コンプライアンスとイノベーション

4月3日は聖徳太子が
17条の憲法を制定した記念の日だそうです。

制定は西暦604年ですので、
今から1400年程前になりますが、
その教えは今なお
色褪せることがないように感じられます。

ある意味で、
日本人のDNAに刷り込まれた教えなのかもしれません。

17条の第一条にあたる部分が
「以和為貴」の部分です。


◆原文:

一曰。以和為貴。
無忤為宗。
人皆有党。
亦少達者。
是以或不順君父。
乍違于隣里。
然上和下睦。諧於論事。
則事理自通。
何事不成。


◆読み:

いちにいわく。やはらぎをもってたっとしとなし、
さかうることなきをむねとせよ。
ひとみなたむらあり、
さとれるものすくなし。
これをもって、あるいはくんぶにしたがはず、
またさととなりにたがう。
しかれどもかみやわらぎ、しもむつびてととのへば、
ことをあげつらわむに、
すなわちことわりみずからかよへり。
なにごとかならざらむ。


◆訳文: 以下は、小林惠智さん(教育学博士)が訳したものです。

一つ、節度をもって仲良くすることが大事で、
足を引っ張り合うようなことはしてはいけません。
人は皆、派閥をつくって群れ感情的に動くもので、
論理的に考え行動できる者は少ない。
つまり、直接の上司の命令に従わない者や仲間同士の喧嘩で、
規範を逸脱する者がでる。
しかし、上の者に敬意を払い、下の者に正しく接すれば、
上下関係は円満となり、正しい議論が生まれ、
物事の原因や結果を共有し、
正しい対策が取れるので、
不祥事は起きない。


昨今、
コーポレートガバナンス、
コンプライアンス、内部統制等々、
社内の管理体制は強化に向かっています。

企業で発生する不祥事が後を絶たないことから、
経営をする側はリスクヘッジとしての
管理強化に邁進しているのでしょう。
そして管理を強化することは
「人材を性悪説として見ざるを得ない」という視点が
基本になっていると推察できます。


しかし、
このような潮流は「人を中心に置く経営」という視点から見て、
本当に有効なのでしょうか?


ソニーの会社設立の目的は

「真面目なる技術者を、
 最高度に発揮せしむべき
 自由闊達にして愉快なる
 理想工場の建設」 

とあります。

ホンダは自社社員を

「愚民」と語りつつも
「個人の価値観」=「美学、異質混合、感情、素直さ」を

大切にしてきました。

さらにリクルートは、
自社の経営について、

「人はそもそも不合理な存在である。
 故に人間をありのままに捉える」(官僚型経営と逆説的)、

つまり
「情緒性」を大切にすることに取り組んでいたそうです。


ある意味で管理強化と対極にある
「自律性を前提とした自由闊達さを引き出す」
考え方だと思います。

「管理強化」と「自由闊達さ」。

これは
「コンプライアンス」と「イノベーション」を比較するようなもので、
どちらが優位という議論にはならないでしょう。


新聞を読んでいて、
ある大手企業の人材開発部門が
社長室の直轄になったという記事を見つけました。

また、別の記事では、
人材開発部門が従来の管理本部の中ではなく、
取締役のスタッフ部門として、
切り出された企業もありました。

人材を活かす部門が
管理部門側に属するべきか? 
戦略部門側に属するべきか?
企業側も試行錯誤をし始めたのでしょう。

これも
「管理」か
「自由闊達さ」かという
議論の一つかもしれませんし、
或いは
「この二つから止揚するのか」という考え方もあるでしょう。


今一度、
聖徳太子の教えに学び、
「組織と人の関係がどうあるべきか」を、
神田川を眺めながら、しばし考えた夏の夕べでした。