その子はみんなから「てち」と呼ばれているらしい。
佑唯は私のことを会話に入れながら、楽しそうに話している。
そうか。
佑唯って、普通に可愛いし、愛嬌がいいから 絶対にモテてもおかしくない。
こういう出会いの場に頻繁に来るわけではないから、そういう話を聞かないだけで、きっと今でも こうやってナンパされたり、告白だってされたこもあるんだろうな。
てちと楽しそうに話す佑唯を見て、そんなことを思う。
…って、私には関係ないか。
「あ、佑唯連絡先教えてよ!」
「いいよ〜!てちもう帰るの?」
「うん、帰る!ありがとう楽しかった!またね!」
「私も楽しかった!またね〜!」
お会計を済ませてお店を出て行くてちに手を振る佑唯と軽く会釈をする私。
「てち、面白い人だったね」
『うん。』
「…えっ?なんか理佐ちゃん機嫌悪くない?」
『いや、悪くないけど』
「あ〜!理佐ちゃん、ヤキモチ?え、理佐ちゃんもヤキモチ妬くの?私に?」
『妬いてないから。うるさい。』
「あはは!可愛い理佐ちゃん〜!嬉しいなぁ〜」
佑唯は本当に嬉しそうな顔で私のことを見て笑っている。
『だから違うって。もう、帰るよ』
「ふふっ、はいは〜い。瑞穂さんお会計お願いしま〜す!」
駅までの道のりを歩いていると、いつもはしてこないくせに、少し酔っているのもあるせいか私の手を握りながら隣を歩く佑唯。
「ねぇ次いつご飯行ける〜?」
『ん〜週末には仕事落ち着くと思うんだけど』
「そっか〜じゃあ落ち着いたら行こう!」
『うん。』
「じゃあ、またね!今日会えて嬉しかった」
『ん、ありがとう。またね』
お互い、別々の方向の電車に乗り、家路へ向かった。
家に着いて、ひと段落終えてからベッドの上に寝転がり、今日のことを振り返る。
私の自分勝手さに、嫌気がさしそうになる。
やっぱり、私の心は少しずつ変わってきている。
ねると別れてからこの半年、失くしていた感情を、また感じれるようになっている気がする。
それは紛れもなく、佑唯のおかげ。
それが分かっているのに、どういう行動を取ったらいいのか 分からない。
『はぁ…』
ため息をついて、天井を見つめていると 携帯が鳴る。
"着信 ねる"
『もしもし』
「あ〜理佐〜!」
『なによ』
「最近会ってないから声聞きたいなぁと思って」
『あ〜』
「え〜今日の理佐めっちゃ冷たい〜。」
『ちょっと疲れてるだけだよ。』
「そっか、じゃあまた連絡するからね!」
『はいよー』
…なんだ、このめんどくさい感情。
今までなら何も思わなかったのに。
--続--