PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱

 

レコードとひと言で言ってもピンからキリまであり、いろいろなジャンルを収集しているとひとつの傾向が見えた気がする。それはジャンルによって盤の状態や盤質に違いが明確に表れているという事。

 

例えば日本盤が発売されていないような、知る人ぞ知るヘヴィ・メタル・バンドの輸入レコードを中古で買ったとする。前の所有者は恐らく熱心な音楽マニアで、盤の扱いには注意を払い、ホコリが付いたら拭き取って手入れし、キズでも付いた日にゃ、ギャォ~!と絶叫するファンに違いない。

 

故に誰も知らないマニアックなレコードほど、キレイな盤質の物が多い。相当な音楽好きが所有していた可能性が高いからだ。熱心なファンなのに何故そのレコードを手放したのだと疑問が出て来るが、そこは様々な事情と人間ドラマがあるはずなので深堀りはよそう。

 

逆に大ヒットした歌謡曲のレコードは、いわゆる一般層が手にする事が大半と思う。そのアーティストが好きで盤をずっと大事にするファンもいるだろうが、場合によっては熱が冷めると手放す方も多いはず。言い方が適切かどうか定かでないが、盤を消耗品と捉える人も居る。

 

発売当時に聴いていたが、その後は押し入れの奥に仕舞い、引っ越しの時などに発掘されてレコード店に売ったというパターンもあるだろう。この場合、ジャケットは湿気でヨレヨレ、盤はカビだらけなんて事も。

 

このようにジャンルによって流通の状況、商品を手にするファン層が変わって来る。中古レコード店の100円コーナーや500円のコーナーに有名アーティストが多いのは、ヒット作品ゆえに流通枚数が多くレア度が低い、またはジャケットや盤にキズが多く、商品としての状態が悪いかのどちらかだろう。

 

今回は、ヤラセ無しの企画(いつもがヤラセという意味ではないが)。レコード店にフラリと入って、500円コーナーの商品を購入。どのような状態か検証してみる。私が惹かれて入手したのは、松田聖子氏の名作「風立ちぬ」(1981年)である。

大滝詠一氏、松本隆氏、鈴木茂氏がバック・アップしている作品。丁度、はっぴいえんどのアルバム「はっぴいえんど」(1970年)と「風街ろまん」(1971年)の再販レコードを同時に購入したので、私を見て店員の方は「この人、はっぴいえんどのファンなのね」と思ったに違いない。

 

それはさて措き、アルバム「風立ちぬ」。タイトル曲は、新井ひとみ氏(東京女子流)のカヴァー版もファンにお馴染み。厳密に言うなら、渋谷Pleasure Pleasureで行われている「新*定期ライヴ」に足を運んで、尚且つ「風立ちぬ」がセット・リストに入っている時に聴いた事のあるファンの中ではお馴染み。←話がどんどん逸れる。

 

話を戻そう。プライスカードに盤質Bと書かれていたように、袋から出すと確かにキズが多かった。指紋の跡がカビになったであろう白い点も全面に見られる。高温の環境にレコードを長期間 置いたら、盤を入れているナイロンが貼りついて表面に白い曇りが・・・なんて事もあるが、これに関してはそこまでのヒドい状態ではない。

A面に針を落とすと、バリバリというレコード特有のノイズの中「冬の妖精」のアコースティック・ギターのコード・ストロークが始まった。盤のキズの多さに反して、「ガラスの入江」「一千一秒物語」と意外な事に快適な音質で再生されている。

 

「いちご畑でつかまえて」でプツプツとノイズが入ったものの、音飛びはなく「風立ちぬ」でA面終了。B面も見た目はキズまみれ&白い曇りだらけであるが、「流星ナイト」から「December Morning」まで無事に再生できた。

 

実際に聴く前は、盤の状態を見て「音が飛びまくるだろうな」「安物買いの銭失いになるんだろうな」と覚悟のうえで聴いたが、それは全くない。個人的には、目に見えるキズは意外に音質に影響がないと再認識した次第。もちろん、機器や針圧によって差は出ると思うが。

 

検証結果と、これまでに私がレコードを購入した体験談からするに、安価なレコード=質が低いという訳ではない。レア盤なら音が飛ぶ深いキズがあろうとも数万円するものもある。逆に500円コーナーの商品で、見た目はキズがあろうとも音が飛ばす快適に聴けるものもある。

 

こればかりは経験値と運が左右するが、500円や100円コーナーの商品は掘り出し物の宝庫と言える。レコード店によっては、商品として出す前に検品され「盤面曇りあり」「深いキズあり」「音飛びあり」と表記されている事もある。良品を見抜く眼力を養うもの、レコード発掘の楽しみと言える。