ここ数年、労務関係で増えた相談に


「退職前に、従業員が年次有給休暇(年休)を

すべて消化してから辞めていくのを何とかできないか」


というものがあります。

残りの年休を消化してから退職するということは、

以前から大企業では当たり前のように行われてきたことですが、

中小企業では、最近まであまり見られないことでした。


相談者である中小事業主は、

従業員が退職する際に年休を取らせずにすむ方法を求めているのでしょうが、

そんな都合のよい回答はありません。


なぜなら、

退職日を定めてから残りの期間に対して年休を請求されると、

「時季変更権」を使うことができないからです。

そもそも年休は、

請求されたら、特別な理由がない限り認めなければなりません。

もし理由があったとしても、

他の期間に年休を取るよう指示することができるだけです。

従って、

他の日に振替不能な退職間際に年休を請求されてしまうと認めるしかありません。

このような相談に対して、

業務の引継ぎなどでどうしても出勤してもらわないと困る場合には、

退職日の変更や年休の買い取りを提案することがあります。

年休の買い取りは、原則禁止ですが、

「退職後に消滅してしまった年休」を買い取ることは、制限されていません。

もちろん退職後に買い取ることを制度化している場合などは、

買い取りの禁止に触れてしまうことになりますが、

個別の案件ごとに必要がある場合、

買い取る程度ならば問題ないと考えられます。

もっとも、

買い取りも退職日の変更も、従業員が同意してくれなければ、実行できません。


また、どちらの手段をとるにせよ、現実に休暇を与えるか、

相応の費用を支払うか、しなければならないのです。

このような相談をしてくる会社では、

退職時に一度に休暇をとられてしまうと、

補充人員の賃金に加えて退職者の年休の賃金まで負担しなければならないことが

頭の痛い問題なのでしょう。


この問題の根本には、在職中に従業員が年休を使わない(使えない)ということがあります。


在職中にコンスタントに消化していれば、

いきなり年休で20日近い日数を使うことはないのです。

いまどき「うちの会社に年休はない!」などと言うことはできません。


退職時にまとめて年休を取ってもらうか、

少しずつ消化してすんなり退職してもらうか、年休の取らせ方も人事戦略のひとつなのです。