私は登楼ができない。日々のゲスい活動からすると、余裕で出来そうなのに。

 

昔から、この自身の弱点を克服しようといろいろ努力しているのだが、どうもうまくいかない。

少し前に、ある日本海側の地方都市のちょんの間街を訪れた。

「小料理屋」であるが、実態はそうではなく、ちょっと飲み食いもできるし二階で致すこともできるのだと、ゲス仲間に教わったのであった。

 

「パール」とか「オーシャン」のような横文字ではなく、古風な屋号の店に入った。

母親より少し若いくらいの化粧の濃い女性が、いらっしゃい、と迎え入れてくれて、飲み物を頼んだ。

瓶ビールと具がいっぱいの豆のごった煮。(豆のほかに、人参、こんにゃく、蓮根、鶏肉が入っていた。)

煮豆は、ちゃんと作ると、案外時間がかかるので、出来合いのものではないこの煮豆をつくるこのおかあさんとなら、できるのではないかと思った。

 

「遊んでいく?」

「はい。」

おかあさんは、店の看板の照明を消して、こちらへ、と二階に案内した。昔の、いい木を使った階段だ。

汗臭い布団の上で、手慣れた様子でサックをつけてくれ、それからあれこれと刺激され、そして中へ。

おかあさんの技巧は、なかなかのものだった。こちらにあわせて、いいところをついてくる。

からだも、ネコのようにしなやかであった。

しかし、どうもダメなのだ。肉体よりも、気分がのらない。

30分後、おかあさんは、洋食屋に電話をかけて出前をとってくれた。

 

そして、おかあさんと二階の薄暗い部屋でグラタンを食べた。おかあさんのような艶やかなグラタン。

「客をいかせられなかったことなんて、そうはないのに、どうしたのかしらねえ・・・」

「すみません、気持ちよかったんですが、ちょっと疲れていたみたいで。」

グラタンは、おかあさんのおごり。

 

ここまで条件が揃っていてもダメなら、千束4丁目に登楼しても、多分だめだろうな・・・