パストラーレシンフォニックバンド

第13回定期演奏会

曲目紹介

 

■吹奏楽のための第二組曲/グスターヴ・ホルスト

組曲「惑星」などで知られるイギリスの作曲家ホルストにより1911年に作曲された作品です。

この曲はイギリス民謡の主題を用いた4つの楽章による組曲で、早く活気のある第一楽章《行進曲》ではグローリー・シアズ、青い目の異邦人、スワンシー・タウン、クラウディ・バンクスの4曲が使われています。続く第二楽章《無言歌》はコーンウォールの民謡である「恋人を愛する」の主題が悲しげに美しく歌われています。第三楽章《鍛冶屋の歌》はハンプシャーの民謡で、打楽器を含む全合奏により鉱床の響きが表現されており、第四楽章《ダーガソンの幻想曲》では16世紀に流行した舞曲の形式であるダーガソンの中に有名なイングランド民謡のグリーンスリーブスの旋律が重なっています。民謡素材がふんだんに使われた明るく親しみやすい名曲です。

 

■トロンボーン協奏曲/マルセル・ケンツビッチ

作曲者であるマルセル・ケンツビッチ本人に、曲の解説をしていただきました。

 

「この協奏曲は2012年7月12日に、トロンボーン奏者の箱山芳樹氏と東京音楽大学「シンフォニック ウインド アンサンブル」によって初演された。箱山氏のハイトーンが素晴らしかったので、ハイトーンを多く使った。ラヴェルの「ボレロ」のハイDesが何回も出てくるスリリングな曲だ。また、トロンボーンが持っている柔らかさや、ひょうきんさも描いた。この難曲を小田桐寛之さんがどう調理してくれるか、とても楽しみである。(津堅直弘)」

 

■2024年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲より「メルヘン」/酒井格

「メルヘン」は2024度吹奏楽コンクールの課題曲として作曲されました。作曲者は「The Seventh Night of July(たなばた)」や「森の贈り物」など、数多くの人気作品を世に送り出してきた酒井格です。

「メルヘン」は童話・おとぎ話を意味するドイツ語ですが、冒頭は快活で吹奏楽らしいサウンドから始まり、テンポや曲調が目まぐるしく変わる、まさに物語の場面転換を想像させるような曲です。

しかし、酒井格本人によるとこの作品に特定のストーリーがある訳ではないそうです。つまり、ストーリーの想像は演奏者次第ということ。本日は、パストラーレがどのような「メルヘン」を創り出すのか、是非楽しみにお聴きください。

 

■吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」よりⅠ.Ⅱ.Ⅳ/高昌帥

吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」は4楽章構成となっていますが、本日はⅠ、Ⅱ、Ⅳ楽章からの抜粋版でお送りします。トランペットによるハ長調のハーモニーから劇的に始まるⅠ楽章に続き、6/8拍子の激しく流れるリズムが印象的なⅡ楽章、木管楽器による温かなメロディーから始まるⅣ楽章へと続きます。突如テンポの速い主部が奏でられ、不穏な雰囲気と共に後半へ、金管楽器と木管楽器の対照的なフレーズが交互に演奏されながらクライマックスへ向かいます。トランペットの輝かしいフレーズと共に全体が盛り上がりながら、輝かしい雰囲気で曲は閉じられます。

 

■宇宙の音楽/フィリップ・スパーク

宇宙の音楽は、英国の金管バンドであるヨークシャー・ビルディング・ソサエティー・バンドの委嘱で、イギリスのフィリップ・スパークにより作曲され、2004年の5月に欧州ブラスバンドコンペティションにて初演されました。題名の「宇宙の音楽」は、古代ギリシャの哲学者/数学者ピタゴラス(三平方の定理を発見したことで有名ですね)の研究に由来します。宇宙は音階と同じ理論によって支配されており、太陽と6つの惑星(天王星と海王星は近代まで発見されていませんでした)の距離がその音階に対応しているというものです。第5楽章「宇宙の音楽」と第6楽章「ハルモニア」では、惑星を象徴する6つの音がテーマとなり何度も奏でられます。1940年代になってロシアの物理学者ガモフが、宇宙は熱い火の玉から始まったとする「ビッグバン理論」を支持しました。そのビッグバンの前には何が?という問いに対しては、1981年に東京大学の物理学者佐藤勝彦教授が「インフレーション理論」にて宇宙は無から生まれたとしており、それが現代の宇宙論の前提となっています。宇宙の音楽は、「T=0」、「ビッグバン」、「孤独な惑星」、「小惑星と流星群」、「宇宙の音楽」、「ハルモニア」、「未知」の7楽章から成ります。

…何か気づきませんか?この曲は、最新の理論のベースである無=0をモチーフにした楽章に始まり、古代ギリシャの天文学のテーマへと時間を遡っていきます。その先にあるのは「未知」。現代の物理学でも解明できない宇宙の真理です。かのアインシュタインが発表した相対性理論に基づくと、物体が光速に近づくと相対的に時間の進みが遅くなって未来へのタイムスリップが可能と言われていますが、過去へのタイムスリップを可能とする理論はまだ発見されていません。スパークの音楽で現代理論物理学を超え、天文学の歴史を遡りましょう!