ベントン視覚記銘検査(Benton Visual Retention Test, BVRT)とは…
ベントン視覚記銘検査
(Benton Visual Retention Test, BVRT)は、
アーサー・ベントンによって開発された、
視覚的記憶、
視覚的知覚、
視覚-運動協調
を評価するための
神経心理学的検査です。
この検査は、
特に脳損傷、
神経変性疾患、
学習障害、
注意欠如・多動性障害(ADHD)
などによる認知機能障害の評価に有用です。
BVRTは、
被験者が特定の図形を
短時間観察した後、
記憶に基づいて
その図形を再現する能力を測定します。
ベントン視覚記銘検査の実施方法
ベントン視覚記銘検査には、
複数のバージョンが存在しますが、
最も一般的な手順は以下の通りです。
①検査材料
検査官は、
被験者に一連の図形(通常は10枚)を
一枚ずつ提示します。
②観察時間
各図形は約10秒間
被験者に見せられます。
③再現
観察後、被験者は
その図形を紙に描いて再現します。
この作業は、
各図形について繰り返されます。
④採点
再現された図形は、
正確さや欠落部分、
追加された要素などに基づいて採点されます。
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具体例と解釈
例1:脳損傷患者の評価
状況
脳卒中を経験した
50歳の男性が
BVRTを受けました。
彼は図形の一部を
頻繁に欠落させ、
図形の比率や
位置関係を正確に
再現できませんでした。
解釈
この結果は、
視覚的記憶や
視覚-運動協調の障害を
示唆しています。
脳卒中による
特定の脳領域の損傷が、
これらの認知機能に
影響を及ぼしている可能性があります。
例2:学習障害のある子どもの評価
状況
学習障害の診断を受けた
8歳の子どもが、
図形を極端に
簡略化して再現し、
細部を多く省略しました。
解釈
子どもの視覚的記憶の
処理能力や注意の持続に
問題がある可能性を示します。
この結果は、
学習障害の影響を受ける
視覚情報の処理に
困難があることを反映しています。
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ベントン視覚記銘検査の意義
ベントン視覚記銘検査は、
視覚的記憶と
その再現能力を評価することで、
脳の特定の障害や
認知機能の低下を
明らかにすることができます。
この検査は、
脳損傷のある患者の評価、
神経変性疾患の進行監視、
学習障害やADHDの診断、
老化に伴う認知機能の変化の評価など、
幅広い臨床的応用があります。
BVRTは、
個々の認知機能のプロファイルを
詳細に把握し、
適切な治療や
支援プログラムの計画に
役立てることができる重要なツールです。
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発達障害ラボ
車 重徳