ロンドンのボマーコマンドメモリアル | AIRPLANE NUT

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ブログタイトルは「ヒコーキきちがい」という意味です。航空ショーや航空博物館を見に行くのが趣味です。

ロンドン地下鉄、ハイドパーク駅から地上に出る通路にはワーテルローの戦いを描いたアートが描かれています。それはこの近辺にワーテルローでナポレオンを破ったウェリントン公の居館だったアスプリー・ハウスがあるためらしく、ほかにもウェリントンの騎乗像やウェリントン・アーチと呼ばれる凱旋門などもあります。

 

このウェリントンゆかりの地からほど近い、グリーン・パークの片隅にRAFのボマーコマンドで戦った飛行士や隊員たちを称えるボマーコマンドメモリアルが建てられています。

このメモリアルの主役はRAFの爆撃機クルーの立像です。この細部までよく描写された像は決して勇ましい感じではなく、過酷な任務を終えて無事帰還できた安堵感のようなものを私は感じました。

 

この立像を覆う屋根の内側には格子状のデザインが施されていますが、これは第2次世界大戦で英空軍が使用した爆撃機、ビッカース・ウェリントン爆撃機に用いられたジオデティック・ストラクチュア(我が国では大圏構造と訳されています。)を模したものということです。この構造は以前ご紹介したダム攻撃用の反跳爆弾を発案したバーンズ・ウォーリス技師が考案したもので、軽量で頑丈な構造、被弾にも強かったそうですが、きっと生産ラインは大変だったことでしょう。

ウェリントン爆撃機は英空軍で第2次世界大戦を通じて使用された中型爆撃機です。このヒコーキは戦争初期に昼間爆撃で大きな損害を受けたことから夜間爆撃に方針転換、その後はランカスターなどの四発重爆の主役を奪われて地味な任務で余生を過ごした印象を私は持っているのですが、こうして記念碑的な建物の構造として用いられるということは、英国人はこのヒコーキに我々が抱く以上に愛着を持っているのかもしれません。だからこそ同じ名前の英雄、ウェリントン公ゆかりの地の近くにこのメモリアルが建てられたのでしょう。

 

ウェリントン公(Duke of Wellington)というのは称号のようなもので、その本名はアーサー・ウェルズリーといいます。ウェリントン爆撃機のまえにビッカース社が開発したジオデティック・ストラクチュアをもつ爆撃機の名前はウェルズリーといいます。それだけ英国人たちがこれらの爆撃機に期待をかけていたのか、あるいは単なる言葉遊びなのでしょうか?