拡大するインターネット空間 IPアドレスv4 ⇒ IPアドレスv6の対応と共存

当旧HP2009/10/31---2022/4/3 ブログへ掲載

 

国別の新ドメイン名誕生は国際化する多数の言語に対応

 

 インターネット上の住所に当たるドメイン名を管理する米民間団体ICANNは30日、ソウルで開いた会議で、国別ドメインについてアルファベット以外の文字を使えるようにすることを決めた。

 漢字やハングルなど多数の言語に対応し、例えば「.日本」「.中国」といったドメインの設定が可能になる。

 ICANNは来月16日から新たな国別ドメインの使用申請を受け付けるという。

 30日の会議をICANNと共同開催した韓国インターネット振興院が明らかにした。

 ICANNは会議で、「国際化ドメイン名導入手続きの最終案」を議決した。

 現在ドメイン名にはアルファベットのA-Z、数字の0-9及びハイフンのみが使用可能となっているが、ICANNでは各国が自国の言語をドメインに使えるようにする、国際化ドメイン名(IDN)の導入が進められている。

 

 従来は国別ドメインの前にくる第2ドメインまでは、英語以外の文字の使用も認められていた。

 ICANNの発表によると、同CEOは動画でのコメントを発表、「ネットは世界中を繋ぎ、ドメイン名は様々な言語、文字に対応する必要がある

 来年には中国語やロシア語にも対応する」と多言語化に意欲を示した。

 ICANNの会長を務めるPeter Dengate Thrush氏によると、この決定は「インターネットが40年前に誕生して以来最大の技術的変更」であり、「世界の言語から10万文字をドメイン名としてオンラインに持ち込むための第1歩」であるとのこと。

 20億人に達した世界中のインターネット利用者により、全世界で登録されているドメイン名は2009年4月現在で1億8300万に達したとの報告がある。

 

 インターネットの根底を支える技術の一つが、ネット上の資源を識別するアドレス体系で、数字による「IPアドレス」と、英文字による「ドメイン名」の2種類がある。

 この2つは、インターネット上の「論理資源(logical resource)」、或いは「重要資源(critical resource)」と総称される。

 IPアドレスもドメイン名も、世界中で重複しない仕組みが用意され、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)という国際組織が、他の様々な組織と連携しながら一元的に管理している。

 ドメイン名はIPアドレスと対応するように管理され、その対応関係のデータは、DNSサーバーというサーバーで管理運用されている。

 DNSは「ドメインネームシステム」の略で、全世界に存在する分散データベースシステムによって機能している。

 

 

 IPアドレスもドメイン名も抽象的な論理上の概念で、物理的な実態を持つ訳ではない。

 仮想空間とか電脳空間とも呼ばれている。

 だがサーバーやルーターなど、インターネットを接続する物理的な設備に特定のIPアドレスが割り当てられることで、世界中のコンピューター同士の接続が混乱なく実現される。

 現在使われているIPアドレスは、二進数32 ビットの数字で構成され、通常は、IPv4「124.87.255.255」のように、ピリオドで区切られた最大3文字(0~255)ずつ4組の数字列で表記される。

 ドメイン名は階層的に構成され、ピリオドで区切られた文字列の一番右、第1階層を「トップレベルドメイン(TLD)」と呼ぶ。第2階層はセカンドレベルドメイン(SLD)、第3階層はサードレベルドメイン(3LD)と定義され、これらの階層構造全体が構成する存在をドメインネーム空間と呼ぶ。

 

 TLDには、国別と分野別の二種類があり、国別TLDはccTLD(country code TLD)と呼ばれ、「.uk」「.us」「.cn」「.jp」など2文字の英文字で構成され、全世界250ほどの国や地域の名称が登録されている。

 一方、分野別の TLDはgTLD(generic TLD)と呼ばれ、現在は「.com」「.net」「.org」など20種類が存在している。

 そもそもICANN創設の目的の1つが、「.com」の独占の打破、すなわち競争の導入であった。

 当時は、TLDの運用管理と個々のドメイン名の販売・登録業務とは、米国のベリサイン社で行われるのが普通だった。

 もう1つの大きな目的が、gTLDの増加ないし「自由化」であった。

 

 既存のccTLDである「.jp」は、1997年からは日本のインターネットの導入を推進した関係者らが設立した、社団法人JPNICによって運用されてきた。

 その後、公益法人では機動的な経営が難しいなどの理由で、JPNICが公益性を担保することなどを条件として、2000年12月に民間営利会社である日本レジストリーサービス(JPRS)社を当初100%出資で設立、「.jp」の管理運用をJPRSに段階的に移管することとし、日本政府もこれを承認してICANNに推薦状を送った経緯がある。

 総務省は、関係者の意見を踏まえて、日本語のccTLD「.日本」の公益性を重視し、とくに管理運用事業者をICANNに推薦する責任が政府にあることから、この問題について情報通信審議会で検討することにした。

 文字列、管理運営事業者の選定方法などについて審議が行われた。「.日本」の管理運用事業者(レジストリー)については、ドメイン名の利用の多様性を促進し、市場の活性化を図るためにも、広く公募し、公正なプロセスによる審査で選定すべきだという方向で一致した。

 

 これまでICANNではTLD導入への「慎重論」が強く、gTLDはICANN発足以降、今日までに計13追加されたのみ。

 特に必要性が高いと認められるものが個別に承認されただけで、基本的にハードルは高かった。

 13という数は、いかにも少なく、gTLDの「原則自由化」を求める声は根強く存在してきた。

 ドメイン名全般の自由化を求める意見は引き続き根強く存在し、ICANNでは、新gTLD全般の承認の普遍的なルール作りの作業が進められた。

 これには多くの時間と手間がかかったが、2008年6月の理事会で、原則自由化を中心とする基本ポリシーが決定された。

 こうした動きに呼応するように、7月末には日本のドメイン名のレジストラー最大手、GMOインターネットが子会社としてGMOドメインレジストリを設立し、分野別の新gTLD関連ビジネスへの進出を発表するなど、ドメイン名ビジネスへの注目は高まっている。

