ああ、もう一回みるかなあ

マヨエールは木挽町にいました。もう辨松はない。

 

日本橋のとちがって、木挽町の辨松って、どうもお菜が安っぽいんです。名古屋の松浦商店の駅弁みたいなかんじ。

そうなんです、日本橋の弁松は、八百彦なんだよな。

こういう東海マニアックスな話はこれまでにして、少し前までここにあった弁当屋のものは、ワンカップと相性もよくて、観劇にはぴったりなのでした。

 

築地方面にちょっと歩くと、いわて銀河プラザという物産館があります。入ったのは初めてではないと思いますが、改めて入ります。ワンカップもある。それもあさ開のようなド定番ではなくて、釜石の浜千鳥なんか置いてあります。おお、ゆで太郎で小柱のかき揚げテイクアウトして、ワンカップで一杯やっか? そう思いました。

 

そして酒コーナーから調味料コーナーに移って、マヨエールは立ち尽くしてしまったのでした。

ええっ!!!!! 富士しょうゆがある! 

黒い汁で満たされたペットボトルに、黄色と赤のラベルがはってあります。これは三陸ではけっこうメジャーなしょうゆなんですね。混合しょうゆといわれるものです。(アミノ酸液をまぜたもの)

 

それは、10代末期から今まで、動物的に肌をあわせてきている三陸出身の女が大好きなしょうゆなのですね。

今では婦長になって、パワハラしまくっているであろうこの女、おそらく20代の若い女性にとっては、最低最悪の上司であろうこの女は、それでも、マヨエールにとっては、病気のときにあれこれ世話をしてくれたいい女なのです。

 

サメとかホヤに、この甘い富士しょうゆをかける。不思議とうまい。

この女が教えてくれた食べ方を、マヨエールはいまだにおぼえていて、養殖のカンパチなんかを食べるときには、このしょうゆを使うことがあります。

九州の人と似たような使い方かもしれません。

 

でもこの女との関係はずっとよかったわけでもない。憎しみ合っていた時代もありました。

そんなときでも、どこぞのホテルで無言のまま、着衣のまま貪りあうようなことをする。若い頃からの惰性なのかもしれないし、もっといろいろなものが蓄積しているのでしょうが、お互いいまさら何もいいません。結局、体の相性だけはいいのですね。

 

富士しょうゆをみて、マヨエールはああ、黒ずんだマグロにこれをぶっかけて食いてえなあと思いました。

でも、インバウンドが5000円の牛串を競って注文してるような今の築地場外に、黒ずんだマグロはないでしょう。

三越の地下にだってないよね。

あの女のヒダのことを思います。

どの東京の女よりも、あの女のヒダはすごかった。本当にマヨエールは夢中になりました。

お互い若かったのもあって、彼女は寮から抜け出して新幹線で東京にきては、ずっと新宿のヤング・インでつながっていました。

 

この女と生きる道もありました。ご家族とはいまだにつきあいがあります。

けれど、マヨエールが海外にいくようなことがあって、ちょっと疎遠になったのが運のつきでした。

 

いまさら、こんなことを考えても仕方ありませんが、この女と暮らしていたら、レスになることはなかったでしょう。

そして、闇の活動にここまで夢中になることはなかったかも。

プロPJに弄ばれて、やっぱり活動ってのはそっけないものだなあ、という感想で終わっていたかもしれません。

 

舞踊劇、というジャンルがあります。

マヨエールはいままで、そんなに好きではなかった。

でもね、役者の細い足、アキレス腱が浮いたところをみるとね、いろいろ思う不惑になってしまいました。

 

不惑というわりには、マヨいすぎている。

前に、放ったことについて女は不満をいう。

マヨエールはいう。抜けなかった。

なんと馬鹿げたことをいっているのでしょう。

 

長くなりましたが、物産館のしょうゆごときで、ここまであれこれ考えてしまうマヨエールは、不惑の嵐の中にいるようです。

 

 

おわり