英国はロンドンの街が好きで過去には留学も計画していました。結果は断念しましたが・・。
2度の滞在。いずれも観光客として、人の賑わう綺麗な場所に訪れ、建造物などを鑑賞しました。
強い憧れも相変わらず持っています。霧の都と呼ばれるロンドンの曇り空と、どこか肚の中を見せない人の雰囲気。そして流行への拘り。
そんなロンドンの街を舞台にした映画がロードショウされていると知ると、ついつい出不精になった自分の膝が「映画館に行くよ」と笑い出すから・・原動力。
(例えが怖いΣ(・□・;))
・・やってくれたな!と思います。まさに新感覚ミステリーホラーだと思います。
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ここ数年間。映画雑誌や映画サイトもチェックしなくなった為、新規の俳優の名前も、最新の公開情報もかなり疎くなっております。
映画を語る者としては、以前のような熱度で書けないことに申し訳ない気持ちがありますが、読んで頂いている方のためにしっかり描こう。微力ながら、かつてのような洋画に賑わいを取り戻す為、貢献できたらイイなと思っております。
LAST NIGHTを直訳すると「昨晩」。昨日の夜。
私はLAST=「最後」が頭に浮かびますが、LAST NIGHTになると意味合いが変わるから・・もうちょっと真面目に英語の授業を受けておくんだったなぁと、受験生には反面教師。
『ラストナイト・イン・ソーホー』
監督🎬
【エドガー・ライト】
エロイーズ
【トーマシン・マッケンジー】
サンディ
【アニャ・テイラー=ジョイ】
ジョン
【マイケル・アジャオ】
ジャカスタ
【シノーヴ・カールセン】
祖母ペギー
【リタ・トゥシンハム】
管理人ミス・コリンズ
【ダイアナ・リグ】
謎の老人
【テレンス・スタンプ】
配給[パルコ=ユニバーサル]
本編[1:58]
映画が始まる前に、今作が遺作となった英国の大女優【ダイアナ・リグ】を追悼するメッセージが銀幕に映されます。
[1938ー2020]享年82歳。
彼女の名前を検索しますと、昨年老衰のため90歳で逝去された【ショーン・コネリー】時代の1969年『女王陛下の009』にてボンドが本気で恋に落ちた「ボンドガール」として出演された代表作がメインに記載されていました。20世紀の英国演劇界を盛り上げた女優。
本編の中でも、60年代にタイムリークしたロンドン市街の映画館で『007』が上映されています。
国民的女優の追悼として最も粋な計らいだと思います。ありがとうダイアナ・リグ。
では始めます。
広告に使われている上記写真からもラブストーリーを連想しました。
角刈りオールバッグのイケメンと若い金髪女性の2ショット写真。
「なんだか爽やかで、良さそうな雰囲気の映画だな」これが私の第一印象。
イングランドの田舎町。
自宅の部屋で一人、音楽をかけて踊っている少女に、玄関先から祖母の呼び声が響く。
少女には両親がおらず、育ての親的存在の祖母と一軒家で二人暮らし。
(母親は他界。父親の存在は不明。)
専門学校の合否を知らせる手紙です。
結果は合格。祖母と抱き合い喜ぶ。
冒頭。祖母のさり気無い一言が大変印象に残りました。
「いい報せが届いたよー」と孫を呼ぶのですが、開封前です。
手紙の封を開け、合格を知らせると「そうだと思ったよ」と祖母。
そんな予感がした。というニュアンスでしたが、後々考えると意味深。
のちの展開でどうやら母方の家系は霊的能力があると想像できます。
少女は部屋の鏡から亡き母の姿が現れるのに慣れている。幽霊なのか、死んだ当時の姿なのかは分かりませんが、見守っているにしたって、無表情なので決して気持ちのいい現れ方ではありません。
死んだ母親も、感覚が鋭い人間だったと紹介されますので、では母方の家系がそうなのかなと想像します。
祖母は普通のお婆ちゃんのように映りますが、セリフを起こすと沢山のキーワードを言っている最重要キャラ。冒頭とラストに登場し、中盤に電話越しで声の出演などがありますが、もう少し出番が欲しかったのが正直なところ。