 

迫るv4アドレス在庫の枯渇、難航するv6との対応と共存

 

 インターネットが作り出す「空間」が、いま大きく拡大しようとしている。

 インターネット上の住所・番地を構成するドメイン名と、IPアドレスの仕組みが広がろうとしているからだ。

 現在使われているIPアドレスの基本的な形態「IPv4」は全体で43億個ほどあり、需要に応じて割り当てられてきた。

 しかし、インターネットが世界中で爆発的に普及した結果、おそらく2011年から13年にかけてすべての在庫がなくなり、ユーザーは新規のアドレスを受け取ることが出来なくなると予測されている。

 いわゆるIPv4アドレスの「枯渇」問題である。もっとも、枯渇するのはv4アドレスの「在庫」であって、現在使用中のv4アドレスが使えなくなる訳ではない。

 つまり、インターネット上で新規サービスを始めようとして、そのためのアドレスを申請すると、「v4アドレスの在庫はなくなりました。必要ならIPv6をお使いください」となる。

 次のバージョンとして「IPv6」が用意され、こちらは全体で約340「澗」(340兆の1兆倍の1兆倍)個と、天文学的な数があり、今の人類の子孫の代まで不足しないと言われる。

 

 皆んながIPv6を使うようになれば、アドレス空間は一挙に拡大し、インターネットはますます発展する。その筈だった。

 しかし、現実はそう簡単ではない。現実的な対応は、「デュアル(二重化)とか、プロトコル変換(翻訳)など」つまり、v4もv6もどちらも同様に対応できるようにすることだ。

 しかし、それは設備やソフトの更新が必要となり、運用コストが最大で2倍かかることを意味する。

 IPv4からIPv6にスムーズに「移行」できれば、何も問題はない。

 但し、そのためには一般利用者が知らない内に、インターネットを支えているルーターやサーバー、その上で走る各種のプロトコルやアプリケーション、利用者側のパソコンの基本ソフト(OS)や、各種のアプリケーション・ソフトなどが、すべてIPv6対応のものになる必要がある。

 v4とv6の間には通信の基本部分の互換性がなく、IPv4で構成されているネットワークと、IPv6で構成されているネットワークとの間は、そのままでは通信できない。

 大雑把に言えば、別種のネットワークが2つ併存することになる。

 従って、v4からv6の、あるいはv6からv4のネットワークに繋ぐときには、何らかの工夫が必要となる。

 

 IPv6は当時期待されたペースでは普及しなかった。

 日本のISP(インターネット接続事業者)は、数年前からv6での接続サービスを開始したが、実務的な利用はほとんどない。

 理由を単純にいえば、v6を使う明確なメリットがないからだ。

 以前は、v4では不可能なことが、v6なら実現できるとされ、例としてセキュリティーの向上やモバイル通信の充実などがよく挙げられた。

 しかし、v4の利用技術の発展により、v6で出来るようになる筈だったことの大半はv4でも出来るようになった。

 IT業界の中にさえ「v4アドレスは実際には不足しない」、「売買すれば解決される」「v4延命技術で当分問題ない」といった「本音」が根強い。

 米国では、政府のネットは調達規則により、今年6月までにすべてv6対応にすると決められていたが、実際には守られていない。

 

 日本でも2006年に決めた「IT新改革戦略」で、電子政府など政府省庁のシステムは原則として、2008年度中に対応を図るとの目標が設定されたが、このほど発表された総務省の資料によれば、お膝もとの総務省が「検討を進めている」、金融庁も警察庁も農水省も国土交通省も防衛省も、いずれも「検討中」とか「検討を開始した」という状況で、導入が完了したところは何処もないようだ。

 IPv6では、利便性の向上を図って利用者側(ユーザー側の端末)が、複数のアドレスを使い分ける「マルチプレフィックス」が基本仕様となっている。

 NTT東西が2008年3月に提供を開始したNGN(Next Generation Network、次世代ネットワーク)の利用者が、ISPが提供するIPv6によるインターネット接続サービスを利用すると、円滑に通信できなくなるという、所謂「IPv6マルチプレフィックス問題」が発生して、状況によっては通信に支障が出る可能性があるという。

 NGNの基本想定は、あくまで自社のネットワークの利用者同士の通信・接続の提供であって、その「外側」の、グローバルなインターネットに接続された他のネットワークとの接続は「オプション」でしかない、という。

 

 NTT東西がすでに数年前から提供している「Bフレッツ」のIPv6版と、NTTコミュニケーションズがISPとして提供しているOCNのIPv6サービスとの間でも、ほぼ同様の問題が起きていた。利用者と現在のISP、ISPとアクセス事業者(NTT東西)との間で、混乱なくサービスが実現するためには、実際の準備を開始する前に、ISPとNTT東西との間で上記のマルチプレフィックス問題を解決する技術・運用の方式を決める必要があった。

 これまで、インターネットは民間の自由な創意に支えられ、政府の規制は最小限にすることで、急速に発達してきた。

 しかし、日本人の大半が利用するサービスへと発展し、社会的な依存度と影響力が極めて大きくなった今、インターネットの様々な機能やサービスを展開していくためには、ただ自由な市場に任せるだけでは上手く行かなくなってきたと考えられる。