PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱

 

レコードの何が魅力かという問いに対する回答は様々と思う。音の良さ(柔らかさ)やジャケット大きさを挙げる方も多いと思うが、個人的には理科の実験に感じる面白さがレコードにはあると思っている。

 

7インチ、12インチと盤の大きさは異なるものの、塩化ビニールに刻まれた溝を針が擦り、その摩擦が単なる雑音ではなく、音楽になっているのは非常に興味深い仕組みではないか。

 

通常はレコード針が拾った信号をアンプで増幅させてスピーカーから鳴らすが、アンプを切ってレコード針の傍に耳を近づけると、針と盤が擦れる音がキッチリ音楽として聴こえているのが判る。何ともロマンに満ちている。

 

視覚的にも面白いレコードであるため、盤の仕様も様々な種類がある。一般的にレコードと言えば、黒の盤を連想する方が多い。実際に黒のレコードが最も量産されている色と思うが、コレクターをそそるのがカラー・レコードである。

 

赤や青の塩化ビニールの溝を針が擦ると音楽が聴ける・・・ワクワクさせる要素が満載だ(ワクワクしているのはアンタだけという問い合わせは御遠慮いただきたい)。

 

それはさて措き、今回はカラー・レコードを何作品か紹介したい。まずはディープ・パープルのアルバム「紫の肖像」(1973年)。

リッチー・ブラックモア(g)とイアン・ギラン(Vo)の人間関係に歪みが生じ、結果としてギランが参加した最後の作品(以降の再結成を除く)。第2期終焉のアルバムを深紫の盤で堪能しよう。名曲「ウーマン・フロム・トーキョー」収録。正にディープ・パープル(深紫)なカラーで判り易い。

 

続くは、イエローのレコード。グレタ・ヴァン・フリートの日本デビュー作「アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー」(2018年)。

当時の若手バンドでありながら、古き良き60年代のロックを想起させるサウンドでリスナーに衝撃を与えた作品。ハードロックのみならず、アート性、サイケ色、プログレ風味、フォーク、あらゆる音楽的要素がブレントされた名作。半透明の盤に薄いイエローという色合いが美しい。

 

ブラック・サバスのデビュー作「黒い安息日」(1970年)にもカラー・レコードがある。

先の2作品とは異なり、こちらは黒の盤に紫のペンキをぶっかけたような見た目。ただし、これはデザインであり本当にペンキが塗られている訳ではないのでご安心を。再生してもレコード針が傷む事はない。

 

「黒い安息日」「N.I.B」を筆頭に名曲多数。CDで聴ける「悪魔の世界」が収録されておらず、B面は「警告」で終了。CDの曲順で聴き慣れた方には物足らないかも知れないが、これが本来のレコード収録曲数。本商品も、それを再現している。

 

最後に紹介するのが、スレイヤーの「ライヴ・アンデッド」(1983年)。Gray marbled vinylと書かれているように、見た目はこの通り。

昔、動画サイトで「レコード盤に万遍なくボンドを塗り、乾燥後に剥がすと溝のホコリが隅々まで取れて音が良くなる」という映像を見た事があるのだが、ボンドを塗ったレコード盤が正にこのような見た目だった(大変失礼)。尚、動画の信憑性は不明。

 

本作については「ブラック・マジック」「ダイ・バイ・ザ・ソード」をはじめ、初期スレイヤーの荒々しさとエネルギー全開のライヴ演奏が聴ける。「ショウ・ノー・マーシー」「アグレッシヴ・パーフェクター」は活動を通してレア曲の部類に入るので貴重。

 

アーティスト問わず、カラー・レコードは現在でもリリースされており、何れも初回盤のみ、数量限定生産が多い。一般的な黒いレコード盤との差別化を図るためだろう。最近では、ローリング・ストーンズの新譜「ハックニー・ダイアモンズ」(2023年)、ビートルズ最後の新曲とされる「ナウ・アンド・ゼン」が数種類のカラー・レコードで出ている。

 

確かにCDもディスクに絵柄が印刷されているが、CDが回転している様子を見てワクワクした事はない。そもそも高速回転なので見えない。しかしながら、レコードは聴くだけでなく、回っている様子を見るのを面白い。言葉で表現できない魅力がある!