雨雲がにわかに光を遮り、どこからか冷気を含んだ風が部屋に舞い込んでくる。
プロヴァンスの夏の風物詩。
しょっちゅうあるわけじゃないから、窓をさらに開けて、ソファの上で待ちかまえる。
遠くで雷音が聞こえてくれば、まちがいない。
まずは雨が降りはじめると、ダヴィッドはテラスへ駆け上る。
テラスやひさしの掃除をするためだ。
床をゴシゴシと肢付きのタワシで洗う音がする。雨を利用するお掃除だなんてと思ったが、ママンもやってる。南フランス人の生活の知恵なのか。
雨足が強くなってきたら、雷も光も間をおかずやってくる。こうなると掃除どころではない。ずぶ濡れの体をタオルでふきふき、私と一緒に雷鑑賞。
夏の間はほとんど雨が降らないので、恵みの雨だ。植物はいつも根を必死に伸ばして自分で水を得ているから、休息のひとときだろう。
1時間もせずに、雲は消えて、ふたたび陽光は輝き始める。
大地は清められ、空も心なしかさっきより透明なブルー。
プロヴァンスの夏の真ん中。