ファッション業界に強い憧れを持っている【エロイーズ】は、念願だったロンドンの服飾学校ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション校(LCOF)の入学に心を躍らせます。
彼女は非常に強い拘りを持っていて、1960年代のヨーロッパ(特に英国)ファッションを着こなし、発信することに情熱を注ぎます。着ている服も自分がデザインし製作したものですから、手先も器用なのでしょう。
まるで、生まれる時代を間違えた、という感じ。
この感覚が以降の展開でリンクすることになります。
ロンドンへの上京を祖母は素直に喜び、送り出しますが、口を酸っぱくして伝え続ける言葉は「ロンドンは危険な街」「あなたの母親はロンドンに飲まれて心が壊れた」「気を付けるんだよ」。
どうやら祖母の娘、エロイーズの亡き母親も、かつてロンドンに上京し挫折した過去があるらしいのです。
母親はその後、心身を喪失し自殺してしまう。祖母にとっても、エロイーズにとっても、曰くのある場所。
冒頭はエロイーズの上京物語です。
自室で荷造り。古いレコードばかりを詰め込む孫に、靴下も持っていきなさいと苦笑する祖母。
「それもそうね」とタンスの引き出しから小棚を引き抜き、キャリーバックにドーン。
(結局。この先の展開に靴下の描写はなかったなぁ・・)
上京の描写も、わずかなカットの継なげですが、印象に残っています。
ロンドン(都会)は怖い場所。と祖母から聞かされていた孫娘の様子がよく出ているし、この子は素直でいい子なんだと思えます。
こういう純朴田舎娘が都会に出て、垢抜けるという変身が、東京を舞台にしたドラマでも描かれますが、
どういう作品でも「田舎を出るまで」が可愛いんですよね(^_^;)
快速列車でキョロキョロ。都心部が近づいてくると乗客の客層も出入りも変わる。
そしてロンドンに到着。住居となる女子寮まではタクシー利用。
そのタクシー運転手と雑談していると、フロントガラスから自分の足を見る運転手の気配を感じ、一気に怖くなるエロイーズ。
「お姉ちゃん。ロンドンは何しに?」「ファッションの学校に通います」「モデル?」「服飾です」「お姉ちゃんなら、モデルも出来ると思うけどな」とニヤリ。
エロオヤジの視線に気付き、ロングスカートのスリットから除いた膝小僧を慌てて隠すエロイーズは「ここで降ります」。
女子寮まで送るという運転手を断り、近くのコンビニに逃げる。コンビニの棚から様子を伺うと、しばらく停車しているタクシーにゾクッ。善意か好意か、正直分かりませんが、犯罪の匂いがする雰囲気の描き方に感じます。
祖母の言葉がよぎる。「ロンドンは怖いところよ」。
タクシーが去ったのを確認したエロイーズは重い荷物を引き摺って入寮。
ルームメイトの【ジョカスタ】との初対面。
扉を開ける前に挨拶してきた「自分が中心にいたいマウント女子」。
ジャカスタはいわゆる典型的な「主人公を虐める役回りを担う女子」。
珍しい名前で唯一無二だからブランドネイムにすると、苗字を名乗らず、部屋のネイムプレートは苗字だけマジックで消しています。
学校の規模や影響力は残念ながら映画で紹介されていません。
授業風景も教室の1部屋ぐらいなので、服飾の専門学校というイメージしか私には湧きませんが、おそらく入寮の時期ですから、全国や海外からも、ファッション最先端のロンドン校に入学するはず。何しろ学校名がロンドン・カレッジ・オブ・ファッションですからね。
ジャカスタはそんな入寮してくる女の子たちに声をかけています。「はーい。私はジャカスタ。あなたの名前は?どこから来たの?」と。
性格が悪いだけで、心根は優しい女の子。ちょっと古いタイプのいじめっ子でしたね。
(言い方Σ(・□・;))
60年代のファッション・音楽に強い憧れを持つ主人公の上京。
1960年代で考えれば、現代から60年前。
母親より祖母の時代を愛する。だけれど祖母にその時代の話を聞いたりしないから不思議に思います。
