市街地での戦いはそれからも続いた。
虫のような外見をしたダガンやクラーダなどのダーカーの尖兵たちはもちろん、
クワガタのような外見のグワナーダ、ダガンを巨大にしたかのようなダークラグネ、
腕の細いゴリラのようなヴォルガータに巨大な亀の怪獣みたいなゼッシュレイダ。
そんな大型のダーカーも次々と現れ、俺達に襲いかかってくる。
さすがのバテルにも疲労の色が見え始めていた。俺の方は張り詰めた緊張感のせいでとっくに限界を超えている。
それでも俺達は孤立無援の中、窮地をくぐり抜けていった。
バテルは時折襲い来る原因不明の苦痛に耐えながら。
俺は途切れそうな意識を必死につなぎとめながら。
気がついたら、俺はとある医療施設のベッドに寝かされていた。
研ぎ澄まし続けていた精神力もとうとう限界を迎え、意識を手放したのだという。
ひどい疲労感は残っている物の、大した怪我もしていなかった俺は早々にベッドから追い出された。
他に、そのスペースを必要としている者がいるためだった。
施設の中はひどい有様だった。
ダーカーに重傷を負わされた者達のうめき声や。離れ離れとなった身内を呼ぶ悲痛な声。
そして、親を探す子供の泣き声で溢れかえっていた。
その時感じた恐怖感は、ダーカーに襲われていた頃の物とは全く種類が違う。
なんというのだろう。 生命の危機から生還し、安全を確保できたはずだというのに、目の前に悲惨な光景が、その時に俺にとって地獄に見えたのだ。
体の一部を損傷し、泣き叫ぶ者がいた。
虫の息だというのに病室に入りきらず、その場で蘇生処置を受けている者がいた。
廊下にまで溢れかえるほどの負傷者が、さらにまた担ぎ込まれ、悲痛な叫びはさらに膨らんでいく。
そんな中にただ一人。
記憶をなくし、頼る者もいなかった俺にとって、そこは戦場とは違った意味で地獄だった。
だから、俺は最初にさがした。
バテルの姿を。
「目を覚ましたか」
真っ青な顔であたりを見回しているさなか、そんなバテルの一声が恐ろしいほど心強かった。
振り返れば、ボロボロのマントとボサボサの髪の小汚い男が、ニヤリと口元を歪めて俺を見下ろしていた。
「お互い、まだツキに見放されていなかったようだな」
ダーカーの進撃はその日・・・俺とバテルがであった日を境に、急速に収縮していった。
記録では、もともと天涯孤独の身だとあったが、何分混乱していた為、その情報も今となっては正しいとは証明できない。
だが、いずれにせよ俺を知る者は全ていなくなってしまった。
事実がどうあれ、正真正銘の天涯孤独となった俺が次に行くべき場所は直ぐに見つかった。
というよりも、声をかけられたというべきか・・・。
「ボウズ。 どうせ行く場所がないんだろう? 俺と来い」
意外にも、バテルがそう言って俺を強引に引き取ったのである。
自体の状況把握と収束の為に来ていたアークスの一人・・・白いボディのキャストだったか・・・が彼を引き止めるが聞く耳を持たず、誘拐でもされるかの勢いで俺は連れ出された。
そうして、ダーカーの進撃は大きな爪痕を残し・・・。
俺はその日から、バテルを『おっさん』と呼ぶようになった。