PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱
聖飢魔Ⅱの地球デビュー40周年を記念した期間限定再集結が発表され、信者・ファンの熱量が上がっている。という訳で(どういう訳で?)、今回は個人的に好きな聖飢魔Ⅱの大教典5選を紹介したい。飽くまで個人の好みなので、同じく5選をするならば十人十色の大教典が並ぶはず。
5位
「LIVENG LEGEND」(1999年)
私が聖飢魔Ⅱに最も影響を受けた時代が1998年から1999年にかけて。本作は解散を正式に発表した聖飢魔Ⅱが、燃え盛る炎の如く、勢いを増しながら突き進んだ1999年10月に発布した最後の大教典。
活動の中で多彩な音楽性を披露していた聖飢魔Ⅱが、最後に提示したのが純粋なヘヴィ・メタル。しかしながら、ヘヴィ・メタルを軸としたうえで、演説を取り入れた「20世紀狂詩曲」、デーモン閣下が歌と合わせて早口でセリフを言う「THIS WORLD IS HELL」、ルーク参謀が書いた大作「GO AHEAD!」など、新しい要素も満載。
また、歌詞の面では臓器移植をテーマにした「戦慄のドナドナ」に注目したい。これは1999年当時、国内初の脳死移植があり、連日ニュースで報道されていた。ある意味、時事ネタというか、タイムリーな題材を歌詞にしたものだ。
活動を締め括る作品でありつつ、音楽面でも歌詞の面でも、まだまだ前に進もうとする聖飢魔Ⅱの精神性がここにある。ミサで演奏されたことはないが「ROCK’N RENAISSANCE」は名曲。
4位
「BLOODIEST」(2022年)
17年ぶり(当時)に発布されたオリジナル大教典。1曲目「LOVE LETTER FROM A DEAD END」に宿る圧倒的なエネルギーを目の当たりにすると、聖飢魔Ⅱは解散しておらず、「LIVENG LEGEND」に次ぐ大教典として2000年に発布された作品ではないかと錯覚する。
だが、収録曲を冷静に聴くと、聖飢魔Ⅱの解散後に各構成員が人間の姿で培った音楽性も垣間見られ、17年という時間の中で成熟し完成したサウンドであると判る。王道を行くダミアン陛下の曲をはじめ、25周年以降の聖飢魔Ⅱを象徴する音になっているジェイル代官の曲。
そしてルーク参謀が書いた「MIGHTY PUNCHLINE」は、常に新しい音楽的要素を取り入れる聖飢魔Ⅱらしい1曲。「LOVE LETTER FROM A DEAD END」も曲は王道でありながら、7弦ギターを使う新たな手法で制作されている点を見逃せない。
プロデューサー視点というか、他の構成員の楽曲とのバランス、作品全体の整合性を熟考したうえで、ルーク参謀はこれら2曲を書いたに違いない・・・と私は勝手に思っている。
第3位
「1999 BLACK LIST」(1999年)
極悪集大成盤をランキングに入れるのは反則のような気もするが、本作が好きだから仕方ない。正式に解散を発表した聖飢魔Ⅱが、最後に向けてアクセルを踏み込むような位置づけで発布したのが本作。
「XXX-THE ULTIMATE WORST-」(2015年)があるように、今でこそ聖飢魔Ⅱの楽曲は、すべて同じレコード会社から出ているが、1999年当時は状況が違っていた。当時の聖飢魔ⅡはBMGに所属していたため、SONY時代の楽曲は本作に収録するに当たり再レコーディングされている。
この再レコーディングがポイント。ミサでの定番曲、代表曲でありつつ、すべて1999年の聖飢魔Ⅱのサウンドに生まれ変わっている。よって、人間界で言うところのベスト盤である以上に、1999年の聖飢魔Ⅱ、1999年のあの時代を象徴する作品なのだ。本作を聴けば、あの時代の空気感と色合いが鮮明に蘇るのだ!←完全に個人的な見解。
第2位
「BIG TIME CHANGES」(1987年)
「別に作曲はしなくて良いから、取り敢えずギターを弾くために行くぜ!」という気持ちで聖飢魔Ⅱに参加したルーク参謀であるが、1987年春に行われた曲作り合宿で「全員で曲を提供しよう」という話になり、楽曲を書くことになった。
このルーク参謀の楽曲が、今後の聖飢魔Ⅱの流れと方向性を決定付けた。ハードロック/ヘヴィ・メタルを軸とした音楽性と言えば、前作までの流れを継承した大教典のように思うが、そのサウンドはガラリと変わり、新しい聖飢魔Ⅱの姿を提示する。
ダークな音から脱却して明るいサウンドになったと表現するのは、悪魔のイメージからして語弊があるかも知れないが、「ROCK’N ROLL PRISONER」「1999 SECRET OBJECT」を聴けば判るように、アメリカン・ハードロック的なドライさがある。
それは大教典に収録された楽曲すべてに共通し、とにかく本作はサウンドが素晴らしい。エース長官が書いたフュージョン的アプローチの「EARTH EATER」、ライデン殿下が書いたプログレ風味の「THE FINAL APOCAYPSE」など、バンドの民主化が進んで全員が曲を提供したからこその幅広さもあり。
第1位
「NEWS」(1997年)
聖飢魔Ⅱが音楽の頂点を極めた完全無欠の大教典・・・それが本作「NEWS」である。ここに収録された全10曲。各楽曲の素晴らしさはもちろん、1曲目から10曲目までの流れ、作品全体の整合性、あらゆる点が完璧すぎてクラクラする。
バンド活動が停滞し、1999年を待たずして解散する話がまとまっていた聖飢魔Ⅱ。だが、デーモン閣下が急に復活し(詳細は書籍「ひとでなし」参照)、バンド全体に新鮮なエネルギーが満ち溢れた時期に制作。ドン底から這い上がろうとする、バンドの眩いエネルギーを集約したからこそ完成した名作と言える。
「DEPARTURE TIME」「デジタリアン・ラプソディ」「BRAND NEW SONG」「SAVE YOUR SOUL~美しきクリシェに背をむけて~」など、この時期のルーク参謀は作詞作曲、ギター・プレイと、ありとあらゆる面が凄すぎる。
中でも珠玉のバラード「火の鳥~FIRE BIRD~」が素晴らしい。本曲を聴けば、涙を3リットルぐらいは流さずにはいられない。特にアコースティック・ギターのアルペジオから、エレクトリック・ギターのソロに入る瞬間は、滝のように涙が出るだろう。後期の聖飢魔Ⅱにおいて、ルーク参謀のクレジットに「Sound Master」と書かれていたのは納得。
エース長官の「CRIMSON RED」「虚空の迷宮」も素晴らしい。語り始めるとキリがないので、とにかく聴いて欲しい大教典。