私でいうと、子供の頃に今は亡き祖母達に大正や昭和の時代の話を聞いていたので、どこかその時代の会話にも愛着があったりしますが。空前のバンドブーム、その頃の英国背景も映画の中で教えて欲しかったかな。
10数年間(年齢設定は不明) ブレずにオールディーを過ごしてきたのでしょう。
しかし大都会ロンドンの専門学生たちは最先端ファッションやブランドが主流。
「我が道を行く個性派」というより、「純朴な田舎娘」という感じに映ります。
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入寮した初日。
ルームメイトのジョカスタに誘われて、女子グループで夜の街に出かけます。
もう私はこの場面。保護者的な感情になって・・田舎から出てきた娘に悪い遊びを教えないで!とハラハラしてしまいました(笑)
中高生時代の彼女が、どういう学生生活を過ごしてきたのか?を、映画は描いてはいませんが、純朴さは伝わってきます。
(「祖母に育てられて不良になる田舎娘」というイメージを私は持っていない)
場の雰囲気に馴染めずトイレに逃げ込むと、聞こえてきたのはジョカスタ率いる女子の本音。慌てて足を上げる。
「あの子、ほんとウザい」「あの子って、エロイーズのこと?」「そうよ。あの手作りの服もダサいわ」「アハハ」女子会の同調。
女子寮のはずなのに、夜になると男子も普通に入れて乱痴気パーティー。
酒もドラッグも性に対しても、とにかく居場所がないと心で泣く日々を送っている。
どこにいても落ち着かない。しばしばヘッドホンで孤独を愛するようになる。
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そんなある日。学生掲示板の下に落ちていた「入居者募集」の貼り紙を見つけ応募するエロイーズ。
彼女が訪ねたのは学校から程近く、都心部にある地域「ソーホー」の一軒家。
管理人の老婆コリンズと面談。三階の屋根裏部屋を内見し、一目惚れ。
ロンドンのソーホーと言えば、日本でいうと東京の新宿だと思います。
オシャレなお店が建ち並び、一歩裏通りを歩けば古い建物も混在する。
そして現在は高級地区ですが、以前は風俗街としての有名だった夜の街です。
管理人のミス・コリンズは、あまり融通が通じない真面目で無口な老婆。
あまり笑わないお婆ちゃんだなと思いました。
入居する条件を出します。家賃を計4ヶ月ぶん先に預けること。男を連れ込まないこと等。
エロイーズはここに住む気満々ですから、はい!はい!と笑顔でそれらに応じます。
実家のある田舎で祖母と二人暮らしという環境を冒頭に見ているぶん、女子寮よりも安心かなと勝手に思いました。
即座に引越し。彼女の荷物は少ないので荷造りも楽だったことでしょう。
キャリーバックに詰め込んだ実家から持って来た大量のレコードも、結局、若い子たちが集まる女子寮では流すことも出来ませんでした。いや、ジャカスタが居なければ、流せたかもしれないです。古い音楽が好きな若者だったいますしね。かもしれない。
エロイーズが住むことになった部屋は、隣のフレンチレストランの外看板から蛍光灯の灯りが入ってくる屋根裏。
契約時に「ニンニクの臭いがするわよ」と管理人はニヤリと伝えますが、臭いの描写は特にないです。それよりも青や赤に点滅する飲食店の看板の光が部屋に入ってくる映像の方が気になりました。ブルーライトやレッドライト・・ソーホーは夜の街ですからね。歓楽街に住んでいる感じが背景から想像できます。
ちなみに「臭うわよ」という管理人の発言を、異臭と表現を変えることで作品を読み解くヒントになると思います。鑑賞される方は頭の片隅に入れておいてくださいね。
あとは隣がレストランですけど、酔っ払いなどの賑わった騒音が聞こえてこないのもいいですね。
嵐の前の静けさ・・ってやつかな(^_^;)単純に店が繁盛していないとも考えられるけど。
