「保育園で子どもの発達に課題があっても保護者に伝えないことがある理由」は、決して問題を隠そうとしているわけではなく、いくつかの慎重な配慮と現場の事情が重なっているためです。


保育士や園は子どもの日々の様子を丁寧に観察していますが、「発達の課題」と断定することには専門的・倫理的な難しさがあります。


発達は個人差が非常に大きく、同じ年齢でも成長のスピードは大きく異なります。


そのため、一時的な遅れや特性をすぐに「問題」として伝えることは、誤解や過度な不安を生む可能性があるのです。




まず大きな理由として、診断権限の問題があります。


発達障害や発達の遅れを医学的に判断できるのは医師であり、保育士はあくまで「気づき」を持つ立場です。


そのため、「発達に課題があります」と断定的に伝えることは適切ではなく、慎重な言葉選びが必要になります。


もし伝え方を誤ると、保護者との信頼関係が損なわれ、その後の支援が難しくなることもあります。




次に、保護者の受け止め方への配慮があります。


子どもの発達に関する指摘は、保護者にとって非常にデリケートな問題です。


突然「発達に問題があるかもしれません」と言われると、ショックや否認、怒りといった感情が生じることがあります。


その結果、園との関係がぎくしゃくし、子どもにとって必要な支援につながらなくなるケースもあります。


そのため、保育現場では一度に結論を伝えるのではなく、「最近こんな様子が見られます」といった形で、少しずつ共有する方法がとられることが多いのです。




また、保育園という環境特性も影響しています。


集団生活の中では、家庭とは異なる行動が見られることがありますが、それが一時的な環境反応なのか、継続的な特性なのかを見極めるには時間が必要です。


短期間の観察だけで判断せず、一定期間様子を見ながら、必要に応じて段階的に情報共有を行うのが一般的です。




さらに、園としての役割は「指摘すること」だけでなく、「支えること」にあります。


保護者に伝える際には、単に課題を示すのではなく、「どうすれば子どもが過ごしやすくなるか」「どのような支援ができるか」という具体的な提案とセットで伝える必要があります。


その準備が整っていない段階で伝えることは、かえって保護者を不安にさせるだけになってしまいます。




ただし、すべての園が伝えないわけではなく、信頼関係が築かれた中で適切に共有されることが理想です。


重要なのは、「伝えるか伝えないか」ではなく、「どのタイミングで、どのように伝えるか」です。


保育園は保護者と対立する存在ではなく、子どもの成長を共に支えるパートナーです。


丁寧な関係づくりと段階的な共有が、子どもにとって最も良い支援につながっていくのです。



発達障害ラボ

車重徳

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