焼肉ほどPJさんのお人柄がわかる食事はないと思います。
百合子さんは黄色いDPRK系の看板の店をひいきにしていて、ここではタン元という、舌の根?の部分が安いのです。
上タンを頼んでもいいのに、彼女は必ずタン元を頼む。
そして焼き方がおもしろくて、片側だけ焼いて、肉の表面が百合子さんの芯のようにピンク色になって汁が浮いたくらいになると、はいどうぞと言ってくれる。
そのまま食べてもいいし、あとの火加減はお好みでどうぞ、というわけです。
マヨエールはこれを百合子焼きと呼んでいるのですが、これは非常にいい。好きな火加減で焼くことができるし、PJに焼いてもらったという満足感もあるし、実にいい具合なのです。
百合子さんといつも頼むのは甲類焼酎です。
粉茶で割ったり、炭酸で割ったりする。東海はホッピー文化圏ではないので、割り材はシンプルなものが多いです。
すこしぎこちない手つきで飲み物を作ってくれる百合子さんの横顔、表面がテカって、かすかにニキビのあとがある肌をみていると、まだ娘なんだなあと感じます。
大学にいっていたら、社会人3年目。けれど百合子さんは工場で7年も働いている。
ハツを頼みます。今日は珍しい。
新鮮なハツは、臭みもなくて、いくらでも食べられます。これも百合子焼きにしてくれる。
バイスという割り材を試してみたいという百合子さん。東京の下町に多い、梅味の炭酸ですね。
百合子さんの住む工業都市には、甲類焼酎の有名なメーカーがあります。東京の下町ではこの焼酎が有名で、ホッピーはこの焼酎でないとダメという人もいる。
百合子さんくらいの年齢の女性は、バーに憧れたりすることが多いですが、彼女はそれよりも割り材のほうに興味があるようです。
指先はたしかにささくれていて、30をすぎた女の手をしています。都会の女のあの磨かれた手ではない。けれどこの手でマヨエールをつかんで寝るのが彼女は好きで、マヨエールもかなりその時間が好き。酸化した皮脂のにおいが、彼女の場合は嫌ではない。酸化した皮脂のにおいの中から、最後に、余韻よりもより後に、若い娘の甘いにおいがする。この遷移は非常に官能的で、あと15年くらいしたら、えもいわれぬランシオ香がすることでしょう。
だいぶ仲良くなったね百合ちゃん、というと、本当にそうだと明るく笑います。
国道沿いの旅荘で体を重ね合う関係だったのが、DPRK系の焼肉屋でもうもうと煙をあげながら甲類焼酎を飲む仲になった。まったく男女の関係というものはどうなるかわからない。
百合子さんのおかげでだいぶ東海地方に詳しくなってしまった。
名古屋の女子大(SSK)全制覇するのも楽しいのかもしれないし、でもたぶんA5和牛みたいに柔らかくうまいだけで、後には胸焼けしか残らないかも。
目の前で肉を焼いてくれる百合子さんをみると、そういう遊びよりも、彼女と過ごしたほうがずっと楽しいし、何よりも、彼女に何かしてあげたいと思えるのです。
おわり