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公式サイトのストーリーを読んだ時に、私はウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』みたいな展開なのかな?と予想しました。夜な夜な古い時代のロンドンに主人公が訪れる、と言うので。
(そんな巨匠ウディ・アレン監督も、夜の出来事が原因で追放状態になっていますけど)
予想は見事に外れました。
その夜。就寝したエロイーズは限りなく現実に近い夢を見ます。
夢の中の人物は、玄関を開けて道路を渡り、正面にあるカフェ・ド・パリというショーパブに行きます。
隣にはフレンチレストランはなく、煌びやかな電飾と交通量、人で賑わうソーホーの街並み。
ソーホーのナイトクラブ。まるで『タイタニック』の一等客船!(笑)
紳士淑女の面々が集い、ダンスを踊り、看板の女性歌手が美声を披露する。
この時の映像は、とても私には斬新で、とてもミステリアスで、感激しました。
夢の中で主役となるのは、サンディと名乗る金髪の若い女性。
顔と頭が小さくて、目が大きい。お人形さんみたいな女性。
サンディは歌手になりたくて、この店を訪ねています。
「オーナーに会わせて頂戴」とかなり自信満々な女性です。
このサンディの言動をエロイーズは追体験という形で見ております。鏡の中から。
60年前の出来事を現代にいるエロイーズが、就寝中に観ていく流れ。
その人物本人になるのではなく、限りなく近い位置で、様子を観ていくのも特徴ですね。
上の写真のようにサンディの左右対称もあれば、ただ単に出来事を目撃しているだけもある。
サンディだけを観ているのではなく、サンディのいる世界を観ている。
『ハリーポッター』で言えば、スネイプ先生の涙から出来事を追体験したり、ダンブルドア校長の過去の記憶を見ているようなものかな。(英国映画なので、なにかしら共通点を見つけてしまいます(^_^;))
サンディは店のエンタメ業務のまとめ役を束ねるジャックと知り合い、すぐに恋に落ちる。
ジャックは「ヒモ」と呼ばれています。女性歌手を束ねてお金を儲けるから・・なのかな。
雇ってもらいに店を訪ねたと思ったら、そのスカウトマンに口説かれるんですから、展開早いなぁ。まぁ夢なんで展開飛び飛び。
ナイトクラブのジャック。
ジャックナイフのように危険な男。
君を店の看板スターにすると約束する。
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目を覚ましたエロイーズ。その世界観が変わっています。奇妙で刺激的な60年代のナイトクラブを追体験し、夢の中のサンディという金髪女性に強い親しみと憧れを持つようになるのです。
元々この時代を愛していた彼女にとって好影響に繋(リンク)がる。
その奇妙な感覚を持ったまま、頭の意識の中に鮮明に存在する彼女をモデルにしたデザイン画を描き、女性講師からベタ褒めされる。「あなたは凄いわ!」。
昨日までとは違う世界、そして周囲の反応。 唯一、ジャカスタだけは面白くない態度。「なによ、あの子。」
髪の色を金髪に染め、大胆なイメージチェンジ!
それから夜な夜な夢の中で逢うサンディに寄っていく。
2人の女優のお顔立ちタイプが違うので区別は出来ますが、現代を生きるエロイーズの方が過去に生きた彼女に近付い(寄せ)て行っているのが分かります。
それだけサンディは魅力的な女性でした。
しかし、サンディの歩いた黒歴史・出来事を、現代のエロイーズが追体験していくにつれ、ナイトクラブの門を叩いたその後の彼女が決して思い通りにスター街道を進んでいったわけではないことを知ります。
眠るたびに更新されていく記憶。「もう続きを見たくない!」
エロイーズは次第に夜眠ることが恐怖になっていくのです。
60年の時を超えてツイの状態になった2人。
部屋の中には留まらず、学校内、街中など、昼夜問わずに幻覚・幻聴にエロイーズの意識は支配され、精神的にも危険な状況に。
果たして、エロイーズの身に何が起きているのか?
