PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱

 

2022年10月の土曜日、午後の渋谷を歩いていた。休日のスクランブル交差点と言えば、とにかく人、人、人。一説によると信号が青になって、交差点を横断する1回の人数は1000人らしい。

 

それに加え、ハチ公前には友人や恋人との待ち合わせで待機している人、看板に描かれた芸能人の写真を撮る人、演説や抗議活動の団体、観光客など、ありとあらゆる人が密集している。歩こうにも前に進まない、よそ見をすれば誰がとぶつかるような状態だ。

 

その中で、プロモーション活動のためチラシを配るアイドルの姿を日常的に見掛ける。グループを紹介するチラシであったり、ライヴのフライヤーであったりと内容は多種多様だ。状況によっては少々話をする事もできる。

 

だが、私はチラシを受け取る事は滅多にない。と言うのも配布しているチラシは1枚につき5円~10円ぐらいの印刷費がかかっていると思うので、多分ライヴに行く事は無いであろう私が貰ったら、アイドル側が損をしてしまう。

 

また私は「今日は暑いですね」とか「休日は人が多いですね」といった世間話、他愛もない話が得意ではない。アイドルと話すなら、その方の歌やパフォーマンス、作品をしっかり見聴きして音楽の話をしたい。

 

総合的に考えて、私がチラシを貰うのも、話し掛けて貰うのもアイドル側に申し訳ないので、スクランブル交差点を渡り、進行方向にアイドルの方がいると離れて通るようにしている。

 

が、この日は、いつも以上に歩行者が多かった。急ごうにも前に進めず、人の多さで前も確認できない状況だった。そんな中、流れに身を任せて歩いていると目の前に手が出て来て、チラシを差し出されたので取り敢えず受け取った。話すどころか、どのような方が配布していたのか顔も見ていない。

人混みを抜けてチラシを見ると、どうやらアイドルの方がくださったようだ。掲載されたアーティスト写真を見て、「あっ!これは凄そうなグループなので、早くライヴを見ておいた方が良さそうだ!」と直感した。そのようなオーラが写真から出ていた。

 

帰宅後、スケジュールを調べると月30本近くライヴを行っているよう。「う~む、30本なら単純計算で1日1本、もはや勤務だ!」と思いつつ、チラシの裏を見ると「GANGDEMIC Tsubaki」とサインが入っている。調べると左から2番目の人がTsubaki氏のようだ。また「一番右側の方は、ライヴでもマスクをしたまま歌うのだろうか?」と思った。

 

公演日程を見ると、数日後に目黒鹿鳴館でライヴがあるのでチケットを購入。初めて見るGANGDEMICのライヴ。知っている人も居ないので、恐る恐る(?)会場のフロアに入った。記憶によるとGANGDEMICは19時30分からのライヴ。

 

チラシを見て凄そうなグループだな~と思い足を運んだが、ライヴが始まってパフォーマンスが炸裂した途端、「凄い」を通り越して「とんでもなく凄い」グループと確信した。MCを挟まずノン・ストップで歌とパフォーマンスを披露する構成も素晴らしい。

 

当時は6人編成で、ステージを見ながら「あの人がチラシをくださったTsubaki氏だな~」と思い「マスクを着けたまま歌うのだろうか?」と思っていた方は、ライヴではマスクを外してパフォーマンスしていると判った。Ria氏、すみません。

 

Tsubaki氏がくださったチラシの情報によると、どうやらGANGDEMICはアルバムを発表しているようだ。終演後、物販でアルバムを入手。Tsubaki氏に「先日、渋谷でチラシをいただきまして」とお話させていただく事に。

 

私は「エネルギーの渦に呑み込まれて行くような凄まじいライヴでした」とか何とか言ったはず。Tsubaki氏によるとGANGDEMICが目黒鹿鳴館でライヴを行うのは初(当時)らしい。特典が私物サインだったので、入手したばかりのCDに名前を書いていただいた。当時「これを何回も聴いて楽曲を勉強いたします」と言い、今では1000回以上は聴いた。

その後、ちょくちょくライヴにお邪魔して今日に至る。2022年11月の渋谷クラブクアトロや2023年5月の恵比寿リキッドルームでのワンマン・ライヴは思い出深い。また、ガーデン新木場ファクトリーのライヴが印象に残っている。駅から倉庫街をひたすら歩き、どう見ても物流倉庫みたいな会場。遠足の気分だった。

 

そして来たるべき5月は、クラブチッタ川崎でワンマン・ライヴが決まっている。広いステージでパフォーマンスするメンバーの姿は何倍も凄く、何倍も美しいはず。やはりイチ押し曲は「PARTY GANG MONSTERS」だー!

 

しかしながら、あの土曜日の午後、あの時間に、あのルートで渋谷スクランブル交差点を歩いてなかったらTsubaki氏にチラシを貰う事もなく、GANGDEMICを知るキッカケも無かったはず。Tsubaki氏とは縁があったのかも知れませんな~。