彼女は、欧米圏から留学してきた学生であった。透き通った肌に、ブロンドの肩までおろした髪、目は青というよりは蜂蜜色。

 

お互いどういう人生を歩んできたのか、幾度も話した。お互いのふるさとのこと、家族のこと、子供時代のこと、そんなことを話したあとで、男と女がすることといえば、相場が決まっている。

 

彼女の心の奥に、モラルに反する性的な体験への強い興味を感じ取った私は、郊外のコテージを借りて、たっぷりと時間をかけて、彼女の望みをかなえてやることに決めた。

 

ログハウス調のコテージの部屋の中で、彼女はこれからおこることに興奮しているのか、皮のような、獣のようなにおいを発していた。まだ香水を知らないのだろう。

しかし、その本心の中にあるものを秘めたまま、一人快感に酔いしれるのは、誤っている。正しい教育が必要だ。二匹で背徳感に酔いしれる楽しみを、教えてやらねば。

 

私は彼女の前にたって、堂々とラテン語で言い放った。

「Hodie peccator eris. Noli assumere, nihil novi de populo tuo.」

(今日、お前は咎人となる。そして私がお前の民について何も知らないなどと思うな。)

彼女の紅潮していた肌は、一気に青ざめた。なぜ、この東洋の猿が・・ と顔に出ている。

 

「お前の民の言葉、奴婢の言葉などを話せるわけがなかろう。」

「ニホンゴ、スコシ、ワカル、ワカリマス。アナタタチノブンカノコトモ。」

彼女は、奴婢の言葉ではなく、日本語で反論を試みた。

「この国に来てもうだいぶたつというのに、その程度の言葉しか話せないか。お前の民は、世界中どこでも奴婢の言葉が通じると思っている。実に傲慢だな。約束の地は、お前の民のものと、信じ切っている。」

「Miserere nobis」

(私達を憐れみたまえ)

彼女は、奴婢の言葉ではない言葉で、これから起こることについて、許しを乞う祈りを手短に捧げ、自ら服のボタンを外し始めた。

 

続く