小脳は、運動誤差を入力にして学習していた! | KNのブログ

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SAT-TUNさんのブログ「45歳からの挑戦 オヤジテニス進化論」にコメントしたことは
重要なので、自分のブログでも残しておきます。
細かい話ですが、最後に、[補足説明]を付け加えておきました。


長谷川一弥さんから、小脳のプルキンエ細胞の話を聞いたことがあります。
  ・小脳は、失敗した回路を切っていく学習装置です。
  ・小脳は、(視覚以外の)感覚で切っていく。

そのことがきっかけで、運動の学習にかかわる小脳や脳の働きの専門書をたくさん読みました。
プルキンエ細胞の働き「長期抑圧(LTD)」は、日本の伊藤正男先生が発見されました。
  ・「脳の中身が見えてきた」 (岩波科学ライブラリー 2004-9月)の
   2章 ”脳の設計図は読めるのか”P.31-51 は小脳の入門に良いと思います。
   図書館で借りて読んでください。
  ・「小脳から記憶や思考の謎に迫る」伊藤正男 2003-2月 理研ニュース
     http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/news/2003/feb/index.html
   が、雰囲気を出してます

運動の学習以外にも、小脳は予測や運動の無意識化をメインで行っているようです。

運動の学習や、関連する制御等には、大脳-小脳連関ループや、運動関連領野と大脳基底核のループが行っているようです。




さて、だいぶん思い出してきました! もっと深い本質的な話を忘れていました!


衝撃的な事実、脳科学で検証された事実を紹介しましょう。

腕をコップに向けて伸ばす、このような運動を「到達運動」と言います。
サルが到達運動を行っている間に小脳のプルキンエ細胞の活動を記録し、解析を行った結果、小脳(のプルキンエ細胞)が運動の学習をする時に使っている、登上線維からの入力信号は、「運動誤差」を表していたことが検証されています。
  [05: 登上線維シグナルは運動開始の補助信号なのか、運動の誤差信号なのか]
    http://www.moriyama.com/netscience/Kitazawa_Shigeru/Kitazawa-2.html#05

  [08: 期待値からのズレを修正するシグナル?]
    http://www.moriyama.com/netscience/Kitazawa_Shigeru/Kitazawa-3.html

つまり、「小脳は、運動誤差を入力にして学習していた!」

北澤茂さんはすごいです!
運動誤差、運動した結果の誤差。 それと運動の終わり頃から予測される誤差。
これが効果的な学習に必要みたいですね。大事にしたいです。


この記事シリーズを読んでいくと、終わり頃に「脳を変えるのは予測誤差] という
気になるフレーズが出てきます。
ストロークやリターンの時に、ボールがバウンドする地点を予測するようにして、
バウンドする直前からボールを見ていると、何かがひと味違ってきます。
こちらも自分のツールとして持っておきたい。


[補足説明] 『小脳は、(視覚以外の)感覚で切っていく。』の括弧()の意味:
インパクトの”瞬間”などの運動を学習するには、
ボールの行方を確認していたのでは遅すぎて、プルキンエ細胞の学習には
使えない。つまり、視覚フィードバックは遅いので、運動によっては学習に
使えない場合があるという意味です。
 ・視覚は最低でも、100ミリ秒後でないと、私たちが日常見て認識して
  いるような形での認識は出来ない
 ・サルの到達運動での登上線維に到着した誤差情報のピークまでの潜時は、
   視覚入力から約 150 msであった
 ・「どれほど遅れた視覚性の誤差信号でも生体は学習できるか?」を調べるため
  プリズム順応と呼ばれる現象を用いてサルとヒトを用いて実験した結果、
  50 msから 100 msの遅れを追加することで学習効率がおよそ半減した
 ・登上線維信号が運動の誤差を表現しているのは、250 ms後までは確認できた

仮に、200ミリ秒以内に誤差信号が登上線維に到着しないとプルキンエ細胞が学習
出来ないとすると、視覚フィードバックの場合にはその少なくとも100ミリ秒前の
景色を見ているわけだから、インパクトの後の100ミリ秒後のボールを見ている
ことになる。これは、時速100キロのボールでは、わずか2.8m先の位置で、
打ち出されてちょっとの距離しか進んでいない。こんなちょっとの情報では、
誤差が分かりませんよね?!

ではどうするか?
視覚フィードバックは直接使えないが、ボールをインパクトした時の感触や
インパクトまでの運動の感覚の”余韻”が身体に残っています!
ボールが飛んでいった結果を見て、その結果とこの感触や余韻を結びつける
わけです。そうすると、その時の感触や余韻がどういう結果をもたらすかが
だんだん分かってきます。
そこで今度は、その時の感触や身体の感覚の余韻を誤差信号として使って、
インパクトの”瞬間”までの運動を学習していくわけです。