衝撃の夢の続きが描かれる。
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前半部分の描写を細かく広げました。
細かい部分になりますが、いくつか気になった点をお伝え致します。
普段。アメリカのホラー映画を見る機会が多いので、ヨーロッパのホラー映画を見ると新鮮に感じることが多いです。
基本的に白黒映画のように静かでアナログさがある英国ホラーでしたが、物足りない点もいくつかあります。
まず。1960年代という時代背景がこの映画の大きなポイントの1つとして冒頭から紹介されていますが、
この作品で自分が弱いと思ったのが、良くも悪くも若い女性の主人公という点です。
主人公エロイーズの絶対的存在 が 1960年代のファッションと音楽。
劇中では日本でも大ヒットしたオールディの名曲が挿入歌として流れるので楽しめると思います。
ではそれ以外は?と考えた時に、彼女の知識は偏っていて世間知らずに映るので、設定が弱く感じました。
もっとこう・・1960年代の歴史背景だったりを勉強したり、音楽以外に映画だったりテレビ番組だったりを研究するなど、60年代全体を好きな主人公であって欲しいです。
流行の背景には時代という存在がありますからね。ファッションデザイナーになるなら、それを知り得た上で上京しないと(^_^;)
「この時代のフッションと音楽が好き」と特定されていた時代があるぶん、脚本は設定を固めやすいとは思いますが、それに関しても、例えばオタクのような知識力が備わっているようには見えず、ただ好きと言っているだけなので、それだけだと、他に60年代好きの人間が現れた時に会話にならないと思います。60年代の英国ファッション文化が好きな人なんて沢山いるでしょうから。
その偏った知識が災いするから映画だと思うのです。
住み慣れた街から都会のロンドンに上京し学生生活に入る主人公。ロンドンと言っても1577㎢と範囲が広い世界都市ですので、一括りにせずに、「ソーホー地区」に住むという情報もあってほしいですね。自分が住む街の情報もなしに都会で出るって結構リスキーかな、と。
祖母も「ロンドンは怖いところ」と真剣に伝えますが、ロンドンのソーホー地区に住むということまで知っていたのかな?
細かい部分への興味ですけど、最愛の孫娘が都会に上京するというだけでも心配だと思いますのに、その状況先の住所がソーホー。英国民ならば、ここが過去、どんな街色だったかぐらいは知っていると思います。
アンティークの洋服店で出会った60年代の洋服を買いたいからバイトすることになったパブも、キッカケだけではなく、もう少し丁寧に描いて欲しかったと思います。
脚本は水準以上です。
Wikipediaなどで地区を検索すれば、一発でどんな場所なのかを知れます。
過去に多くの性風俗店で栄えたロンドンの夜の街。風俗と繁華街、殺人事件もマフィアも何でもあり。
現在はオシャレタウンと化していますが、夜の街の名残は残りゲイバー等で賑わっているそう。
自分も地名だけは知っていたので、夜の街の匂いを出さない前半から、夜の街の匂いを出すように変わる中盤以降は、見応えがありました。
このパブの常連客である老人が、際立った演技をされています。
俳優は【テレンス・スタンプ】[82] 英国を代表する名バイプレイヤー。
「俺はこの街の女は全て知っている」が常套句。主人公エロイーズが最も警戒する存在です。
この老人は、映画を視終わった後、もう一度、設定を知った上で鑑賞したくなるキャラクターでした。
主演のエロイーズを演じる【トーマシン・マッケンジー】[21]も、個性的でいいと思います。
元々が霊感気質の女の子。亡くなった母親の姿が鏡などに映っている。
そんな彼女が、間借りする一軒家に引っ越したのを機に、就寝すると60年代の同地区の時代に意識が移り、サンディという歌手志望の女性の出来事の様子を追体験します。
繁華街でナンバーワンのナイトクラブを訪ね「オーナーに会わせて」と自分を売り込むサンディは、スター気質で自分に自信を持つ。遂にはクラブのまとめ役の男性と恋に落ちる。
目を覚ますと彼女への憧れを強く出す主人公。髪をサンディと同じ金髪に染め、彼女をイメージしたデザイン画を描き、講師から一目を置かれる。イメチェン大成功。隠キャから陽キャへの変身・変貌はホント見事。完全憑依型の女優。
彼女に寄せる事で、謎の老人が接近したり、日常でも亡霊たちが襲ってくるようになる。
トーマシン・マッケンジーは目と鼻が日本のハーフタレント【ベッキー】にしか私は見えないので、20代の頃のベッキーが演技をしている感じがしました(^_^;)
相当大胆なイメチェンで、金髪になると印象が全く変わる為、とても振り幅を感じて、英国人の変身も楽しめた映画です。
