退職手当債の問題点を伝えたつもりの報道 | 公会計の動向

退職手当債の問題点を伝えたつもりの報道

 朝日は11月14日に「団塊公務員の退職金は借金頼み 44道府県4200億円」〔野沢哲也〕を掲出。

 記事は、団塊の世代が定年退職期を迎え、退職金を支払いきれなくなった自治体が借金に頼り始めていると報じる。今年度は都道府県のうち44道府県が借金を計画しており、総額は4200億円を超えることが朝日新聞の集計でわかったとのこと。借金が事実上解禁された2年前と比べて2.5倍という急増ぶりで、退職金減額など身を削る動きは鈍く、安易に将来へツケを回す自治体の対応に批判も出ていると記事は評する。退職金のための借金は「退職手当債」といい、自治体が発行する地方債の一種で、もともとは定年前の早期退職を勧奨した公務員への退職金支払いに限って認められてきたが、職員の大量退職時代を迎えたため、総務省は地方財政法を改正し、18年度から定年退職者への支払いにも解禁した経緯がある。17年度の退職手当債発行は、都道府県では岡山県の30億円だけだったが、18年度に33道府県、1709億円へ急拡大し、19年度はさらに43道府県、3947億円に広がっており、20年度は44道府県が計4284億円を予算に計上しているとのこと。今年度の発行予定額が最も多いのは兵庫の395億円で、千葉の250億円、神奈川の226億円が続いており、兵庫県は退職金総額のほぼ半分を退職手当債でまかなう予定で、「阪神大震災の復興で発行した県債の返済負担が重いうえ、国と地方の三位一体改革で地方交付税を減らされたため、やむを得ない」(財政課)と説明しているとか。大阪府は、橋下徹知事が打ち出した「府債発行ゼロ」の原則を受けて今年度当初予算への計上を見送ったが、補正予算に185億円を盛り込んでいるとのこと。発行を予定していないのは東京都と鳥取、島根両県で、それぞれ「都税収入で賄える」(東京)、「退職者数が極端には増えていない」(鳥取)、「退職手当債発行に伴う返済は地方交付税で補填されず、なるべく避けたい」(島根)としているとか。総務省の統計では、都道府県職員の定年時退職金は平均で2700万~2800万円台となっていて、地方公務員は民間企業と比べて定年まで勤める人が多く、退職金の支払額を見通しやすいが、支払いに備えた積み立てなどは義務づけられていないとのこと。総務省は「退職手当債の発行は、今後10年間の人件費削減によって元利返済の財源を確保できる範囲で許可している」と説明しているが、退職金の減額は求めていないと記事は評する。22府県は退職手当債の返済期間を最長30年としており、将来金利が上昇すると途中の借り換えなどで利払い負担が増え、返済総額が人件費の削減分を上回る可能性もあると記事は締め括っている。引用しているコメントもスゴイ。土居丈朗・慶応大准教授(財政学)の話として「将来の世代は退職した公務員からは何の恩恵も受けないのに、税負担を迫られる。退職手当債は問題の多い借金だ。団塊世代の大量退職は以前から予測できたのに、備えてこなかった自治体や総務省の責任は大きい。民間企業のように、退職金の財源を毎年積み立てていく制度を早急に作る必要がある。」と伝えているが、民間企業は別に退職金の財源を毎年積み立てているのではなく、利益処分を少なめにしているだけなのだ。退職手当引当金計上の話を現金主義の公会計の話に持ち込むと混乱するだけなのに。常時赤字の自治体にもっと早く借金させて積み立てておいた方が良かったとでも言うのだろうか。