野良猫の夢 -3ページ目

真夜中のサングラス

真夜中にサングラスをしている人に出会った。
行くあてももう無かったから
半ば投げ遣りな気持ちで隣に座ってみた。









彼は殆ど何も話さなかった。
あたしはただ隣に座って同じ方角を眺めていた。







時折数台の車と人が通るだけの道。
街灯は少なく
お店もない薄暗い夜道。







あたしがなんでこんな所をうろついていたかっていうと
ボーッとお酒を呑んで
ボーッとしているうちに電車が終わり
ボーッと歩いてみた。
それだけ。








何故ボーッとお酒を呑んでいたかというと
それは人それぞれ色々あるように
あたしにも何かがあったからだ。




多分。









彼はタバコに火を点けた。
あたしはタバコが大嫌いなのだけど
何故だか心地よかった。








時折煙を吐く音がする。








不規則なリズムで。









それがあたしたちの数少ない会話だった。


でも
余計に言葉を交わすよりもずっと
通じあえたように感じた。







彼はしばらく私を隣に置いてタバコを吸い
サングラス越しに世界を眺めていた。




そうして空が白くなる少し前…
まだ星がちゃんと見える頃
ゆっくりと立ち上がって
振り替える事もなく去っていった。







あたしは背中を眺めながら
ぼんやりとそのまま座っていた。








車と人の通りが増してきて
朝が来てしまったので
あたしもそろそろと立ち上がる。
騒がしい。









10m程歩いて
立ち止まり振り返ってみた。










そこに見えたのは








あたしと彼。








真夜中にサングラスをして
どことなく眺める二人。










過去を置き去りにしてあたしは歩く。
後ろ髪引かれたり
次を期待したり
妄想に捕り憑かれて苦しくなったり
そういうのは厄介だ。



だからここで切り捨て。









素敵な夜をありがとう。
サヨウナラ…。

風を掴む

自転車に乗って惰性で進む。
周りに風はほとんどない。
色も沈んで曖昧で
影すら残らない。


前へゆくあたしが風を揺らす。


ハンドルの辺りに手のひらをかざすと
渦巻いている姿に触れる。


横へ大きく腕を伸ばせば
柔らかくまとわりついてはスルリと抜ける。
それが何とも心地いい。




何も考えたくない。
力がただ抜けてゆく。
真っさらなあたしだけになる。





すごく軽い。






誰が知るだろうか。

誰が。







誰もいない風の中
一瞬だけ瞳を塞ぐと
何かが解ける感じがした。







繰り返して
またすぐ戻って
そしてまた







目を見開いて現実へ還るよ。

君に会う奇跡

誰に会いたい?










何はなくとも誰に会いたい?












あの人に会いたい。










叶うけど
叶わぬ願い。









叶うか分からない願い。











叶わない願い…。











どれもが切なく苦しい。
イチバンなんてない。











だから私は淋しい。




あなたと同じように。










会いたい人に会いたい。


当たり前の事が出来ない。















無理をすれば二度と会えなくなるかもしれない。
明日は予測不可能だ。















だからこうして生きている。














記憶は残酷だ。
五感は罪。

つながるものは
もはやそれしかない。
つながるのも
自分の世界とだけ。














流れるほど美化され
現実は幻に変わる。














さぁ会えるのなら
会いに行って。









繕った言葉は交わさないで。