活動報告(アッシュ・J・ケニーの日記、マター0 その7) | とあるアークスの日常

とあるアークスの日常

ファンタシースター2のブログです

面白かったな。「裏アークス戦技大会」だとさ。
六芒均衡のヒューイが主催した奴でもそうだったんだが、イベントは俺も結構好きだ。
その前の交流会から、ブロックに入りきらないほどの参加者が集まっていて、大賑わいだった。

で、戦技大会に参加してヘマをしたといって、俺の友人が結構凹んでいたが・・・。

まあ明日、飯にでも誘って慰めてやるとして、
結構遅い時間だが、まだしばらくれ寝そうにない。
そんなわけで、さっきの続きを書いてしまおう。




『ヨーク一族』
その星の先住民の名前だ。彼らは自然の中で暮らし、自然と共に生きる、とても友好的な種族だ。
よそ者で少しおどおどしていた俺にも、優しく接してくれた。
バテルはその村の長老と顔なじみらしく、親しげに話をしていた。
巨大な木の中に彫り込まれた住居の中で、二人の会話を遠くから聞いていた。

―変わりはないか?
―妙な声を聞くことがある。

確か、そんな事を話していた。


その日、俺達はその村で一泊することになった。全てバテルの提案だ。


「この村の先にあるある場所に、お前を連れて行きたい」


それがどんな場所なのか、バテルはもちろん答えてくれない。
相変わらず、いたずら小僧のように笑うと、とっとといびきをかいて寝てしまった。
俺はむくれながらも、どうせ明日わかるのだからと目を閉じた。



・・・タスケテオクレ。



夜、床に付いた俺の頭の中で声が聞こえてきた。
さて、どう表現したものか。
不思議な声だった。アークスの奴らは馴染みのあるアムドゥスキアの龍族。彼らは念話を通じて俺達に話しかけてくるが、
イメージとしてはあんな感じだ。
だが、彼らの言葉ほどはっきりとした物ではなく、もっとぼんやりとした、遠くの方から聞こえてくるような声だ。
俺はその声に引っ張られるように起き上がり、そのまま大木の家の外に出て、森の中へと入っていった。
意識はあったがまるで夢の中にいるような浮遊感があったのを覚えている。
だから俺はその時、その光景を夢だと思い込んでいた。

真っ暗な森の中、高い木々の間から差し込む月明かりを頼りに、俺は森の中を進んでいった。
そして、やがて突然、巨大な木だけの景色がぶっつりと終わりを迎える。

頭の上を遮っていた木の枝がなくなり、辺りは星の月の光で照らし出されていた。
そして、不思議なことに、そこにあった花や水が、・・・空気までもが、自ら光を放っていた。
それを見たとき、「ああ、これは間違いなく夢だな」と思った。
それほどの幻想的な光景だったのだ。

わかりやすく言うと、ナベリウスにある遺跡に近い景色だ。
そこにある建造物であっただろう瓦礫を浸すように、浅く水が貼られ、瓦礫のいたるところに色取り取りの花が咲いていた。
夜の闇の中で、その場所だけ、まるで空間そのものがぼんやりと光っているようで・・・そう、なんというか、『光の中』にいる感覚だった。


そこを頭の中に響く声に導かれるまま歩いていく。
こっちだよ・・・こっちだよ・・・と囁く声に導かれるまま遺跡の中を進んでいく。
そして、ようやく中央にたどり着いた時だった。
遺跡の中心部には森の中に整然と並んでいた物よりもさらに巨大な樹が夜空に向かって伸びていた。
俺はその根元で足を止め、その樹を見上げた。
そして、ふと胸騒ぎを覚えた。 
どういう理屈かはわからないが、ただ直感で酷く「嫌だ」と思った。
その立派で幻想的な美しさを放つ樹の下におぞましい・・・そう、『フォトン』を感じたのだ。
周りの美しい空気にひどく不釣合いな、恐ろしい程に禍々しいフォトンを・・・。
そんな物を感じて不安に思った俺に、声は再び語りかける。


・・・ヨクキテクレタネ!


遠くからのぼんやりとしたものじゃない。近く、頭の中で、ハッキリと聞こえた。
そして、


・・・キミノカラダヲオクレッ!



声は一転して、恐ろしい野獣か何かのように吠えるように言った。
その瞬間、体を包み込んでいた暖かな空気が、とてつもなく冷たくなっていった。
そして、振り向くと。
・・・そこには一匹のダガンがいた。

なぜ、この星にダーカーが?

