青森県の分収林対策 | 公会計の動向

青森県の分収林対策

 河北新報サイトが11月20日に掲出した「青い森公社破綻 公益重視収益にも配慮を 検討委 」は、青森県出資の青い森農林振興公社が経営破綻した問題で、同県の有識者でつくる県民環境林経営検討委員会が19日、県への事業移管後の森林経営に関する提言書をまとめたと報じる。森林の公益的機能を重視しつつ、命名権(ネーミングライツ)の導入など収益性への配慮を求めたと記事は伝える。公益的機能では「長伐期施業」の導入が柱となっており、森林が地球温暖化防止や防災の役割を十分発揮できるよう、契約者との契約期間を現状の2倍程度の80~90年に延長するべきだとしたとの由。間伐を施して資源を維持し、針葉樹と広葉樹の混交林化を進める必要性を説いているとのこと。収益向上策としては、環境省のオフセット・クレジット制度(J-VER)への参加を盛り込んでおり、間伐で森林が吸収した二酸化炭素量を、販売可能なクレジットとして発行する制度を活用し、命名権などから得た対価を含め、森林整備資金に充てるとしているとか。公社が抱える負債約367億円については、第三セクター等改革推進債の活用による利子負担の圧縮や、契約者との分収割合の見直しの推進を挙げているとも。県への事業移管は来年4月であり、公社が分収造林事業で経営してきた森林約1万ヘクタールを「県民環境林」として引き継ぐが、杉が8割を占め、平均林齢は28年で多くは育成段階にあるとのこと。


公表資料:「県民環境林経営検討委員会」からの報告について [林政課]


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 iJAMP配信が24年12月25日に配信した「債権227億円放棄、林業公社を解散へ=青森県」は、青森県が、県が半額、残りを県内市町村や農業関係団体が出資している社団法人「青い森農林振興公社」を、民事再生手続きにより来年4月上旬ころに解散すると報じる。同公社は主に分収造林事業を営んできたが、今年6月の資産評価の結果、350億円超の債務超過に陥っていることが判明し、収支改善の見通しが立たないと判断したとの由。公社の県からの借入金235億円については、森林資産による代物弁済などの残額227億円を債権放棄し、公社は日本政策金融公庫からこれまでに132億円を借り入れ、県が損失補償をしていることから、裁判所による来年の再生計画認可後、第三セクター等改革推進債(三セク債)を発行して一括返済するとのこと。先の定例議会で関連議案が可決されており、解散により分収林と造林事業は県が引き継ぎ、公社職員のうち県から派遣の2人は県に戻り、プロパー3人は退職とか。償還に特別交付税措置を伴う三セク債の活用により、支払利息は43億円圧縮できると試算しているとのこと。同公社の前身は昭和45年に設立され、これに先立つ33年、分収造林特別措置法が制定され、国は戦後復興や経済発展による木材需要拡大を見込んで、ブナなどの広葉樹を成長の早いスギなど針葉樹に植え替える「拡大造林政策」を打ち出しており、各都道府県はこれにのっとり、森林所有者に代わって林業公社が資金と労力を調達して50年程度かけて造林に取り組み、木材販売後の収益を分け合うスキームの分収造林事業を展開された経緯がある。しかし、以降の労賃の上昇、外国産材輸入拡大に伴う国産材価格の低迷により、現状ではほぼ例外なく経営危機に陥り、法的整理に踏み切るケースも出ている状況で、青森県では平成15年に新規造林を中止しており、給与カットなど公社リストラにも取り組む傍ら、国策事業と位置付けられてきたことから国に支援策を要望してきたとのこと。しかし、国と関係県による林業公社経営対策等検討会は21年、「引き続き、連携して取り組むこととする」などとする報告書を発表し、一方で、(1)国の公益法人制度改革に伴い、従来の公益法人は13年11月30日までに公益社団、財団法人または一般社団、財団法人に移行申請しなければ解散となる、(2)改正地方財政法による三セク債の発行期限が21年度から25年度までとなっている、ことを踏まえ、今回、県民負担のこれ以上の拡大を防ぐため解散を決断したとの由。事業の県移管後は、所有者との契約期間を長期化し、自然植生を誘導しながら複層林化・針広混交林化を進めて水源涵養や環境面、防災面などでの森林の公益的機能の増進を図り、また、利用間伐の推進や森林管理・整備への民間公募型プロポーザル方式を導入して収益性もアップさせる方針と記事は伝える。