未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想
似て異なる話だけど、「少子化はお金が足りないから」は、大いに疑問だと思っている。
子どもを作らない夫婦、あるいは1人しか作らない夫婦にその理由を尋ねるアンケートを実施すると、その回答の多くは、「お金が足りないから」ということになるかもしれない。
仮にそうだったとしても、そのアンケート結果を鵜呑みにはできない。
それはあくまでも、その夫婦たちが「『何が理由』だと思っているか」を問うにすぎないからだ。
彼ら自身が理由だと思っていることが、本当の理由とは限らない。
もし彼らの収入が増えれば、本当に出生率は上がるのか。
もし彼らの収入が減れば、さらに出生率は下がるのか。
それは、わからないとしか言いようがない。
ただし。
人間社会において「収入減=個保存欲求充足の危機」だとするなら、「収入源=種保存欲求の昂進」ということになるはず。
一般に、貧しい民族ほど出生率が高く、食物連鎖の下位にある動物ほど出生率の高いことは、よく知られている。
日本の出生率が低いのは、過去2,000年ほどの中で、(ピーク時からはほんの少しだけ下がったかもしれないけど)豊かさの最高値近辺にあるからではなかろうか。
豊かだからこそ、出生率が下がる。
もしそうなのだとすれば、若年層夫婦に経済的支援(間接的なものを含む。eg. 保育施設の完備)を与えることは、なんら少子化対策として機能しないことになる。
こればっかりは、経済学的アプローチだけでなく、行動心理学や文化人類学からの考察がちゃんとなされなければならないのではないだろうか。
もっとも、少子化対策なんてものが必要だとは、ぼく自身はまったく思わないのだけれど。