➖7日目。





「じゃあ、仕事行ってくるからね。ちゃんと寝るんだよ。」



『うん…行ってらっしゃい…』




お母さんは私の部屋を出て行き、仕事へと向かった。




お母さん、ごめんね。




玄関の鍵が閉まる音を確認してから、おでこに貼られた熱さまシートを剥がし、私服に着替えた。





愛佳が引っ越してしまう前に、どうしても会いたくて、「体調が悪い」と嘘をついて学校を休んだ。





愛佳に連絡をして、しばらくすると、玄関のチャイムが鳴る。







「やっほ〜、あれ?私服に着替えたの?」



『うん、だってパジャマじゃ恥ずかしいもん』



「え〜見れる機会ないから見たかったのに」





昨日の夜、愛佳は私の家まで送ってくれた。


そして、引っ越す前に理佐の部屋に行きたい と言われ、今日学校を休むための作戦を二人で考えたのだ。




私は昨日、愛佳に「付き合って欲しい」と言われて、少しも戸惑うことなく、「お願いします」と返事をした。



住むところが離れてしまっても、愛佳からは離れたくないと思った。


愛佳にとって特別な存在で居たい、そう思った。







「理佐の部屋めっちゃ綺麗だね」



『ん〜物が少ないからかな?』



「私、もっと少ないかも」



『これよりないの?何もないじゃん』



「ははっ!あるわ!」




愛佳が私の部屋に居て、私の隣で笑っている。



こんな時間が、次いつになるかなんて分からない。

そう思ったら、やっぱり寂しくなった。





『愛佳の部屋、どんな感じなのか次はちゃんと物がある部屋に招いてよね』



「うん、そうだね。ここにもまた来るし。」




私の寂しさを感じてくれたのか、愛佳も寂しさを感じてくれたのか、テーブルの上に乗せていた手に、愛佳が手を重ねてぎゅっと握ってくれた。





「てか、理佐熱あるみたいだし、寝てた方がいいんじゃない?」



そう言って、悪戯っぽく笑う愛佳は、私の手を握ったままベッドに向かう。





いつも一人で寝ているベッドで、愛佳と一緒に寝転がっている。


恥ずかしくて、嬉しくて、心臓が騒がしく音を立てている私に、優しく私の名前を呼ぶ愛佳。





「理佐、付き合ってくれてありがとう。本当に大好きだから」



ゆっくりと顔を近づけてくる愛佳のほっぺたを片手で掴む。





『熱、あるのにいいの?』



「ふふ、理佐も意地悪だね」




ゆっくりと重なった唇が温かくて、優しくて、愛佳への好きな気持ちが溢れる。








『…離れたくなくなっちゃうね』



「そんな可愛いこと言われるとさぁ…本当に行きたくなくなっちゃうよ…」



『でもね、愛佳なら大丈夫って思える。出会ってそんなに経ってないけど、そう思える。』


「うん、私も。それに私、多分理佐が思ってる以上に相当理佐のこと好きだよ?」


『ふふ、なんか恥ずかしいね。でも嬉しい』





決して、長くは過ごせない 今日 という時間が刻々と過ぎ去っていく。



おもむろに、愛佳は私の首元へ顔を埋めた。





『愛佳…?』


「私の、って印。」




首元から顔を離し、目が合った愛佳は優しく笑う。






あぁ、愛おしい。



1週間前の私は、こんな未来なんて 想像もしていなかった。



誰かを好きになって、大切な存在の意味を思い知るなんて…。






あっという間に、愛佳が家に帰らなければいけない時間になって、二人の寂しさはこみ上げる。






「パジャマに着替えるの、手伝おうか?」


『何言ってんの、バカ…。』



冗談を言って、笑い合うこの時間がさらに寂しさを募らせた。





「じゃあ、またね。バイトして、こっちに遊びに来るから。」



『うん、私も愛佳のところ行くからね。』



「…うん。それまでに、ちゃんと案内できるようになっておくね」






ここで一度、お別れなんだと実感する。



また会えるし、私達の気持ちは通じ合っている。




だから、少しの間会えなくなっても大丈夫。




私は、愛佳のことが大好きだから。






「『またね。』」





そう言って私は、愛佳のことを見送った。









--続--