放課後等デイサービスの療育の方針に口出しをしてマウントをとる父親の対応
放課後等デイサービスで支援をしていると、療育の方針に強く口出しをしてくる父親に出会うことがあります。
「うちの子にはもっと厳しくしてほしい」「そんな支援では甘い」「自分は会社で部下を育てているから分かる」「専門家より親の方が分かっている」といった言葉で、支援者を上から評価するような態度を取る場合もあります。
もちろん、保護者が子どもの支援に関心を持つことは大切です。
しかし、療育の方針への意見が、子どもの理解ではなく、父親自身の正しさを示すためのマウントになっている場合、現場は慎重な対応が必要になります。
まず大切なのは、父親の言葉をすぐに否定しないことです。
強い口調の裏には、「子どもが将来困るのではないか」「甘やかされて社会に出られなくなるのではないか」という不安が隠れていることがあります。
父親は支配したいだけではなく、子どもの将来を心配している場合もあります。
そのため、最初から「それは違います」と返すと、対立が強まりやすくなります。
まずは「将来を心配されているのですね」「自立を大切に考えていらっしゃるのですね」と、父親の不安や願いを一度受け止めることが大切です。
そのうえで、療育は根性論や上下関係で子どもを動かすものではないことを、丁寧に伝える必要があります。
発達障害のある子どもや、WISC-Ⅴ検査で認知の凸凹がある子どもは、単に厳しくすればできるようになるわけではありません。
ワーキングメモリが弱い子に長い指示を出せば混乱します。
処理速度が低い子を急かし続ければ、自信を失います。
感覚過敏がある子に無理な集団参加を求めれば、活動そのものが苦痛になります。
必要なのは、甘やかしではなく、その子が力を発揮できるための環境調整です。
父親への対応では、抽象的な説明よりも、子どもの具体的な姿をもとに話すことが効果的です。
「この子はできません」ではなく、「長い説明のあとでは動き出しにくいですが、手順を見える形にすると取り組めます」「急かされると泣いてしまいますが、見通しを伝えると最後まで参加できます」というように、支援の根拠を具体的に伝えます。
すると、療育方針が感覚的な優しさではなく、子どもの特性に基づいた専門的な支援であることが伝わりやすくなります。
また、父親が「もっと厳しく」と求めてくる場合には、「厳しくするか、甘くするか」ではなく、「どの行動を、どの方法で伸ばすか」という話に戻すことが大切です。
たとえば、順番を待つ力を育てたいなら、叱って待たせるのではなく、待つ時間を短く設定し、できた経験を積み重ねます。
気持ちの切り替えを育てたいなら、怒鳴って従わせるのではなく、終わりの予告や次の活動の見通しを伝えます。
療育では、子どもが失敗しにくい形を作り、小さな成功を重ねることで行動を育てていきます。
現場としては、父親の発言に振り回されすぎないことも重要です。
保護者の意見は大切ですが、療育方針は個別支援計画、子どもの発達特性、家庭や学校での様子、専門職の見立てに基づいて決めるものです。
父親の強い意見だけで支援方針を変えてしまうと、子どもにとって必要な支援がぶれてしまいます。
面談では、児童発達支援管理責任者や管理者も同席し、記録を残しながら、事業所として一貫した説明を行うことが大切です。
放課後等デイサービスの療育の方針に口出しをしてマウントをとる父親への対応で大切なのは、対立せず、迎合もしないことです。
父親の不安は受け止めながらも、支援の専門性と子どもの利益を守る必要があります。
療育は、親の理想通りに子どもを変える場所ではありません。
子どもの今の力を理解し、安心の中でできることを増やしていく場所です。
父親にもその視点を少しずつ共有し、子どもを中心にした支援へ戻していくことが、現場に求められる大切な対応です。
発達障害ラボ
車重徳

