ハインツ問題 解説 (^^;; | Aprikos blogg

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色々ありますが、それでも前を向いて生きようとしているMtFな私の天然ブログです。

こんばんは。(^^)

昨晩、掲載いたしました「ハインツのジレンマ」の問題。

かなりの難問ですよね。(^^;

これについて、出題者であるコールバーグの言葉によりますと、

「人によって、道徳は幼い人もいれば成熟した人もいる」と、言うことだそうです。(^^; あの問題で、ある程度その段階を判断することができる…らしいです。(^^;;

それでは、私なりに解説を。(^^;


この問題は、「病気の妻を助けたい。けど、薬を買うお金がない」と、いうジレンマが起点となっています。

(1)
「盗むなんて駄目じゃん。捕まったらどうするの?困るじゃん」
とか、
「誰にもバレなれなければいいのでは?」

と、それだけを単純に考える、いわゆる、「自分中心・損得」だけで考えることが一番子供っぽい道徳レベルなのだそうです。(^^;;

上記の意見も間違いではありません。ですが、バレなければ何でもしていいのか?という問題や、面倒くさいからと好きな事だけをしていたら、世の中の秩序は乱れてしまいます。(^^;

(2)
「気持ちは解るが盗みは良くない。世の中がそれを認めていないのだから。」
とか、
「いくら調合に大変だったとはいえ、ハインツの奥さんの事情を考えれば、そんな法外な値段をつける薬屋さんが悪い。盗まれても誰も咎めない」

と、「法律や秩序、社会通念」で判断するのが次のレベルだと言われています。

これはこれで正論なのですが、これだけで進めていくと、多数決で少数派の意見はかき消されてしまいますし、対立した場合、どちらも譲らず永遠に言い合い状態になってしまう危険性も孕んでいます。(^^;

(3)
「盗みは良くないし、法律違反だが、法を守ったばかりに奥さんを失うなんて、人としてそんな事は許されない。人の命こそ一番大事なものだと信じているから、法を犯してでも私は盗む事に賛成する」
とか、
「彼が奥さんをいかに愛しているのか、それは痛いほど理解できる。だけど、仮に奥さんがそれで助かったとしても、薬を盗んだ事で警察に捕まってしまったと知ってしまったら、奥さんは大変悲しむでしょう。愛する人を悲しませないためにも、私は盗みには賛成できない」

と、(1)と(2)を理解し、なお且つ様々な考えがあることを知った上で、「自分の信念」を持って、良識に従って判断するという、次の高みの段階が、より成熟した道徳だといわれています。

ただですね…(^^;;

これはこれで問題があるのですよ。(^^;;

信念で行動する事で…例えば、独裁者を倒したとしますよね。これまで、国民を苦しめ、私腹を肥やしてきた政権を倒し、国民が自由を手にする事自体は、全く悪い事ではありません。

ですが、独裁者といえども人の親。その子供たちが悪政に加担していたのでしたら、酌量の余地もないかもしれませんが、まだ幼くて、両親が恋しい年齢だった場合はどうでしょうか?

信念のためとはいえ、目の前で親が殺される姿を幼子に見せるのは、かなり酷な事ではないでしょうか? その幼子に「自業自得だ!」と、吐き捨てられるでしょうか?

つまり、自分の信念・良心に従った道徳は、時に誰かを不幸に陥れる危険があるということなんです。

ハインツのお話に戻しましょう。

もし、奥さんを助けるために、盗みを働き、それが成功した場合、薬屋さんを不幸に陥れるだけでなく、ハインツ自身も罪を問われて警察に捕まってしまいます。そうなれば、奥さんが不幸に陥ってしまいます。犯罪を犯して得たもので自分の命が繋がったと知れば尚更だと思うんです。

もし、盗みをしなければ、奥さんは命を失うわけですし、ハインツも奥さんを失う事で不幸になってしまいます。生きる意味を見失って、後追い自殺を図ってしまうかもしれません。薬を失わなかった薬屋さんには何もないように思えますが、その経緯を知った人達から薬屋さんが糾弾される可能性が出てまいりますし、何より、薬屋さんも自分があの時、500万円で売っておけば…と、後悔の日々を送るようになってしまうかも知れません。

つまり、これでは誰も幸せになれない可能性が高いのです。(--;

かなり難しい問題ですよね、やっぱり。(--;

では、どうしたらいいのでしょう?

実は、これを更に進めた道徳があると唱える人がいまして、その方の仰るには、「皆の幸せとなる方法を探す」というものなのだそうです。(^^;

具体的に言いますと、

「薬を欲しがっている人達は、ハインツの奥さんだけでなく、周りにももっと多くいるはずだ。この薬を手に入れ、奥さんを病から助ける代わりに、その薬屋さんの利益となるように、ハインツが営業して回ったらどうだろうか?」
とか、
「薬をもっと効率よく、より大量に生産できれば、多くの患者さんを救うことが出来るし、薬屋さんも儲かるはずだし、薬の価格を下げることも可能なはずだ。ハインツがその生産システムを作れる人を薬屋さんに紹介する代わりに、薬を手に入れ、奥さんを助けるという取引はどうだろうか?」

など、薬屋さん、ハインツ、そして奥さんが完全にとは行かなくても皆が幸せになる道を模索していくことが、先の3つの上を行く道徳観ではないかと、コールバーグのお弟子さんであるキリガンさんという方が唱えています。これを、「ケアの倫理」という考え方なのだそうです。(^^;



いかがだったでしょうか?

全ての道徳が良いとか悪いとかの正解は存在していません。それに、最後の道徳観は、物語を一部無視していますので、盗みに入る前に、ハインツか、登場していない第三者がそれに気づく必要があり、明快な回答とは言い難いと私はそう思っています。(^^;

まだまだこの問題に私は苦しめられそうです。A(^^;

それでは、最後までお付き合いくださりましてありがとうございました。m(__)m

それではまた明日。

おやすみなさい。(^^)/


あぷりこっと