英連邦王国の一国であるニュージーランド出身の女優。今回の相手役が黒人俳優であるから肌の白さが際立って見えました。
近々で記事にした『Old』にも出演されていましたし、『ジョジョ・ラビット』など、私の少ない投稿数の中でも触れることが多い女優。ご年齢も21歳と若く、出演した作品の質を視ても、今後間違いなくトップスターになる出方を魅せているので要注目です。
一方。主人公が追体験する60年代のソーホーを生き抜くサンディ。サンディ役の女優も印象深いです。
【アニャ・テイラー=ジョイ】[25]は・・おそらく初見の女優です。
プロフィールに書かれている出演作は日本で公開されない作品が多かったので馴染みがないのですが、これまた個性的なお顔立ちの女優さんだなと思います。
爬虫類系のお顔立ちですが、一度見たら忘れられない印象の強さがあるし、凛としていてお美しい。
特に初登場シーンから暫くは、自信に満ちた雰囲気で演じているので、相当絵になっています。
主人公のエロイーズが強い憧れを抱くのも分かります。女性がカッコいいと思う魅力があるのではないかな。
表情筋の弾ける演技をするようになる中盤以降は、個人的にはそこまで演技派には観えませんでしたが、とにかく華があって良い。
こういう身長が高くてスラッとしている女性はアクションをさせてもカッコいいし、ラブストーリーでもギャップがあっていい、悪役をさせても似合うと思うので、どのジャンルでも味を出せる万能型だと思います。同じく要注目女優です。
最後に。
減点する程でもないですが、増点となる満足感もないのが、主人公の恋仲相手ジョン役を演じる黒人俳優の【マイケル・アジャオ】の存在感の低さです。
出会いのシーン。重い荷物を持って入寮した主人公に「手伝おうか?」と声をかけるのですが、女子寮の前で携帯いじって暇してる黒人男子という感じなので、鑑賞する私としても断った彼女の気持ちが分かりました。
その前のシーンでタクシー運転手から舐め回されるような視線を感じて怖がっていますから、警戒されるのも無理はない。
その後、他の英国男子のように肉食系ではなく、草食系で優しい性格の持ち主であるジョンは、主人公に寄り添うよう見守るような存在に。
男子生徒が少ない学科。ジョンは筋肉隆々の黒人ではなく、細身で優しい黒人。
肉食系の装飾男子より、草食系の装飾男子の方が、オネェ感もあるぶんシックリきました。
ただ、中盤以降は、亡霊に取り憑かれた主人公が、過去と現在を見境なく行き来し、今世紀最大級のパニック状況(^_^;)となる流れの中で、ジョンは愛する彼女を守るために男気を見せていくのに、、これと言った印象に残らない存在感の低さも正直生じました。
この手の「主人公の彼氏・彼女」という役回りは印象に残ったり、見せ場があったりすることが多いのに・・・。
Wikipediaや公式サイトでもキャスト紹介の番手が下の方なのも気になります。
出演時間で行ったら、ナイトクラブのヒモ男よりも多いのにな。
そうそう。記事にするなら、これを書こうと思ってました。
今作は過去と現在をリンクさせる共通点が線になって描かれていると視ていましたが、
1960年代のロンドンのナイトクラブに黒人を登場させていないのに、2020年代にはラブストーリー仕立てで結ばせるというのも、キャスティングがイマイチに感じました。ここは無難に白人の若手俳優の起用の方が良かったのかなと思います。これは私の見方ですが、役のポジションのわりに、いまいちパッとしないんですよ。
人種の問題が真意にあるのか?は分かりません。
ジョンはジョンで、ロンドンに上京してきて、親しい友達もいないし、学校の友達と出かける時があっても独りに映る。周りに黒人もいない。エロイーズとの共通点も見つかります。
例えば、イギリスは人種差別傾向のある国だったりもするので、それを根底に置いて見た場合、黒人もそうですがアジア人やアラブ人だったり、この学校の生徒役にいて孤立していたとしたら、また違った見方でこの映画を作品として視れるのかも知れませんね。
とにかく脚本が面白く、表面で描かれている映像よりも、内容は深いと思います。
主人公がどうしようもないくらい過去の亡霊に取り憑かれていく様子と、英国のモノクロなホラーと煌びやかな60年代の花街の様子がクラシックで、半世紀前の歴史の闇も感じる事が出来ます。
脚本 15点
演技 13点
[サンディ役 加点+1]
構成 13点
展開 13点
完成度13点
[68]点
明けましておめでとう御座います。
本年もどうぞ宜しくお願いします。
月1ペースで不定期の投稿ですが、今年はもう少しだけ投稿数を増やし、読みやすい文章で、言葉に情熱を注げたらいいなと思っております。
ここで出逢うのも何かの縁。
あなた様の2022年が良き年でありますように🌄。
【mAb AcAdemy】