フランスには、目を見張るようないわゆる”美人”が意外と少ないような気がします。
中欧や東欧などのほうが多いかも。
日本の女性誌のファッション・スナップに載っているような超モードな女性もそんなにいない。
だって平均収入は日本人よりずっと少ないのだから、ファッションに使える費用なんてホントに限られているんです。

それなのに、なんと魅力的な女性が多いことか!
街を歩けば、いわゆる”雰囲気美人”が次々と現れる。
老若は関係ない。
だって、フランスの女性たちは、年をとっても女を捨てたりしないから。

かつて、私の人生の師匠の一人であるカメラマン(女優の着物姿をとらせたら日本一)がぼやいていたのを思い出します。
「なんで日本の女って、立ち枯れしちゃうのかなあ。キレイに熟してく女がホントに少なすぎる」

そりゃ、一つには、若さが重要視されるからでしょう。若いときは、それだけでチヤホヤされて、ある年齢からはオバさん扱い。見向きもされなくなる。男が悪い、男が!!と彼を非難したのを覚えています。

こっちの女性は、いくつになっても、美人でも美人でなくても、結婚しててもしてなくても、男性からちやほやされ、「Je t'aime(愛してる)」と言われ、「 bebe(ベベ)」と呼ばれ、女性として扱われるので、年をとればとるほど、年輪に刻まれたアムール(愛)のオーラに包まれているのです。

カフェのテラスで一人でいるとき、隣の妙齢の女性から声をかけられました。
「このペリエの缶をあけてくれませんか? 私、爪を長く伸ばしていて開けられないの。あら、あなたも長いわね(笑)」なんて調子で。

スーパーマーケットでは、
「この棚の上の、あれをとってくれません?」などと頼まれる。
もちろん、近くに男性がいれば、そっちに頼むことでしょう。こんなとき、フランス女性は甘え上手だなあと感心します。
といっても、ナヨナヨした女らしさじゃなくて、あくまでも毅然とした女らしさ。ここが私は気に入ってます。もちろん、個々のキャラクターは千差万別なのでひとくくりにはできないけど、女性全般から受ける印象はそんなイメージ。

髪を20cmほどばっさり切ったとき、ある人からほめられたけど、そのほめ言葉が印象に残っています。

「あなたのパーソナリティにとてもよく合ってる」。

これは、フランス人の美意識を読み解くうえで、とても大事なキーワードだと思います。
だから、流行してるから、とか、好きな女優みたいにしたい、とか、そういう発想は出てこない。私は私らしく。みんな、自分というものをよく知っているのですね。

もうひとつのキーワードも最近見つけました。
パーティで、私の友人のデザイナー、JONII MAのドレスを着ていたら、かなり多くの女性たちからほめられました。ある熟年女性からは、
「こんなエレガントな女性は、フランスでも見たことがない」とまで。
いくらなんでも言い過ぎだと思うけど、つまり、これは最大級のお褒めのお言葉。ということは、女性にとって、エレガンスというキーワードが最大級に重要なんだと認識しました。
しかし、これもたぶん、うわべだけの見せかけのものじゃダメなんでしょう。
真のエレガンスの意味を、これから追求してみたいと思います。

最後のキーワードは、
インテレクチャルであること。
歴史、政治、アート、文学、音楽……知識は重要。ものを知らないとバカにされます。そして、大事なポイントは、知っているだけではなく、自分の言葉で語れるかどうか。

私もダヴィッドからよくバカにされます。中東の情勢、アフリカの問題など、こんなことも知らないのか、って。そのたび、痛い思いをします。
そのうえで、身なりにも気をつけていないと、
「いったい、あなたはいつになったら女性らしい格好をするんですか?」と嫌みを言われることになるんだからタイヘンです。
ジャージなんか着てた日には、口も聞いてもらえないでしょう。

フランスの美のハードルは高い。
男性たちは、いっしょにいる女性にはいつも美しくあってほしい。だから、女性も努力をする。そして、もちろん、女性も男性に同様の要求をする。
お互いに、ちょっと厳しい鏡をもってるみたいです。

vie en rose
『vie en rose』