精神科診療における「付き添い」の意味
こんにちは、精神科専門医のDr. ヤンです。
精神科や心療内科では、診察にご家族やパートナーが同席されることがあります。入院時は治療方針や生活面の確認、書類など手続きが必要なため、付き添いは重要な役割を果たします。
一方で通常の外来診療では、ご本人が自分の言葉で状態を説明できる場合、私はなるべく単独で診察を受けていただくことを勧めています。
同席が妨げになる場合
初診で来院された場合に、ご家族が「一緒に入ってもいいですか」と確認されることもあれば、担当医に一言もなく当然のように同席されることもあります。最初は同席を認めつつ、途中から「ここからはご本人とお話をします」とお伝えし、一時的に退室いただくことがあります。
これは、同席者の存在が患者さんの自由な発言を妨げることが少なくないからです。
若い女性と付き添いの彼氏
印象的なのは、若い女性の患者さんに多い「彼氏が常に付き添うケース」です。診察中、本人は受け身のまま黙って座り、彼氏が代弁してしまう。過去に精神科病院に勤めていた時に多く経験しました。このような状況では、医師と本人の治療関係が築きにくく、本人主体の治療も進みづらくなります。依存関係が強まりやすい点も課題です。
本人のみで話せる安心感
ご家族やパートナーが退室した後、途端に患者さんが饒舌になり、家族には言えなかった本音を語ることは珍しくありません。これは「ここでは自分の声をきちんと受け止めてもらえる」という安心感がもたらすものです。
付き添いが支える側面
もちろん、付き添いがあることで安心して診察に臨める方も少なくありません。特に初診や体調不良時には、そばに信頼できる人がいることで受診のハードルが下がり、治療への第一歩を踏み出しやすくなります。
結びに
付き添いは時に必要であり、時に不要です。重要なのは、患者さんが安心して自らの気持ちを語れる環境を整えることです。ご家族やパートナーの情報も、本人の声も、いずれも貴重です。その両者を尊重しながら「同席する時間」と「本人だけの時間」を意識的に設けることが、精神科診療において欠かせないと感じています。