自ら財務会計上の違法行為を行ったと同じ程度の指揮監督義務の違反ないし怠りがある場合 | 公会計の動向

自ら財務会計上の違法行為を行ったと同じ程度の指揮監督義務の違反ないし怠りがある場合

 朝日が1月27日に掲出した「佐賀コピー費訴訟 前知事への賠償命令取り消す逆転判決 」は、佐賀県がコピー費を水増し支出して約6億4千万円の裏金をつくり県に損害を与えたとして「市民オンブズマン連絡会議・佐賀」のメンバーら74人が井本勇前知事を相手取った住民訴訟の差し戻し後の控訴審判決が27日、福岡高裁であり、裁判長は「前知事には(水増しの)公金支出について具体的な認識はなく、指揮監督義務の違反は認められない」として、前知事に約4400万円を県に賠償するよう命じた直前の佐賀地裁判決を取り消し、住民側の請求を棄却したと報じる。裁判では、(1)水増し支出の違法性、(2)前知事の責任、(3)県の損害、が争われており、組織的な不正支出への首長の責任をめぐる判断が注目されていたとのこと。佐賀県のコピー費支出については10年、県の調査で5~9年度の計約6億4千万円の水増しが判明しており、オンブズマン側は10~11年、当時の井本知事に不正支出の県への賠償を求めて提訴していた。当初の1、2審は住民側の訴えを退けたが、最高裁、続いて福岡高裁が審理を差し戻し、佐賀地裁は21年1月、「前知事は違法なコピー機使用料の支出を阻止すべき指揮監督上の義務に反した」と判断し、約4400万円の賠償を前知事に命じ、県については前知事に賠償請求しないことが違法と認めたとの由。損害額については、前知事がコピー費の水増しが行われていることを予見できるようになった9年2月以降の約8855万円と認定し、このうち5割は業者からの返還などで穴埋めされたとみて、残りについて賠償を命じたとのこと。前知事と県側、住民側の双方が控訴しており、前知事側は「不正支出の認識はなく、不正を把握することは不可能だった」と主張し、住民側は「公共事業が多い部署ほど予算が余る構造を前知事は熟知していた」と指摘していたとのこと。


 朝日が同日に掲出した「佐賀県コピー費訴訟 福岡高裁判決理由の要旨 」によると、井本勇前知事の責任についての判示は次のとおり。

-----<引用開始>-----
 前知事がコピー費の水増し支出(以下、本件支出)について損害賠償責任を負うのは、支出を認識していたとか、具体的に認識できたにもかかわらず漫然と放置していたなど、自ら財務会計上の違法行為を行ったと同じ程度の指揮監督義務の違反ないし怠りがある場合に限られる

 本件支出は県庁において慣行的に行われていた、いわゆるゼロ精算を目的とするものであり、昭和の終わりごろから全庁的に行われてきた。前知事は県庁勤務が長く、ゼロ精算の慣行も認識していたことは認められるが、コピー機使用料の最終決裁権者は各課の課長であり、課長職を超える役職の職員までを加えた組織的なものとは認められない。前知事は長期にわたる県庁勤務で、(コピー機を含む)需用費を扱う仕事や管理に携わったことはない。1998年に県の調査で明らかになるまで、県内部の指摘や社会的批判はなく、本件支出を認識していたと認めることはできない。

 前知事が、マスコミ報道や国の通達で食糧費や旅費の不正支出を認識し得た可能性があることは否定できない。しかし、食糧費とコピー費は支出方法が異なり、食糧費などの不正を認識し得たとしても、そこから本件支出について認識し得たとまではいえない。

 前知事には本件支出について、抽象的な認識可能性しか認められないから、本件支出を阻止しなかったとしても、自ら財務会計上の非違行為を行ったと同じ程度の指揮監督義務の違反ないし怠りがあったとは認められない。

-----<引用終了>-----
 首肯できる判決だ。