障害年金診断書(精神科)に関して…

以前、入院施設のある精神科病院に勤めていた頃は、非自発的入院が必要になるような重い状態の患者さんを担当することも多く、障害年金の診断書を書く機会もそれなりにありました。

なお、当院では幼少期から療育手帳をお持ちで、支援学級や支援学校などを通じて支援歴が明確な知的障害の方については、20歳を迎えられる際の障害年金のご相談を承っており、その旨はホームページにも記載しています。今回お話ししたいのは、それ以外の精神疾患に関する障害年金についてです。

精神疾患には症状の波がありますが、入院が必要になるほど症状が重く、社会生活や日常生活を営むことが難しい時期にある方にとって、障害年金は生活を支える大切な制度です。本来そうした方々のための制度であることに、異論はないと思います。

一方で、近年は精神科を受診すること自体のハードルが下がりました。これ自体は良いことだと思っています。ただ、それと並行して、「精神科に通院している」=「障害年金がもらえるのではないか」と捉えられている場面に出会うことが、少しずつ増えてきたようにも感じます。

ネットで情報が手に入りやすくなったこともあり、障害年金がライフハックのひとつのように紹介されているのを目にすることもあります。もちろん、制度を正しく知って利用することは大切ですし、申請をためらっていた方が情報に出会えるのは良い面でもあります。ただ、本来の趣旨から少し離れたかたちで申請を考える方が一定数いるのも事実です。


そうした申請が増えると、審査する側も慎重にならざるを得ず、結果として基準が以前より厳しくなってきているように感じる場面もあります。これはあくまで一臨床医としての所感ですが、本当に必要としている方に制度が届きにくくなっていく流れは、少し心配でもあります。


ここで一点、制度の前提として知っておいていただきたいことがあります。障害年金は、初診日から原則として1年半(障害認定日)を経過していないと申請の土俵に乗りません。そのため、「精神科にかかってすぐに年金を」というご希望には、制度上どうしてもお応えできない部分があります。


また、長く通院されていた医療機関で診断書を書いてもらえなかったために、年金申請を目的として転院をご検討される方もいらっしゃいます。お気持ちは理解できる部分もありますが、長く経過を診てこられた主治医の判断には、その経過を踏まえた根拠があることがほとんどです。当院で改めて拝見しても、同様の判断になることが多いというのが正直なところです。診断書をお書きするかどうかは最終的には個々の状況を見ての判断となり、医師によって見解が分かれることはありますが、「別の医師に頼めば書いてもらえる」というものでもない、というのは知っておいていただければと思います。


なお、初診の段階で障害年金の診断書を主な目的としてお越しになる方もいらっしゃいますが、先にお話しした知的障害の方のご相談を除き、当院は治療を中心に診ていく方針です。そのため、精神疾患での年金申請を第一の目的とされる場合は、その点に対応されているクリニックを当たっていただいたほうが、結果的にスムーズなこともあるかと思います。


制度は、本当に必要な方のために大切に使われるべきものだと考えています。ご自身が対象になりうるか迷われている方は、まずは主治医とゆっくり話してみていただければ幸いです。