PSYCHO村上の怪奇骨董音楽箱
当初このサイトはレコードに特化した内容で始めたつもりは無かったが、気が付くと大半がレコードの話題になっている。今のワタクシの生活がレコードだらけになっているので、探しても他にネタが無い。
毎週のように各所の店に通い、隅から隅まで商品を見る生活だ。基本的に私はCD、レコード、カセット・テープ、衣類、書籍、グッズ類の全てをチェック。ジャンルで言うなら洋楽のロックからポピュラー音楽、日本のロック、歌謡曲、アイドル、映画のサントラなどなど全て見るので、一件に掛かる時間は相当なもの。
もはやレコード店に行くために人生を送っているようものだ。プレイヤーのターン・テーブルで回されるのはレコード盤だけでなく、私の生活そのものが回されているのだ(?)。よって今回もレコード関係の話である。
先日、新宿で7インチシングル・・・いわゆるドーナツ盤を1枚1枚見ていたら、聖飢魔Ⅱの小教典「アダムの林檎」(1986年)があった。一言で小教典と言っても時代によって仕様が異なる。
例えば8cmのCDならカラオケが収録されていたり、最大小教典(12cmのマキシ・シングル)ならカップリング曲が複数収録されていたりする。本作は当時、デーモン閣下が「2曲入り小教典」と表現していた。
A面とB面で計2曲というレコードだからこその仕様。LPは33回転、シングルは45回転。株式会社CBSソニー、FITZBEAT、「悪魔組」の会員募集、ファミコン「悪魔の逆襲」などなど、歌詞カードを見ると懐かしいワードが並ぶ。
今回、何故これを取り上げようと思ったか。実は本曲、大教典と小教典でミックスが異なるのだ。「アダムの林檎」は大教典「地獄より愛をこめて」(1986年)からのシングル・カット曲として世に出ている。
アーティストによって様々だが、シングル曲をアルバムに収録する際、同じ音源を使用する場合が多いはず。それは基本的に聖飢魔Ⅱも同様であるが、本曲に限っては違うヴァージョンが小教典になっている。
まず大きな違いは、デーモン閣下のヴォーカルだ。これはミックスの違いによるものでは無く、大教典と小教典で別ヴァージョンのヴォーカル・パートが使用されている。ソフトなイメージと言えば語弊があるが、大教典版はスタジオ音源として手を加え、作り込まれたヴォーカル・パートといった印象。
それに対し、小教典版はミサで聴けるヴォーカル寄り。もちろん、こちらもスタジオ音源だけに実際のミサほど「生の声」ではないが、良い意味での粗さが特徴的だ。それほどエコー処理が施されていないため、聴こえて来るサウンド全体の中にヴォーカルの重心が据わった音作りと言えそう。
効果音で言うと、大教典では曲の終了と共にリンゴをかじる音が聴けるが、小教典にはそれが無い。また、細かく聴いて行くと、各楽器のバランス、聴こえて来る位置、パーツの振り分け方など、微妙な違いが幾つもある。全体的なエコーの掛け方か、大教典版は洗練されたイメージで、小教典版はエッジの効いた仕上がりと感じる。
この小教典ヴァージョン、発布から数年間はレコードとカセット・テープでしか聴く事が出来なかったが、大教典「愛と虐殺の日々」(1991年)に収録され、アルバム形態でも聴けるようになった。
「歴代小教典大全」という副題がついているだけに、キッチリと小教典の音源で収録しているのが何とも律儀。後に3枚組CDとして「愛と虐殺の日々~歴代小教典ソニー時代完全版~」(2013年)が発布されているが、ここでも「アダムの林檎」の小教典音源が聴ける。
現在では「WORST」(1989年)、「1999 BLOOD LIST」(1999年)、「悪魔NATIVITY-SONG OF THE SWORD-」(2009年)など、幾つも教典に収録され、幾つものヴァージョンが存在する事を付け加えておこう。
踏み込んで言うなら、小教典音源と言ってもCDはやはりCDの音質。今回レコードで聴いてみると、CDとは別モノのレコード特有の音があると再認識した次第。改めて原点のひとつをレコードで聴き直してみたい。もちろん毎晩寝る前に、ちゃんと歯を磨いてから。←これは第一教典の説法だ。