☆CELL/B.E. CXD2964GB(90nm)

PS3のCELLとRSXのヒートスプレッダ(IHS)とダイの間には、熱伝導グリスが採用されています。
このヒートスプレッダをパッケージから外すことを俗に”殻割り(デリッド、Delid)”といいます。

本体温度の上昇を知らせる警告が頻繁に表示されたり、XMB画面で待機させていてもファンが高速回転になる機体は、平均動作温度が高いCELL側のグリスの劣化が原因であることが多いです。

グリスの塗り替えには、ヒートスプレッダを取り外す必要がありますが、CELL側は厚さ約0.3mmのシーリング材により固定されています。
また、ヒートスプレッダとシーリング材塗布面には約0.5mmの段差があります。

このシーリング材を薄く鋭利なものでカットしていきます。
身近なものでは、カッターナイフの刃や缶詰の葢、プラモ用ノコギリ、薄い金属板などが候補に挙がるかと思いますが、使いやすいものを選んでください。

※当店では、専用に設計された工具を使用して作業をしています。

刃がある方がカットしやすいですが、角部でパッケージに傷を付けるおそれがあるため、加工が利く金属板で専用の治具を自作するのがよいでしょう。

カット時は、くれぐれもパッケージ表面に傷を付けないように注意しましょう。小傷なら問題ない場合もありますが、刃先をやや上に向けるイメージで、パッケージにあたらないようにすることが重要です。

後述するRSXの殻割りについては、はんだボール等への悪影響がある可能性が指摘されているため、あまりお勧めできません。グリスの劣化は、CELL側で起こることがほとんどですので、まずはCELL側を実施し、改善されなければRSX側も行ってください。

 

☆RSX CXD2971GB(90nm)

RSX側にはシーリング剤は使用されておらず、角にある4個のVRAMに接着剤が塗布されており、これによりヒートスプレッダを固定しています。

これを取り外す際は、テコの原理を使います。
パッケージに注目すると、ダイの上下および左側には、MLCCや抵抗等が実装されていますが、右側には何もないことが判ると思います。

ここにバターナイフやスプーンなどを差し込んでテコの原理で取り外しますが、パッケージの保護のために支点の部分を厚さ0.4mm程度のプラ板等で養生しましょう。
ヒートスプレッダとパッケージの隙間は約1.1mmですので、有効な隙間は0.7mm程度となります。この隙間に入るものを選んでください。
マイナスドライバーなど、接地面が狭く力が集中するものは避けたほうが無難です。
また、ヒートシンクが飛ばないように養生テープ等で固定しておきましょう。

無理に力を加えると、パッケージやはんだボールにダメージを与えたり、VRAMが剥離してしまうことがります。

ヒートガン等で加熱(100℃程度)しながら、ゆっくり力をかけていきます。加熱することで接着剤が柔らかくなり、取り外しやすくなるほか、VRAMの剥離等を予防することができます。
65nm,40nmのRSXでは、より強力な接着剤が使用されておりますので、この方法は行わないでください。

→VRAMとヒートスプレッダの間の接着剤を極薄の金属刃(スクレーパーの替刃など)で直接カットする必要があります。


殻割りは難易度が高いですが、グリスの塗り替えによりコアの温度を10°C近く下げることもできます。
ただし、基本的には使用に支障が出ている機体において行う最終手段と考えてください。

特にCELL側で失敗し起動不能になった場合、修復するのは非常に困難になります。

 

大事な本体で実施する場合は、事前に壊れた基板で練習してください。また、本体が正常に動作するのであれば、セーブデータのバックアップを取ることを強くお勧めします。

 

 

※ホームページに掲載した記事の移植です。

2024.8.3 作成

2025.3.14 修正