WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査の全検査IQ(FSIQ)が低くても、学校の勉強(特に教科の点数)が良い子どもは実際にかなりいます。


これは「知能検査が低い=頭が悪い」ではないことを示す典型例です。理由を整理すると以下の5つが主です。



  1. 言語理解指数(VCI)が突出して高いケース
    WISC-Ⅴで一番学業と相関するのはVCI(語彙・類似・情報など)です。
    VCIが120以上で、他の指数(特に処理速度やワーキングメモリ)が70~85と低くても、
    「言葉で理解する力」が非常に強いため、国語・社会・理科などはほぼ満点を取れます。
    算数は処理速度が低いと計算ミスが多くなるので苦手に見えますが、
    文章題や思考問題はVCIの高さでカバーしてしまうため「できる子」に見えます。
  2. 努力・暗記型学習スタイルで補っている
    IQが低めでも「とにかく繰り返し覚える」「問題を何十回も解く」ことで成績を維持している子は多いです。
    特に日本の学校は「暗記事項」が多く、流動性推理(新しい問題への対応力)が低くても、
    「教科書を丸暗記+問題集の反復」で高得点が取れてしまいます。
    これは「知能が低い」のではなく「知能の使い方が違う」状態です。
  3. 処理速度(PSI)が極端に低いだけのケース(いわゆる“スロー・ラーナー”)
    PSIが70台でも、他の4指数が平均以上だとFSIQは90前後になりますが、
    授業の理解自体は遅くても正確で、宿題やテストでは時間制限が緩いため高得点になります。
    逆にWISCの紙ペン課題は時間制限が厳しいので極端に低い数字が出る→「ギャップ」が生まれるのです。
  4. ギフテッド+ADHD/ASDの2E(Twice-Exceptional)パターン
    全体IQが90~100でも、VCIや流動性推理が130以上ありつつ、
    ワーキングメモリや処理速度が60~75と極端に低い子がいます。
    学校の授業は「興味がある分野」だと驚異的な理解力を見せ、
    先生から「天才的」と評価される一方で、WISCでは「ワーキングメモリが壊滅的」になるため平均~境界域に落ちる。
    実際の学力は学年トップクラスということがよくあります。
  5. テスト不安・検査協力度の影響
    WISC当日に緊張・疲労・不眠だと10~20点は簡単に下がります。
    特にASD傾向の子は「検査室という非日常環境」でパフォーマンスが30%以上落ちることもあります。
    一方、普段の学校は「慣れた環境+好きな先生」なので本来の力が発揮でき、成績は良いままです。




まとめると


WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査は「その日の、その検査室での、最適条件での最大パフォーマンス」を測っていますが、
学校の勉強は「慣れた環境+長期反復+部分的な得意分野」で成り立っています。


だから「検査は低いけど勉強できる子」は珍しくなく、むしろ臨床では日常的に見ます。



重要なのは
「WISCが低い=将来がダメ」ではなく
「どこが得意で、どこが支援が必要か」を読み解くことです。



言語理解指標(VCI)が高ければ「言葉による学習」が強みなので、大学進学も十分可能です。



数字に惑わされず、子どもの「強みを伸ばす」関わりが何より大切です。 



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車重徳

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