今年は、没後100年ということで、プッチーニの上演が多いのです。

ちょっと先ですが、かぶりつきの席をとりました。もちろんズッ友の女流作家さんと行くに決まってます。

 

大人(そっちではない)は残酷です。まだ、変な思想が強くなくて、汚い町中華でチャーハンを頼んだら、スープがついてくるのに感動した頃の彼女とは、よく学生料金でオペラ見物にいきました。(芝居は学生料金なんでないんだろ)

1000円とか、2000円とか、破格の料金でした。

 

そしてJDは無料でした。連れ込み旅館代はかかりましたが。

我が青春の鶯谷万上旅館は、人を選ぶ(アングラ演劇とかサブカル系が好きな女の子は喜んでくれました)ので、がんばって「エーゲ海」とかにいったものでした。当時の「エーゲ海」は、サービスタイム料金で最大24時間入れるという破格のプランがあって、非常によかった。

 

もちろんこんなこと彼女に言えません。

「あの頃は、JDが無料だった」

なんて言おうものなら、殴られて自己批判じゃ、すまないだろうなあ。

 

「なんですって? 無料? 今は有料なの? 何をしているか包み隠さず言ってごらんなさい?」

「ち、違うよぉ、君みたいに才能ある学生が、時給1100円で皿洗いしてる、こんなの馬鹿げてるじゃない。Wasting timeだよ! だから、本くらい好きに買えるようにって・・・・・・」

そうこたえようものなら、彼女の目は完全にキマって、異端審問官のようにマヨエールを問い詰めるにきまっています。そして、STEP0に逆戻り。

 

彼女はプロットを練りません。推敲もあまりしません。思うままに物語を紡ぐことのできる才能があるのです。

そんな彼女を崩すには、精緻な計画を練るよりも、今のマヨエールをそのままぶつけて

「ずっと君と万上旅館に行きたかった」

最後のSTEPでこう言うしかないのではないでしょうか。

 

とりあえず、STEP5は、かぶりつき席です。

それまでに殴られるようなことをしない、という自らへの戒めでもあります。

 

プッチーニではないけれど、彼女はマヨエールのLa traviata (道を踏み外した魅力的なオンナ)です。

カバリエが歌った1967年のRCA盤、彼女が大好きなことも、よーく知っています。もう300回くらい万上旅館にいっていても、おかしくないのに(もう万上旅館はないけど)。お互いのこと、たくさん知っているのです。

 

さあて、このチャレンジどうなることやら。

 

もし、彼女との物語、著者校正で魔改造できるなら、20年前に万上旅館に彼女の手をひいていったエピソードを追加することでしょう。

けれど西の先生が仰るように、清い関係のほうが長く続くのかもしれません。あのとき、万上旅館にいっていたら、彼女は「マヨさま いかがお過ごしですか 兎角悪疫流行りたる昨今 どうぞご自愛くださいまし」なんていう暑中見舞いの葉書をよこさなかったかも。言葉遣いが、マヨエールの心にきぬ針のように刺さるんだよね、彼女。

 

見るべきほどのものをば既に見つ 今はただ君を崩さん なんて心境のマヨエールでございます。