➖6日目。
「部活おつかれ〜っ」
『うん、ありがとう!てかこんな時間にお家お邪魔して大丈夫?』
「大丈夫だよ!まだ18時だしっ!」
公園で合流して、愛佳について行ってお家へと向かう。
10分も歩かなかっただろう。
「ここ!」
『えっ、近!多分愛佳ん家から私の家、20分もかからないと思う』
「ははっ!近いね!」
玄関を開けて、家の中に入っていく愛佳に着いて行くと、リビングから愛佳のお母さんが顔を出した。
『あっ、お邪魔します!』
「あら、お友達〜?なにもないけどゆっくりして行ってね〜」
愛佳はきっと、お母さん似だろう。
笑った顔が、そっくりだった。
それにしても、昨日の愛佳と言い、さっきのお母さんと言い、「なにもない」と口にする2人の言葉が気になる。
「ここが私の部屋〜」
そう言って扉を開けて部屋の電気をつける。
『…なんか……』
「ははっ、なにもないでしょ?まあ、まだ布団はあるけどね!」
愛佳の部屋は、机やタンス、テレビなどもなかった。
殺風景な部屋に、畳まれた布団だけが置いてある。
『…これが、愛佳の部屋…?』
「うん!…正式には、明日までは私の部屋。あ、クッションもあるから座っていいよ!」
そう言って、愛佳は私にクッションを手渡し、部屋の壁にもたれかかるように座った。
明日まで……。
愛佳の隣に座ってみたものの、目の前の光景と、愛佳の言葉で頭の中が混乱していく。
そして、愛佳が言葉にする前に、嫌な予感が頭を過ぎった。
『愛佳、もしかして…』
「…明日、引っ越すんだよね…」
その言葉を聞いて、私は何も言葉が出なくなった。
「いや〜高校の転校ってさ、大変なんだよ?手続きとか大変でさぁ…!」
わざと明るく出すような愛佳の声が、頭の中で響く。
全然笑えない。
笑えるわけがない。
明日引っ越す……?
『……やだ…っ』
やっと出た言葉は、その二文字だった。
言葉と同時に、涙が溢れ出す。
愛佳の顔なんて、見れなかった。
見たらもっと、涙が溢れ出して、愛佳がここから居なくなることを信じたくなくなってしまう。
でも、信じたくなくても、事実なんだ…。
「私も、嫌だ…。理佐のこと、前から見たことあったんだ。見かけるたびに、仲良くなれないかなぁって思ってて。」
『…え?そうだったの?』
「そう、そしたらあの日偶然、理佐が公園に現れて、嘘でしょ?ってビックリした。引っ越す日が近づくたびに、寂しくなって、家に帰るのが嫌であそこの公園に行ってたの。でも理佐と会えて、話せて、嬉しくてさ…」
愛佳の言葉を聞けば聞くほど、目から涙が溢れて止まらなかった。
「引っ越すことが嫌だって、寂しいって思うのに、理佐と居られるのが楽しくて…理佐と話してるとそんな気持ち忘れられて…」
『だからあの日、7日間毎日来て、なんて言ったんだね…』
「そう、絶対来ないなって思った。私怪しいだろうなぁって。だから今こうして一緒に居るの、ビックリしてるけどすっごい嬉しい」
愛佳の話を聞いていたら、一つだけ 不思議に思うことがあった。
『どうして、仲良くなれないかなって思ったの…?』
そう聞けば、愛佳は言葉を飲み込むように、口を紡いだ。
2人の間に、静かな時間が流れる。
「言わないで、さよならしようって思ってたんだけど…、私 理佐のことが好きみたい。いや、今はもう、好き。」
ずるい。
ずるいよ…。
私だって……。
『…バカ。勝手すぎるじゃんそんなの!私だって…愛佳のこと好きだもん。勝手に居なくなろうとしないでよ…」
「だって、せっかく仲良くなれたのにしんみりするのは嫌だし、なんか、離れたくなくなっちゃうじゃん…」
愛佳がそう言って、少しの沈黙の後に愛佳は不思議そうな顔をしながら私を見た。
「…ん?待って。私のことが好きって言った?」
『うん…言ったよ。愛佳のこと好き。』
その言葉に、愛佳はすぐに返事はせず、また少し沈黙が続いた。
私も、愛佳が好きと伝えたけれど、それ以上はどんな言葉を示せばいいのか分からず、沈黙を破ることは出来ない。
「…私、新潟に引っ越すんだ。だから、あんまりたくさん会ったりできない。それでも理佐が私の側に居てくれるなら、付き合ってほしい。」
愛佳は私に、なんて伝えようか考えてくれていた。
その言葉は、簡単に口にした言葉ではないってことが伝わってくる。
その時、私が出した私の答えはーー。
--続--