1998年に発表されたオリジナル・ヴァージョンのイメージを忠実に踏まえたアレンジに。大きな違いは「モーニングコーヒー」という歌詞が「モーニングみそ汁」に変更されている点で、これはマルコメの商品「モーニングみそ汁」と連動した企画。モーニング娘。‘17のメンバーの姿をパッケージに施したみそ汁が全国のコンビニやスーパーで販売され、本曲はCMソングとして使用されている。

後にEP「二十歳のモーニング娘。」（2018年）に収録され、2018年正月のHello!Projectコンサートでも歌われた「モーニングコーヒー（20^th Anniversary Ver.）」は、同曲をロック調にアレンジし、大胆な変更と解釈が成されたヴァージョンであるが、こちらの「モーニングみそ汁」は歌詞の変更以外はオリジナルに忠実なヴァージョンと言える。

13期メンバーを迎え、新たな時代の幕開けを告げる空気に満ちていた2017年春「THE INSPIRATION！」は、一方でメンバーの卒業発表も行われており、4月29日の京都公演において工藤遥氏が秋ツアーをもって卒業する事をアナウンス。多くのファンを驚かせた。何故に京都公演でこれが発表されたのかは、他のメンバーの凱旋公演などで話題を持って行くような事はしたくないという配慮から、この日が発表するのに良いタイミングと判断されたようだ。

④邪魔しないで Here We Go!

卒業が決まった工藤氏を含む編成での最終シングルは、同年秋ツアー「We are MORNING MUSUME。」の最中（2017年10月）にトリプルA面作品としてリリースされた。「邪魔しないでHere We Go!」はその内の1曲である。尾形氏と飯窪氏が担当した冒頭のセリフが印象的な本曲は、このセリフ部分が物語っているように、別れを決意した女性の気持ちが描かれた楽曲。それに準じて曲調も非常にクールで緊張感に満ちているが、別れを決意した事で束縛から解放された主人公が前を向いて進んで行く内容でもある。

コンサートでも2017年秋「We are MORNING MUSUME。」ツアーでセット・リスト入りしており、最終日の日本武道館公演を収録した映像作品でも見る事が出来る。同作品は11月21日の公演と12月11日の公演がまるごと収録されているので、同じツアーから日の異なる2種類のヴァージョンが見られるのでお得。他にも飯窪氏の卒業コンサートである2018年秋「GET SET,GO!」の映像作品でも見られるのでチェックを。