経験したことがないことは、想像するしかない。わかっていたつもりでも、あぁ、何もわかっちゃいなかったと思うことはよくある。


老いもその一つ。


老いることは生やさしいことじゃない。日の当たる縁側でにこにこしながらお茶をすする老人の姿は子どもの頃からドラマや絵本で刷り込まれてきたけど、あんなのは若い人が想像の世界で描いた幻想。


思うように体も頭も動かなくなり、昨日までできたことが今日はできない。忘れてゆく恐怖にさいなまれ、気が短くなり、怒りっぽくなる。

人から忘れられていく寂しさや、近づいてくる死への恐怖に抵抗しながら、生きる悦びを見いだす難しさに直面するのだろう。


ヘルマン・ヘッセが書いている。

若さを保つことや善をなすことはやさしい

すべての卑劣なことから遠ざかっていることも

だが心臓の鼓動が衰えても

なお微笑むこと

それは学ばなくてはならない

〜『人は成熟するにつれて若くなる』より抜粋


老いてもなお、体や頭が思うように動き、楽しみを見出せる人、友達や家族に囲まれて暮らせる人の方がきっと少ない。そのような人は本当に幸運なのだと思う。


ヘッセのいう学びに、私はこれからのぞまなくては。