学習障害の一種である、算数障害(ディスカリキュリア)とはどういった障害なのでしょうか?
算数障害(ディスカリキュリア、Dyscalculia)は、
学習障害の一種であり、
算数や数学に関する概念や計算、
数の認識に困難を伴う状態を指します。
この障害は、知的能力や教育環境に
問題がないにもかかわらず、
特定の数学的スキルの習得が
困難であることを特徴とします。
算数障害(ディスカリキュリア)は
、日常生活や学業において
深刻な影響を及ぼすことがあり、
早期の発見と適切な支援が重要です。
算数障害(ディスカリキュリア)の特徴
①数の認識の困難
算数障害(ディスカリキュリア)を持つ人は、
数の認識や数量の理解に困難を伴います。
例えば、数の概念を理解するのが難しい、
数の大小を比較するのに苦労する、
数直線上での数の位置を
特定することが難しいなどの問題があります。
②基本的な計算の困難
足し算、引き算、掛け算、割り算などの
基本的な計算を正確に行うことが難しいです。
例えば、繰り上がりや繰り下がりを伴う
計算ができない、
九九を覚えられない、
計算過程で数字を間違えるなどがあります。
③数学的推論の困難
算数障害(ディスカリキュリア)を持つ人は、
数学的な問題を解くための
推論能力に困難を伴います。
例えば、文章問題を理解して解くことが難しい、
数学的なパターンを見つけるのが苦手、
論理的なステップを踏んで
問題を解決するのが難しいなどがあります。
④空間的な認識の困難
空間的な認識力が低いため、
図形や空間関係を
理解するのが難しいことがあります。
例えば、幾何学の問題が理解できない、
立体図形を平面に描くことができない、
地図を読むのが難しいなどです。
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算数障害(ディスカリキュリア)の原因
算数障害(ディスカリキュリア)の原因は
完全には解明されていませんが、
いくつかの要因が考えられています。
①神経生物学的要因
算数障害(ディスカリキュリア)は、
脳の特定の部分
(特に左右の後頭頂皮質)
が正常に機能していないことが
原因とされています。
この部分は、数の認識や
数学的な処理に
重要な役割を果たしていると
考えられています。
②遺伝的要因
遺伝的な要因も
算数障害(ディスカリキュリア)に
関与していると考えられています。
家族内での発生率が高いことから、
遺伝的素因があることが示唆されています。
③発達的要因
幼少期の発達段階において、
数や数学的概念の理解が
十分に形成されなかった場合も、
算数障害(ディスカリキュリア)の
原因となることがあります。
これは、早期の数に関する経験や
教育の不足が関与する可能性があります。
算数障害(ディスカリキュリア)の診断
算数障害(ディスカリキュリア)の診断は、
教育現場や医療機関で行われます。
以下は一般的な診断プロセスです。
算数障害(ディスカリキュリア)の初期評価
教師や親が
子どもの算数や数学に関する
困難に気づいた場合、
学校のスクールカウンセラーや
公認心理師や臨床心理士に相談します。
算数障害(ディスカリキュリア)の専門的評価
専門家による詳細な評価が行われます。
これには、数学的能力、
数の認識、計算能力、知能検査、
学業成績の評価が含まれます。
算数障害(ディスカリキュリア)の医療的評価
必要に応じて、
医師による評価が行われ、
視覚や聴覚、運動機能の問題が排除されます。
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算数障害(ディスカリキュリア)の対応策と支援
算数障害(ディスカリキュリア)に
対する効果的な支援は、
早期の発見と適切な介入が鍵となります。
以下に、いくつかの具体的な対応策と
支援方法を紹介します。
①特別教育サービス
多くの学校では、
算数障害(ディスカリキュリア)を
持つ子どもに対して
特別な教育プログラムを提供しています。
これには、個別指導や
少人数クラスでの特別指導が含まれます。
教育者は、子どもの
特定のニーズに合わせた
カスタマイズされた教育プランを作成します。
②マルチセンサリー教育
マルチセンサリー教育アプローチは、
視覚、聴覚、触覚を組み合わせて
学習を促進する方法です。
具体的には、数や数学的概念を
実物を使って視覚的に示し、
触覚的な操作を通じて
理解を深める方法があります。
③テクノロジーの活用
算数障害(ディスカリキュリア)を持つ人にとって、
テクノロジーは重要な
支援ツールとなります。
例えば、計算アプリや
タブレット端末を使用した
学習アプリケーションなどが役立ちます。
これらのツールは、
数学的なスキルの習得をサポートし、
学習の効率を向上させます。
④親と教師の協力
親と教師の密な連携は、
算数障害(ディスカリキュリア)を持つ
子どもの支援において非常に重要です。
親は家庭での学習をサポートし、
教師は学校での進捗を
モニタリングします。
定期的なコミュニケーションを通じて、
子どものニーズに合った
適切な支援を提供することができます。
⑤成功体験の提供
算数障害(ディスカリキュリア)は
しばしば自己評価の低下を引き起こします。
そのため、子どもの
自己肯定感を高めるための
活動やカウンセリングが重要です。
成功体験を積み重ねることで、
子っどもの自信を育むことができます。
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算数障害(ディスカリキュリア)の事例
具体的な事例を通じて、
算数障害(ディスカリキュリア)の
影響と支援方法を考えてみましょう。
算数障害(ディスカリキュリア)の事例1: 小学生のE君
E君は、小学3年生の時に
算数障害(ディスカリキュリア)と診断されました。
E君は数の認識や
基本的な計算に困難を抱えており、
授業で学ぶ数直線や
基本的な足し算・引き算が理解できません。
学校では、特別支援教室での
個別指導を受け、
数の概念を実物を使って
視覚的に学んでいます。
家庭では、親が
数のゲームやアプリを使って
楽しみながら学習をサポートしています。
算数障害(ディスカリキュリア)事例2: 中学生のFさん
Fさんは、中学生になってからも
数学に関する困難を抱えており、
成績が低迷していました。
学校カウンセラーの
スクールカウンセラーとの面談から
クリニックの受診を経て、
算数障害(ディスカリキュリア)
の診断が下されました。
Fさんには、個別の教育計画(IEP)が作成され、
特別支援の授業時間が増やされました。
さらに、Fさんは
授業中に計算アプリを使用することが許可され、
家庭でも親がサポートして
数学の復習を行っています。
算数障害(ディスカリキュリア)のまとめ
算数障害(ディスカリキュリア)は、
算数や数学に関する概念や計算、
数の認識に困難を伴う学習障害であり、
適切な支援と介入が重要です。
算数障害(ディスカリキュリア)の特徴には、
数の認識の困難、
基本的な計算の困難、
数学的推論の困難、
空間的な認識の困難
などが含まれます。
原因は神経生物学的要因、
遺伝的要因、
発達的要因などが考えられます。
早期の診断と特別教育サービス、
マルチセンサリー教育、
テクノロジーの活用、
親と教師の協力が
効果的な支援となります。
具体的な事例を通じて、
算数障害(ディスカリキュリア)を持つ
子どもが直面する困難と
それに対する支援方法を
理解することが重要です。
これにより、算数障害(ディスカリキュリア)を持つ
子ども達がそのポテンシャルを
最大限に引き出し、
健全な成長と発展を遂げることができます。
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車 重徳