PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱

 

何故に今頃「1999 BLACK LIST」「1999 BLOOD LIST」のレコードを紹介!?と思うに違いない。答えは簡単、これらが発布された当時、私はレコード・プレイヤーを持っておらず聴く事が出来なかったからであ~る。中野区から現在の渋谷区に引っ越した際にプレイヤーを入手したのだ。←どうでも良い情報だろう。

これらが発布されたのは2021年1月。2020年秋に行われたヴィデオ黒ミサ「特別給付悪魔」の開演前、スクリーンに各種CMが流れた際に、これらの発布を告知するCMもあったと記憶している。

 

この2作品は聖飢魔Ⅱが正式に「1999年12月31日をもって解散」を発表した直後に発布された。音楽活動を統括するだけでなく、解散に向けてアクセルを踏み込む景気づけの意味合いも含まれる。とにかく1999年の聖飢魔Ⅱの勢いとパワーは凄まじいものがあった。今回は、2作品のレコードについて紹介して行きたい。

 

時代性もあってオリジナル盤はCDのみの発布なので、大半の方がCDとして聴きまくった後、改めてレコードとして接する方が多いはず。1999年当時は、これらが令和にレコード化される事も、聖飢魔Ⅱが再集結して再びミサが体験できる事も全く予想していなかったが。

 

さて、両作品ともニューヨークのエンジニア、バーニー・グランドマンがリマスタリング及びカッティングを担当したと記載されている。バーニーについて詳しく語ると脱線するので、とにかく凄い人が担当したという認識で良かろう。←何とも大雑把。検索して調べてみると「リマスタリングの先駆者」「担当した37作品がグラミー賞」といった文字が躍る。

 

まずは商品の仕様について。実は、レコードと同日にCDもリマスター再販されている。再販CDは歌詞カードからディスクのデザインに至るまで、1999年当時のオリジナル盤を忠実に再現した商品だった。

 

それに対しレコードは、CDの歌詞カードに掲載されていた各構成員の写真を見開きジャケットの内側に掲載。また、歌詞カードは冊子タイプではなく、1枚の紙にまとめられている。ライナー・ノーツはレコード化されるに当たり書き下ろされたものだ。

 

両作品ともCDはディスク1枚だったが、レコードは各2枚組である事を特筆したい。収録時間の問題で2枚になったはず。しかしながら、その利点を活かし(?)各2曲の特別給付曲を追加収録。まず「1999 BLACK LIST」のD面で「悪魔のメリークリスマス(完結編)」「HEAVY METAL IS DEAD」が聴ける。この選曲は今だからこそ。

 

と言うのも、オリジナル盤「1999 BLACK LIST」が発布されたのが1999年5月21日、「悪魔のメリークリスマス(完結編)」は9月22日発布の最大小教典「20世紀狂詩曲」内に収録、「HEAVY METAL IS DEAD」は10月21日発布の大教典「LIVING LEGEND」に収録。つまり、これら2曲は「1999 BLACK LIST」が発布された当時、まだ世に出ていなかったのだ。

 

今だからこそ可能な選曲という点では、「1999 BLOOD LIST」の特別給付曲「空の雫」「ARCADIA」も当てはまる。聖飢魔Ⅱは1985年にCBS SONYから地球デビューを果たし、1996年発布「メフィストフェレスの肖像」からBMGにレコード会社を移籍した。

 

故に本活動時の聖飢魔Ⅱは、時代によって異なるレコード会社が楽曲の権利を持っていた。当時の「1999 BLACK LIST」がBMGから、「1999 BLOOD LIST」がSONYからと、異なるレコード会社から発布されたのは、このような理由があったから。

 

踏み込んで言うと「1999 BLACK LIST」に収録された初期楽曲の多くが再録音されたのも、権利の問題をクリアする事情が含まれる。もちろん、キャリアを積んだ当時のバンド・サウンドで名曲を再録音するというアーティスト精神、音源を入手する信者へのサーヴィス精神もあると思うが。

 

「空の雫」が収録された大教典「MOVE」(1998年)、「ARCADIA」が収録された最大小教典「蝋人形の館’99」(1999年)は共にBMGから発布された作品。上記の事情を踏まえると、SONYから発布された「1999 BLOOD LIST」には収録できない楽曲だったのだ。権利とは非常にややこしい。この説明もややこしい。

 

つまり30周年に発布された「XXX-THE ULTIMATE WORST-」(2015年)は画期的な作品なのだ。これはレコード会社の垣根を超えたオール・タイム・ベスト(いや、ワースト)な選曲で、30年分の歴史がひとつの作品にまとめられている。現在のSONY MUSICが全ての楽曲の権利を所有するようになったのだろう。

 

再販盤「1999 BLACK LIST」「1999 BLOOD LIST」は、CDもレコードもSONY MUSICの商品。ハード路線の初期と後期をまとめた「1999 BLACK LIST」、音楽性の幅を広げた中期を軸とした「1999 BLOOD LIST」。権利の問題をクリアした今、特別給付曲はそれぞれの特色を踏まえた選曲と振り分けなのだろう。

 

音質も大きく変わっている。まず、CDとレコードでは録音可能な音域が異なるので、CDと全く同じ音源をレコードにする事はできない。ここでニューヨークの凄腕エンジニア、バーニー氏が活躍するのだ。

 

良い音、良いサウンドの定義は難しく、人の好みによっても変わる。ここからは主観的な話になるのだが、CDは耳の奥までガツン!と来るサウンド。音圧があり、ステレオのヴォリュームを上げなくとも充分に迫力がある。

 

その分、レコードはCDで言うところの低音域と高音域がカットされ(と言うかレコードには刻む事ができない音域なのだ)、中音域にまとめられたサウンドと感じる。そこそこヴォリュームを上げないと音圧が出ないものの、音量を上げても耳の奥に突き刺さる高音が無いため聴き易い。

 

これら2作品を改めてレコードで聴くと、CDとは違う「レコードとして生まれ変わったサウンド」を存分に感じる事ができる。レコードはジャケットが大きいから迫力があるのは事実だが、飾りとして所有するだけでは勿体ない。レコードをプレイできる環境にあれば、是非、CDとの聴き比べをおススメしたい。