そんな疑問が頭の中を過る中、一匹だと思っていたダーカーはさらに増え、気がつくと俺は奴らに囲まれていた。
全て、尖兵の役割を話すだけの下っ端ダーカー吃だったが、ただの子供・・・しかも丸腰だった俺には十分すぎるほどの驚異だった。
奴らはここぞとばかりに襲いかかる。

それを俺は辛うじてかいくぐることができた。

その頃から数えて約一年前、あれだけひどい目に合わされたというのに、俺はダーカーを前にしても自分を保つことができた。
トラウマになり、発狂したとしても不思議でないんだろう。普通ならそう思う。だが、俺はそうならなかった。
なるどころか俺は・・・丸腰のまま奴らに立ち向かっていった。
いや、正確に言うなら活路を見出そうとしていた。
完全に囲まれるようになっていたし、逃げ場は完全にたたれていた。
それなら、自分から突っ込んでその包囲網に穴を開け、一目散に逃げようと考えていた。
かくして、俺とダーカーとの戦いは再び始まった。

さて、どうやって戦ったかといえば、その場で武器になる物がないので、事もあろうか素手で殴りかかっていった。
熟練のアークス・・・いや、今の俺でも・・・とにかく、フォトンの恩恵を受けた武器を持っていなかろうとも、ダーカーを倒す事は一応できる。
俺は飛びかかってきたダガンの腹にあるコアに向かって殴りかかった。
するとどうだ?
俺の拳が相手の拳に当たったかと思うと、そのダガンは一発で霧散した。
子供の力でだ。
手応えはまるで立体ホログラムで映し出された目標に向かってパンチを出したような、空振りに近い感覚だった。
最初からその場に存在しなかったかのように消え去ったダガンだが、俺はあまりにも力んでいたのと意外すぎる手応えにバランスを崩し、そのまま転倒した。
そして、その隙を見逃さない残りのダーカーが一斉に襲いかかってくる。


ヤバイ!


俺は目を閉じてしまった。そして、


「戦ってる最中は絶対に目を閉じるな。たとえ、死のまぎわだろうとな」


声がした。よく知った男の声が。
俺が目を開くと、そこにはバテルがいた。
一年前、アークスシップの中で拾ったというソードを片手に。


「それにしても、とんだせっかちさんだな。待ちきれなくて自分で来ちまったか? ん?」


群がっていたダーカーは既に消えていた。
おそらく、バテルがそのソードで倒してしまったのだろう。
ソードを担ぎ、笑っていたバテルの表情がふと変わる。


「それとも、せっかちなのはテメエなのかな・・・クラウン!」


バテルの表情がいつになく険しくなり、そのまま振り返ってソードを突きつけた。
光に包まれていたはずの樹に向かって。


――ヒヒッ! バテルカ。ヒサシブリダネエ・・・。


「じいさんの言ってたのは本当だったようだな。テメエ、いつ起きやがった?」


俺の中に響いてくる声はバテルにも聞こえていたらしかった。
あいつは険しい口調で声とやり取りをしていた。
その内容はどうも思い出せない。 尻餅をついていた俺はそのやり取りが何処か遠い場所で行われているかのような気がして。
気が遠くなっていた。

ただ、バテルが樹の幹に・・・光りを消し、禍々しい闇をまとったその腹に、バテルがソードを思いっきり突き刺した事と、頭の中で響いた苦しそうな悲鳴。
そして、


「俺の体が欲しいのならくれてやる。その代わり、代金はテメエの存在そのものだ!」




次に気がついたときには、俺はバテルに背負われていた。意識を取り戻した俺に、バテルはようっと気さくに言い。
一つだけ質問をした。


「声が聞こえたのか?

俺は頷いて答えた。バテルはそれに、そうか・・・っとため息混じりに呟いた。
美しい遺跡の中、バテルは俺を背負い、遺跡の中を歩いていく。
そして、言った。


「ボウズ。感謝しろよ? あいつはな、昔暴れまわったとんでもないワルでよ。エラーい人の力で、この星に封印されていたんだ」


そうなの? と俺は返し、バテルはおうよっと答える。


「時折ああやって悪さをしようとするんだ。けどな、この星のフォトンのおかげで、今やつはほとんど力が発揮できないんだ」


俺たちが一年間過ごしたあの惑星は強力な『正』のフォトンを放ち、その『ワル』を押さえ込み続けているというのだ。
バテルはふと、何処か寂しそうな声で言う。


「お前をここに連れて来ようと思った目的は、さっきの声が聞こえるかどうか。試したかったんだが・・・そうか、聞こえちまったのか。お前にも」


バテルは悲しそうだった。どういうわけだか・・・。


「お前はこれから、もっと沢山の声を聞くようになるはずだ。今日みたいなのをな。けど、気をつけろ。中にはさっき見たいなろくでもない奴の声もあるんだ」


そして、穏やかに、言い聞かせるような口調で言った。


「いいかボウズ。俺から教えられることはほとんどない。ただ。これだけは言える。・・・仲間を作れ。そして大切にしろ。必ず、それがお前の力になる」


何よりのな・・・。



その次に目覚めたのは、次の日の昼だった。





・・・調子に乗って書いていたら長くなってしまった。そろそろ寝よう。
もう、外は明るくなっている。流石に肩が凝った。