アクアライン値下げ実験 | 公会計の動向

アクアライン値下げ実験

 日経が5月22日に掲出した「アクアライン値下げ、8月から実施へ 千葉県が社会実験 」は、千葉県の森田健作知事が22日、金子一義国土交通相を訪ね、東京湾アクアラインの普通車通行料を800円に引き下げる社会実験を8月に始めると明らかにしたと報じる。期間は2011年3月末までで、金子国交相は「首都圏の物流体系を変える取り組みになる」と評価し、国も財源面などで協力する考えを示したとか。値下げは自動料金収受システム(ETC)を搭載した全車種を対象に、毎日行うもので、普通車以外の通行料は、軽自動車が640円、中型車が960円、大型車が1320円、特大車が2200円とし、いずれも現行のETC搭載車の平日昼間料金より6割安くなるとのこと。県は7月上旬に国、運送業者団体、東日本高速道路(NEXCO東日本)の担当者や学識経験者らによる協議会を設けるとか。21年度の総費用は20億円で、県と国交省が半分ずつ負担し、NEXCO東日本への減収補てんや、実験の調査費に充てるとのこと。


 東京新聞が5月27日に掲出した「アクアライン値下げに10億円 千葉県、6月補正予算案 」〔共同〕は、千葉県が森田健作知事が公約に掲げた東京湾アクアラインの値下げにかかる費用10億円を盛り込んだ一般会計の6月補正予算案を27日に発表したと伝える。県によると、アクアラインの通行料金を自動料金収受システム(ETC)搭載車限定で普通車800円、大型車1320円に値下げするため、本年度だけで現行料金との差額補てんが約17億円、効果調査費に3億円それぞれかかると試算し、これを国と半分ずつ負担したい意向で、県として10億円を計上したとのこと。国土交通省有料道路課は「22日に要望を受けたばかりで、現在検討中」とか。森田知事は27日の記者会見で値下げの効果について「(神奈川や東京と)相互に行ったり来たりすることがお互いの経済力アップにつながる」と述べたが、負担について話し合うと「2年、3年たつ」として、緊急に実施するため周辺自治体に応分負担を求めない考えを示したとか。


 毎日jp千葉ページが5月28日に掲出した「東京湾アクアライン:800円化 期待の一方、疑問も 求められる説明責任 /千葉 」〔森有正、児玉賢二、倉田陶子、木村健二〕は、東京湾アクアライン通行料が、県の「社会実験」として引き下げられることになり、森田健作知事は「4年でやろうと思っていたものが1カ月半でできた」と手放しで喜んでいて、一部の自治体では経済活性化を期待する声も上がっているが、県の負担が単年度で10億円に上ること、恩恵が自動車利用者に限られることなど、疑問の声もあると伝える。森田知事は4月半ばの会見で値下げ実現を冷ややかにみる県民やマスコミに向けて、「熱意は分かるができない、とか、冗談じゃない。初めに宇宙へ行こうと思わなかったら今、宇宙ステーションできますか。初めは思うことが大事だ」と息巻いていたとか。森田知事は就任直後から「とにかく行動することが大切だ」と訴え、官邸で麻生太郎首相に直談判で値下げの必要性を訴え、八都県市首脳会議(首都圏サミット)で合意を取り付けるなど、矢継ぎ早に手を打ち、難色を示す国土交通省をよそに、5月中旬再び麻生首相に直訴したとのこと。うれしいのは、地元の木更津市で、水越勇雄市長は「観光客増加など南房総地域全体の振興につながるものとうれしく思う。産業利用拡大も期待できる」とコメントしており、木更津などの商工団体などでつくる「アクアライン800円実現化推進協議会」も、「我々の長年の活動が実を結び、大変喜ばしい。値下げにより通行台数も増え、経済活性化につながるだろう」と希望を寄せているが、期待とは裏腹に懸念も消えておらず、地元の商工業者の間には「東京や横浜に買い物客や観光客を吸い取られる」(地元商店主)という「ストロー現象」への不安があるとか。富津市金谷で観光施設を営む鈴木裕士さん(48)は「観光客増加が期待できる」と歓迎する半面「(金谷発着の)東京湾フェリーは料金競争で厳しくなるだろう。産業廃棄物の持ち込みや不法投棄が増えるのではという心配もある」と話しているとか。そもそも、値下げを実現する根拠とすべき経済効果の試算は、県が2年前、普通車を750円に値下げした場合、東京圏で200億円を見込むもののみで、「直接的経済効果が約405億円、間接的経済効果は数千億円」と森田知事は繰り返している、その数字は、民間調査機関のデータと記事は伝えるが、民間調査期間のデータは信用できないという前提があるのかは不明。県の担当者は「8月からの値下げで経済効果のデータを得たい」としており、まず政策ありきで、根拠が後からくっついてくるようだが、そこは「あくまで社会実験」と言えば済んでしまうと記事は伝えるが、表現にトゲを感じるのは気のせいか。ETC搭載普通車を対象とする東京湾アクアライン800円化が、2年弱の期間限定とはいえスムーズに実現した背景には、県費を投じる「社会実験」というマジックがあり、舞台裏では、国土交通省と県の激しい駆け引きがあったとか。国交省幹部は、森田健作知事が値下げへ向けて動き出したころを「知事が要望したから、はいそうですかと料金を下げるようでは、全国同じことになる。そんな空気が省全体にあった」と振り返っているとか。森田知事は当初、全額国費による値下げを主張しており、首相や与党の支援で「政治案件」として国交省にのませようとした節があるが、「首都圏発展のためにも何とか……」と4月10日に値下げ要望に訪れた森田知事を、金子一義国交相は「ただ下げてくれと言うのではだめ」と追い返しており、「知事の政治力だけで、無理が通るような世界ではない」(同幹部)とか。県は作戦を切り替え、5月22日に「県による社会実験」として単年度20億円を国と県で折半する案で提案し、省内の空気はガラリと変わったとか。「国策で、という要望からロジックを変えたな、という印象だった」と幹部は語っているとのこと。国交省にも「弱み」があり、アクアラインは、9年の開業当初から高い通行料が大型車に嫌われ、首都高や京葉道路など在来路線の負荷は減らず、千葉と折半なら、渡りに舟、という受け止め方が広がっているとのこと。森田知事も国交省もともにメンツを保つのが「社会実験」のミソと記事は評する。記事は、懐を痛めずに恩恵を享受するのが神奈川県で、松沢成文知事は27日の会見で、通行料引き下げについて、「神奈川県で費用を負担することは考えていない。私どもとしては活性化が進んでいない状況にない」と伝えているが、神奈川県にとって「恩恵」があるかは疑問。