なんで量的緩和というのが効かないのか。
いや、効くわけないんだけどさ。
それでも、効かない理由を敢えて挙げてみる。
中央銀行ではなく市中銀行のバランスシートで考えてみると、よくわかる。
左にある「国債」が「現預金」に置きかわるだけで、同じく左にある「貸出」が増えるわけない。
いや、逆かな。
バランスシートで見るから、余計にわからなくなる。
左側全体のリスク総量で考えたほうがいい。
「国債」は本来、リスクアセット。
クレジットリスクは一応スルーするとしても、価格変動リスクはある。
その限りにおいては、「国債」を「現預金」に置きかえてリスク総量を減らしてやれば、その分は「貸出」のリスクを取ることができるようになる。
あるいは、期待収益。
本来、「国債」は金利収入を産むが「現預金」はほぼ収益ゼロ。
なので、「国債」が「現預金」に置きかわってしまうと期待収益が減ってしまうので、その分「貸出」を増やして期待収益を増やさないといけなくなる。
ところが。
「国債」を中央銀行が買い支えることで価格変動リスクがなくなり、10年債ですらほぼ利回りゼロになってくると、話は違ってくる。
この時点で「国債」は限りなく「現預金」に等しい性格のアセットになってしまう。
つまり、「国債」を「現預金」に置きかえているつもりが、「現預金に等しいもの」を「現預金」に置きかえているだけ。
等しいものを置きかえるだけで、何かが起こるわけがない。
だから、「長期金利までがゼロに近くなるような超ゼロ金利制約」下では、量的緩和は効かない。
って考えればさ。
なんでFRBが約半分はMBSを買ったのか、ECBが今やるべきことは何なのか、おのずから見えてくるよね。