藤川は販売員のみんなの心境を察すると申し訳ない気持ちだった。

しかし、いくら藤川でもこればっかりはどうしようも無い事だった。


藤川の出来ることは販売員と個人ミーティングをしてしっかり激励するしかなかった。

そしてその個人ミーティングではそれぞれの想いの丈を聞いた。


ある販売員は、

「なんでこんなに早く転勤になるんですか?」

「藤川店長は拒否したんですか?」

などなど、怒っているような話をしてきた販売員もいました。


また中にはうっすら涙を浮かべながらこの一年の感謝をしてくれた販売員もいた。

そして一緒に連れていって欲しいと真剣に訴えてくる販売員もいた。


藤川はそれぞれに合った販売などのアドバイスをしながらこの一年間、能力もない上に若い自分に力を貸してくれたことに感謝しました。

特に印象的だったのは、イジメの首謀者だった販売員から深々と頭を下げられたことだった。


みんな藤川が転勤することに心から残念がってくれたのです。

仙台店の店長に就任した当時の事は今思い出してもいい気がしないぐらいだった(^^;)


それがたった一年でこんなに変わるなんて、人の気持ちの変わり様に、藤川はただただ凄いなぁと取るしかなかった。

そして、みんなの想いに感謝したとともに嬉しかった。


それもまた、年上の部下達からとなかなか普通ではあり得ないことではないかと思った。

この仙台店での一年はビジネスマンとして人生としても最高の勉強をさせてもらったと思います。


そして藤川は引っ越しの準備など残務整理に追われ一週間があっと言う間に過ぎた。

そして、最後の別れの挨拶をした。

何故か寂しい別れになってしまった。


次の店は関東にある松戸駅の中にある、駅ビル店だった。

松戸駅ビル店は、オシャレな上お客様の来店数が普通の店より格段に多く、他の店長達が憧れる花形店だった。


この事で、また他店の先輩店長から藤川は冗談ではあったがかなりイジられたのだ。

更に、

「一年で栄転するなんて異常だよ(^^)」

と、言われたのです

当時の会社では店長は二年以上はやらせていたのです。


この松戸店は数年前に満を持して期待されてオープンした店だった。

しかし、売上目標の達成率が非常に悪かったのだ。


店の売上が高くても、目標達成率が全ての世界ではそれが店長の評価になっていた。

本社からは、目標に対して何千万マイナスとはっきりと指摘をされる。


松戸駅ビル店は二千万円以上の赤字を出していた。

そんな中、店長が病気で退社してしまったのです。


そこで藤川が抜擢されたのでした。

しかし、更に大きな問題があったのです。