le castellet village
『le castellet village』


近隣で好きな場所に、Le Castellet villageという村があります。
小高い丘の上にたたずむ鷲の巣村。
遠くから見ると、天空のラピュタみたい。

2年前、城壁に囲まれたこの小さな村で3カ月暮らしました。
ぐるりとひとまわりするのに、15分もかからないくらい小さな村。
城壁からは、一面のブドウ畑とオリーブの樹々、その向こうには地中海が見渡せ、
夏にはセミの声(プロヴァンスの人は”笑い声”という)がジジ、ジジ、と響きます。
昼間はツーリストであふれかえるのですが、ホテルがなく、車も下の駐車場までしか入れないので、夜、城壁のなかはしんと静まりかえります。

村の中は、観光客向けのロマンティックな雑貨屋が並びます。
アロマ・キャンドルの店、アンティークの店、布ものの店、石鹸の店……
それにレストランがいくつかとバーが1軒。

私が住んでいたアパルトは、200~300年も前に建てられた石造りの家。
3階建ての2階で、大きなベッドルームに小さなサロン+キッチンという造り。それに、小さなテラス。
壁は漆喰、天井には木の梁が何本も通り、床は六角形のテラコッタ。典型的なプロヴァンスの建築です。

会社を辞めて、でもまだストレスを抱えたままでこの村に到着したのは、5月中旬のある深夜でした。
東京の大通りに面したマンションで暮らし、昼も夜もなく仕事をしていた私を、この静寂の夜がどれだけ癒してくれたでしょう。

le souvenir
『le souvenir』

しかし、朝日とともに、私を起こしたのは、
階下から聞こえてくる騒がしい声と、カトラリーやカップを運ぶ音。
そうそう、眠りに落ちる前に、ダヴィッドが「コーヒーは下で飲んで」と言っていたのを思い出しました。
石畳の狭い道をへだてた向かい側が、この村の中心ともいえるブラッセリー「ラ・スコー」でした。
この日から、ここで朝のカフェオレを飲み、昼食を食べ、アペリティフを村の人と飲みながら、仕事から戻るダヴィを待ち、いっしょにまた一杯飲むという毎日を送ることになるのですが、村が小さいだけに、濃密な時間でした。

芳しいハーブの香りが漂い、
女性なら誰もがうっとりしてしまう素敵な店。
そして、マニフィックでファンタジックな風景。
けれど、そこでの人間模様は、風景とはうってかわって、かなりの三文ドタバタ劇なのです。

私にとって、ここが、フランスの入り口となった思い出の場所。
ここでのことは、折々に書き残していきたいと思います。

une salade
『une salade』
「ラ・スコー」のイタリアン・サラダ。
初日に食べた思い出の一皿。


le castelletの公式サイト
http://www.ville-lecastellet.fr/