仙台店の店長二年目に向けて着々と計画を立ていた。
そんなある日、突然の転勤辞令が命じられたのです。
行き先は、他の店長達が憧れを抱く花形店の松戸店だった。
100坪近くあった仙台店よりは少し小さかったが、駅ビルの中にあるだけあってお客様の来店数は仙台店の比ではなかった。
しかし綺麗な店造りでかなりのグレードの高い店だったので、
(自分がこんな良い店の店長が勤まるのか)
と不安を感じてしまった。
販売員14人はやはりほとんどが年上だった。
藤川はこの時まだ22才だった。
販売員は全体的にみんな真面目な感じで、ここではイジメはないなぁと前向きに^_^思った。
松戸店の販売員は仙台店の販売員と違い、皆販売レベルの高さも感じました。
また東北の純朴な販売員達が懐かしく感じるほどだった。
藤川は松戸店でも最年少だったが、これまで社内で作り上げた実績のおかげでみんな謙虚で上司に対する態度はしっかりした大人でした。
この時も本当にいい勉強になった藤川は、退社するまで年上の部下が大半だった。
後には親と子ほど年の離れたベテラン販売員を部下に持つことも経験したのです。
藤川は松戸店店長に着任してから、まずは店の雰囲気や人間関係を観察した。
そして営業本部長から聞いていた店の低迷の理由にもなっている、ある一人の販売員のことを気にしていた。
彼は他店で店長をしていたのですが、売上不振などを理由に降格を命じられ一販売員となって松戸店に勤務していた。
当時、T社は売り上げが極めて悪かったり、大きなミス等を起こしたりすると、シビアに審査を行い一販売員に降格させていた。
松戸店は二十代後半の販売員が殆どだった中で、彼は三十代後半でクセのある人間だった。
藤川は着任してから、販売員一人一人と個人面談をしてはっきり分かった。
確かにこの人間が諸悪の根源だった。
【漆いっぱいに蟹一杯】
と、いう言葉がある。
苦労してようやく出来た大事な漆が入った器に、蟹一杯を入れると漆は全部ダメになってしまうのです。
まとまっているチームを一人のおかしな人間によって和を破壊してしまうという物の例えに使う諺です。
藤川はこの販売員の問題を解決を最優先する事にした。
その次に売上不振の原因になっている、接客力の弱い販売員の向上を考えた。
まず初めに販売員Kと個人面談をしたのだ。
22才入社四年目VS36才入社八年目の闘い⁉︎