皆さまこんばんは🌙

PS-Customizeの渡邊です。


はじめに申し上げておきますが、この記事は長くなりますよ〜笑


YLOD修理/対策の定番とも言えるプロードライザの交換ですが、MLCCを採用してさらに広帯域で安定したノイズ除去ができるよう改良いたしました!

現時点ではラインナップには加えておりませんが、修理依頼でのご希望に応じて採用可能です。


見た目はこんな感じ👇



変更点は...

1. SP-Capを4→2個に削減し、代わりにMLCC 4種類7個を実装

2. SP-Cap 1個当たりの容量を470→680に増加

となります。


採用しているコンデンサは...

・Panasonic SP-Cap EEF-GY0E681R 680μF

・KYOCERA AVX KGM-X7R 16V 2.2μF

・KYOCERA AVX KGM-X7R 16V 0.1μF

Würth Elektorik WCAP-CSGP X7R 16V 0.047μF

・Würth Elektorik WCAP-CSGP X7R 16V 0.022μF

の計5種類です!

大手メーカー品を贅沢に使用しています笑

*Würth Elektorikは馴染みのないかたもいらっしゃるかもしれませんが、ドイツの電子部品メーカーです。


MLCCには、大枠で低誘電率系高誘電率系の2種類があり、後者を採用する場合はDCバイアス特性を考慮する必要があります。


DCバイアス特性とは、「直流電圧を印加したとき、定格電圧に対する印加電圧の割合に応じて静電容量が減少すること」をいいます。

一般的に定格電圧に対する印加電圧の割合が大きくなるほど容量は減少します。

*ただし、減少の度合いは印加電圧比だけでなく、定格電圧や静電容量、サイズ、誘導体の種類などにより異なります。


今回は、定格電圧が16VのMLCCを採用することにより印加電圧比を下げて、減少量をほぼゼロ〜僅かに留めています。


実装方法についてですが、初めは手実装で行いました(RSX側の左)が流石に時間がかかりすぎたので、それ以降の3つはリフローで実装しています。

手実装したものは、他と比べると若干ガタついているのがわかるかと思います笑


リフロー実装の方が間違いなく綺麗かつ素早く実装できますが、温度と時間をしっかり管理する必要があります。


特に-22基板だと、デラミちゃんとうもろこしボーイ(吉満さんしかわからんネタですなぁ〜笑笑)を発生させるおそれがあるため、慎重な作業が求められます。

*デラミちゃん=デラミネート、とうもろこしボーイ=ポップコーン


大袈裟かもしれませんが、湿気が多い梅雨の時期などはプリベークした方が事故は防げると思います。

(ほとんどの場合、適切に予熱をすることで問題は生じないでしょう...笑)


実装に使用した基板は、1002でYLODとなっていた40nm リファービッシュ品です。

CELL/RSXのプロードライザをそれぞれ2個ずつ交換したところ、正常に起動するようになり、高負荷テスト(Gran Turismo 6をプレイ)でも電源は落ちませんでした。

まぁ、PWRGOODがいじられている故かもしれませんが...笑


この方式採用する場合は、CELL/RSX実装側はSP-Cap+MLCC、反対側はSP-CapまたはPOSCAP 4個実装がよろしいかと思います。


以上、MLCCの追加実装の例でした!



ここからは余談です...


以前の記事でも書きましたが、高周波ノイズの対策よりも、低〜中周波のノイズをしっかりと除去できるようにする≒ESRの低いコンデンサを採用する方が重要です。

低〜中周波ノイズを抑えれば、実用上問題ない場合がほとんどです。


つまり、中華のタンタルコンデンサにMLCCを加えたり、中途半端にMLCCを実装(1,2個程度)するくらいなら、中華タンタルをSP-CapやPOSCAPなどに置き換えた方が良いということです。


中華タンタルでもプロードライザの劣化によるYLODが直せるくらいなので、プロードライザ1個当たり、330〜470μF、ESRが〜12mΩ(低い方がより良いです。)のSP-CapやPOSCAPを4個実装するだけでも基本的には問題ありません。


特性などを考えずに「動いているからいいでしょ」という感覚でポンポン載せるのはいかがなものかと思います。

趣味でやったり自分で使うものなら良いでしょうが、それを販売する...というのはプロの仕事ではないでしょう...


私自身も趣味でやっていた頃〜開業当初は中華タンタルをラインナップに入れていたり、ガタついた実装だったため、あまり偉そうに言えませんが...笑


趣味でやっていた頃〜開業当初を振り返ると...

実用上問題はありませんでしたが、今思うと中華タンタルにこれはないかなぁ...と言った感じです。

(似たような実装方法による取り付けを最近始めたかたがいらっしゃるようですが、当店とは無関係です。)


その後、ナナメ実装も取り入れました。

ハンダの量はやや多く、ガタガタですねぇ〜


はんだごてすら中華を使っていましたからね...笑

この頃は片側2個 3,700円だったかと思います。

(この頃のスキル、採用部品などを鑑みると価格相応ではないでしょうか...)


'22年初頭からSP-CapやPOSCAPの採用を始め、後に陽極ブリッジも行うようになりました。
'24年7月で、タンタルコンデンサとPOSCAPは取扱終了となりました。

タンタルコンデンサについては、取扱終了後に残っていたものも、低価格出品用の機体などに使用し、先日在庫がなくなりました。
特別な事情がない限り、今後使うことはないと思います。

POSCAPについては、メインでの採用は取りやめましたが、一部容量のみ仕入れを再開しました。CELL側のプロードライザの交換に使用したり、オークション出品用に使用しています。

現在の実装方...

ガタつき、浮きはなし!

フラックスの残渣もなし!

日々、技術力を高めてより良いサービスを提供できるように努力していかなければなりませんね...!



P.S.

40nm RSX化(Frankenstein)もいよいよ最終段階...


エアコンを使わない冬場にやるのがいいですね〜

湿度も低いので最適です笑


以上になります。

ご覧くださいまして、ありがとうございました✨



2025.9.11 作成