2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人いたと、厚生労働省研究班から9/5発表がありました。
この期間の妊産婦の死因では、がんや心疾患などを上回り、自殺が最多でした。
妊産婦は子育てへの不安や生活環境の変化から、精神的に不安定になりやすいとされています。
研究班は「産後うつ」などメンタルヘルスの悪化で自殺に至るケースも多いとみて、産科施設や行政の連携などの重要性を指摘しています。
研究班(代表=国立成育医療研究センター研究所森臨太郎部長)が、国の人口動態統計をもとに、15~16年に妊娠中や産後1年未満に死亡した妊産婦357人を調べたところ、自殺は102人でした。他の死因は心疾患28人、脳神経疾患24人、出血23人などでした。
自殺した時期は妊娠中3人、出産後が92人、死産後7人。
出産後に自殺した92人を分析したところ、10万人あたりの自殺者数を示す「自殺死亡率」は、無職の世帯の女性が45・3と最も高く、
国内の女性の自殺率10・0(17年)を大きく上回り、年齢別だと35歳以上の自殺率がほかの年代より高かったとされています。
初産婦は2人目出産の約2倍でした。
今回の調査方法だと離婚などで姓が変わった人らを見逃す恐れがあり、自殺者はもっと多い可能性があるとされています。
研究班は「出産後の自殺は産後1年間を通して起きている。分娩施設や小児科、行政が連携して母親の異変の兆候を見つけ、地域で支え合うことが必要ではないか」と話しています。
別の厚生労働省研究班による、東京都世田谷区の妊産婦約1300人を対象にした心の状態の調査(2014年度)では、産後2週時点で初産婦の25%は「うつ病の可能性がある」と判定されました。
出産経験がある人でも、妊娠20週から産後2週にかけて、1割弱で推移していました。
調査した国立成育医療研究センター研究所の竹原健二室長は「初産婦にとっての産後2週目は、退院して自分で子育てができるのか不安な時期。本人も家族も注意してほしい」と話されています。
産後うつを早期に発見し、治療や支援につなげるため、厚労省は17年度から自治体による産後健診への助成を始めています。
産後2週目と1カ月に、うつ病の検査などを行い、精神科受診や保健師による支援につなげたいとしています。
妊娠中、産後にイライラする、なぜか涙が出てくる、などの症状があれば、ひとりで悩まずにご相談ください。